税金の滞納により財産を差し押さえられ、役所の窓口で「一度差し押さえたものは、完納まで解除できません」という説明を受けた方も多いかもしれません。その言葉を前に、「もうどうしようもない」と途方に暮れてしまうのは無理もないことです。
しかし、実務の現場で語られる「ルール」と、法律が定めている「本来の趣旨」の間には、しばしば解釈の溝が生じることがあります。
担当者が「解除できない」と言うとき、それは決してあなたを困らせたいからではなく、組織としての厳格な徴収指針や、前例のない判断を避けたいという心理が働いている場合が少なくありません。
一方で、法律(国税徴収法など)には、**「差し押さえを継続することが、かえって徴収の目的に適わない」**と判断されるべきケースについても、明確な規定が存在します。
この記事では、実際の裁判例でどのような判断が下されたのかを紐解きながら、単なる感情論ではない、**「法理に基づいた冷静な対話」**によって状況を打開するための知識を共有します。
「もう道はない」と諦める前に、法律が本来想定している「適正な執行」とは何かを、一緒に確認していきましょう。
第1章:なぜ窓口では「解除できない」と説明されるのか
役所の窓口で「全額納付されるまで差押の解除は認められません」という説明を受け、途方に暮れた経験はありませんか?
不動産を売却しようと思った時に税金滞納による差押の登記がされていて、不動産会社から「差押の登記を解除・抹消できないと売却できません」と言われます。
通常、不動産の売却代金を使って滞納額を精算しようとする場合、「売却代金が入る(決済)」と「差押えを解除する(抹消)」は同時に行われなければなりません。しかし、役所のマニュアルに縛られた回答では、この「同時進行」が認められず、「まずお金を払え」という一点張りになってしまうことがあります。
これが、実務と法律の解釈が最も激しく衝突するポイントです。
不動産を売却しようと思った時に税金滞納による差押の登記がされていて、不動産会社から「差押の登記を解除・抹消できないと売却できません」と言われます。
通常、不動産の売却代金を使って滞納額を精算しようとする場合、「売却代金が入る(決済)」と「差押えを解除する(抹消)」は同時に行われなければなりません。しかし、役所のマニュアルに縛られた回答では、この「同時進行」が認められず、「まずお金を払え」という一点張りになってしまうことがあります。
これが、実務と法律の解釈が最も激しく衝突するポイントです。
1-1. 現場が守るべき「厳格な徴収指針」
役所の担当者が「できない」と述べる背景には、個人の意思ではなく、組織としての厳格な徴収マニュアルがあります。
役所には「公平・適正な徴収」を行う義務があり、安易に差押えを解除して納税が滞る事態(財産の隠匿や消費)を避けなければならないという強い責任感があります。
そのため、まずは「完納が原則」という一律の回答になりやすいのが実情です。
役所には「公平・適正な徴収」を行う義務があり、安易に差押えを解除して納税が滞る事態(財産の隠匿や消費)を避けなければならないという強い責任感があります。
そのため、まずは「完納が原則」という一律の回答になりやすいのが実情です。
1-2. 「滞納処分」の本来の目的を再確認する
しかし、法律(国税徴収法や地方税法)が差押えを認めている本来の目的は、あくまで「税金の回収を完了させること」です。
もし、差押えを継続しても「1円も税収が増えない」ことが明らかな場合、その差押えは本来の目的から逸脱している可能性があります。
私たちは、感情的に反論するのではなく、この「本来の法律の趣旨」に立ち返って話し合う必要があります。
もし、差押えを継続しても「1円も税収が増えない」ことが明らかな場合、その差押えは本来の目的から逸脱している可能性があります。
私たちは、感情的に反論するのではなく、この「本来の法律の趣旨」に立ち返って話し合う必要があります。
第2章:「無益な差押え」という法的な盾
あなたが絶望から抜け出し、現実的な解決策を見出すための鍵は、国税徴収法 第79条(差押えの解除)にあります。
2-1. 国税徴収法 第79条の規定
法律には、以下のような場合には差押えを解除しなければならない(または解除できる)と記されています。
「差押財産の価額が、その差押えに係る滞納処分費及び差押えに係る国税に優先する……債権の合計額を超える見込みがなくなったとき」
これを専門用語で「無益な差押え」と呼びます。
具体的には以下の2つのケースが該当します。
1. 換価(売却)費用が回収額を上回る場合 例えば、1万円でしか売れない古い物品を差し押さえたとします。しかし、それを運び出し、保管し、オークションにかける費用(滞納処分費)が5万円かかるなら、役所は4万円の赤字です。これを続けることは、公費の無駄遣いにもなり得ます。
2. 配当の見込みがない場合(オーバーローンの不動産など) 差し押さえた物件に多額の住宅ローンがあり、売却してもすべて銀行への返済に充てられる場合です。役所に1円も配当が回ってこない状態であれば、差押えを維持する実質的なメリットは乏しいと判断されます。
「差押財産の価額が、その差押えに係る滞納処分費及び差押えに係る国税に優先する……債権の合計額を超える見込みがなくなったとき」
これを専門用語で「無益な差押え」と呼びます。
具体的には以下の2つのケースが該当します。
1. 換価(売却)費用が回収額を上回る場合 例えば、1万円でしか売れない古い物品を差し押さえたとします。しかし、それを運び出し、保管し、オークションにかける費用(滞納処分費)が5万円かかるなら、役所は4万円の赤字です。これを続けることは、公費の無駄遣いにもなり得ます。
2. 配当の見込みがない場合(オーバーローンの不動産など) 差し押さえた物件に多額の住宅ローンがあり、売却してもすべて銀行への返済に充てられる場合です。役所に1円も配当が回ってこない状態であれば、差押えを維持する実質的なメリットは乏しいと判断されます。
2-2. 裁判例が示す「裁量権の限界」
過去の裁判例では、配当の見込みが全くないにもかかわらず、長期間差押えを継続することについて、「徴収権の濫用」や「裁量権の逸脱」として違法性を認めたケースがあります。
裁判所は「回収の目的を達成できない差押えによって、納税者に過度な苦痛を与えることは許されない」というスタンスを取っています。
裁判所は「回収の目的を達成できない差押えによって、納税者に過度な苦痛を与えることは許されない」というスタンスを取っています。
第3章:実務と法律の解釈が分かれやすい典型パターン
役所の窓口での説明と、法律の規定が衝突しやすい3つの事例を見てみましょう。
事例①:オーバーローンの自宅(配当ゼロのケース)
不動産の価値よりも、銀行の住宅ローン残高が大きく上回っているケースです。
・現場の視点: 「不動産は生活の基盤であり、最大の資産です。たとえ今、配当が見込めなくても、差し押さえておくことで『税金を払わなければ家を失うかもしれない』という強い心理的圧力を与え、納税を促すことができます。」
・法的な視点: 差押の法的な目的は、心理的圧迫(プレッシャー)ではなく、あくまで換価による「回収」です。売却しても役所に1円も入らないことが明らかな場合、その差押えは納税者に不要な不利益を強いるだけの「無益な差押え」に該当する可能性が高くなります。裁判例でも、回収の見込みがない差押えの継続は「裁量権の逸脱」とされる傾向にあります。
・現場の視点: 「不動産は生活の基盤であり、最大の資産です。たとえ今、配当が見込めなくても、差し押さえておくことで『税金を払わなければ家を失うかもしれない』という強い心理的圧力を与え、納税を促すことができます。」
・法的な視点: 差押の法的な目的は、心理的圧迫(プレッシャー)ではなく、あくまで換価による「回収」です。売却しても役所に1円も入らないことが明らかな場合、その差押えは納税者に不要な不利益を強いるだけの「無益な差押え」に該当する可能性が高くなります。裁判例でも、回収の見込みがない差押えの継続は「裁量権の逸脱」とされる傾向にあります。
事例②:先行する他機関による「二重・三重の差押」
すでに他の自治体や国税局が差し押さえている不動産に対し、さらに後順位で差し押さえるケースです。
・現場の視点: 「先行する機関が何らかの理由で差押えを解除したり、滞納が解消されたりするかもしれません。その際に備えて、二番手、三番手として順位を確保しておくことは、徴収上のリスク管理として必要です。」
・法的な視点: 「いつか順番が回ってくるかもしれない」という不確定な期待だけで差押えを続けることは、過剰な執行になりかねません。特に、先順位の滞納額が莫大で、自局に配当が回ってくる可能性が客観的に見て著しく低い(=無益である)場合、差押えを解除すべき、あるいは維持すべきではないという議論が成立します。
・現場の視点: 「先行する機関が何らかの理由で差押えを解除したり、滞納が解消されたりするかもしれません。その際に備えて、二番手、三番手として順位を確保しておくことは、徴収上のリスク管理として必要です。」
・法的な視点: 「いつか順番が回ってくるかもしれない」という不確定な期待だけで差押えを続けることは、過剰な執行になりかねません。特に、先順位の滞納額が莫大で、自局に配当が回ってくる可能性が客観的に見て著しく低い(=無益である)場合、差押えを解除すべき、あるいは維持すべきではないという議論が成立します。
事例③:売却活動を阻害する「形式的な差押」
不動産の売却先が決まりかけている、あるいは売却によって精算しようとしている状況での差し押さえです。
・現場の視点: 「売却代金がいくらになるか、実際に決済されるまでは不明です。確実に全額回収できる保証がない以上、先に差押を解除して登記を抹消することは、職務放棄にあたります。全額納付が確認できるまで解除はしません。」
・法的な視点: 役所が解除に応じないために売却が頓挫すれば、結果として役所も1円も回収できない「共倒れ」の状態を招きます。これは徴収の最大化という目的に反します。実務上は、決済の場で代金を受け取ると同時に解除書類を交付する「同時履行」の形を取ることで、徴収の安全と売却の成立を両立させることが可能です。この柔軟な対応を拒み続けることは、法律が求める「適正な執行」の枠を越えていると主張する余地があります。
・現場の視点: 「売却代金がいくらになるか、実際に決済されるまでは不明です。確実に全額回収できる保証がない以上、先に差押を解除して登記を抹消することは、職務放棄にあたります。全額納付が確認できるまで解除はしません。」
・法的な視点: 役所が解除に応じないために売却が頓挫すれば、結果として役所も1円も回収できない「共倒れ」の状態を招きます。これは徴収の最大化という目的に反します。実務上は、決済の場で代金を受け取ると同時に解除書類を交付する「同時履行」の形を取ることで、徴収の安全と売却の成立を両立させることが可能です。この柔軟な対応を拒み続けることは、法律が求める「適正な執行」の枠を越えていると主張する余地があります。
ポイント
不動産の場合「数字(配当試算表)」が何よりの説得力を持ちます。
「不動産会社の見積書」と「ローン残高証明書」をセットで提示し、「今のままでは役所も私も誰も得をしない(無益である)」という現実をデータで示すことが、担当者にマニュアルを超えた判断をさせる第一歩となります。
しかし、上記の資料を提示しても「不動産の売買価格が適正な価格であることを証明する資料としては足りない」と言われる事が多くあるのが現実です。
このように役所の担当者から言われて手詰まりになっている方はお気軽にご相談下さい。
「不動産会社の見積書」と「ローン残高証明書」をセットで提示し、「今のままでは役所も私も誰も得をしない(無益である)」という現実をデータで示すことが、担当者にマニュアルを超えた判断をさせる第一歩となります。
しかし、上記の資料を提示しても「不動産の売買価格が適正な価格であることを証明する資料としては足りない」と言われる事が多くあるのが現実です。
このように役所の担当者から言われて手詰まりになっている方はお気軽にご相談下さい。
第4章:解決に向けた「冷静な対話術」
役所の担当者と対立するのではなく、「適切な手続きへの協力」という姿勢で話し合いを進めましょう。
ステップ1:具体的な配当見込みを確認する
「この物件を公売にかけた場合、公費(処分費)や先順位債権を差し引いて、お宅の役所にはいくらの配当が入ると試算されていますか?」と、客観的な数字を尋ねてみてください。
ステップ2:法律の規定を共通言語にする
「国税徴収法第79条の『無益な差押えの解除』の規定について、私の状況が当てはまるのではないかと考えています。
一度、上席の方も含めて、配当計算に基づいた判断をお願いできないでしょうか」と提案します。
一度、上席の方も含めて、配当計算に基づいた判断をお願いできないでしょうか」と提案します。
ステップ3:代替案(換価の猶予など)を提示する
差押えを解除してもらう代わりに、「現実的な分割納付計画」を提示することが不可欠です。
「無益な差押を解除していただくことで、私は〇〇(仕事の継続など)に集中でき、結果として月々〇万円ずつの納付が可能になります」という、役所側にもメリットのある提案を心がけましょう。
「無益な差押を解除していただくことで、私は〇〇(仕事の継続など)に集中でき、結果として月々〇万円ずつの納付が可能になります」という、役所側にもメリットのある提案を心がけましょう。
第5章:まとめ、そして「生活再建」への一歩
役所の担当者が不動産の差押を「解除できない」と言うのは、彼らもまたルールの中で職務を全うしようとしているからです。
しかし、そのルール(マニュアル)が、時として上位の法律や個別の事情と噛み合わないことがあります。
差押えによる絶望の中にいるときこそ、冷静に法律の条文を確認しましょう。
「納税の義務」を果たすことは大切ですが、同時にあなたには「適正な手続きを受ける権利」もあります。
無益な差押えを解消し、無理のない範囲での納税計画へ移行すること。
それが、あなたと役所の双方が「解決」に向かうための最善の道です。
しかし、そのルール(マニュアル)が、時として上位の法律や個別の事情と噛み合わないことがあります。
差押えによる絶望の中にいるときこそ、冷静に法律の条文を確認しましょう。
「納税の義務」を果たすことは大切ですが、同時にあなたには「適正な手続きを受ける権利」もあります。
無益な差押えを解消し、無理のない範囲での納税計画へ移行すること。
それが、あなたと役所の双方が「解決」に向かうための最善の道です。
「その『できない』を、法理で『できる』に変える。一人で悩まず、専門の知恵を借りてください。」
役所との交渉は、一人では孤独で、時に心が折れそうになるものです。 「自分のケースは『無益な差押え』に該当するのか?」「役所にどう切り出せばいいのか?」と不安な方は、まずは個別相談をご活用ください。
あなたの状況(物件の価値、ローンの残債、滞納額)を整理し、担当者を納得させるための「交渉の骨子」を一緒に作成します。
[→ 無料相談の申し込みはこちら]0120‐235‐909
また、本ブログでは他にも「差押えを回避する具体的なステップ」や「成功事例」を多数掲載しています。まずは他の記事も参考に、戦うための知識を蓄えてください。
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