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【ローコスト住宅はもう限界?】中小建築会社の倒産増加と住宅業界の未来を不動産業者が徹底解説

【ローコスト住宅はもう限界?】中小建築会社の倒産増加と住宅業界の未来を不動産業者が徹底解説

2025年現在、中小・中堅の建築会社やハウスメーカーの倒産が全国で急増しています。

特に「家賃並みの支払いでマイホーム」を掲げていたローコスト住宅メーカーの苦境が目立ちます。

ウッドショック、資材高騰、人手不足といった業界共通の課題に加え、少子高齢化による住宅需要の縮小や、都市部のマンション価格高騰の影響など、構造的な要因も倒産増加を後押ししています。

不動産業者としては、これらの流れを正確に把握し、今後の取引にどんなリスクがあるのか、何を提案すべきかを整理することが求められます。

本記事では、現状の分析と今後の対応策について詳しく解説します。

近年、増加する中小・中堅建築会社・ハウスメーカーの倒産

~ウッドショックからローン金利上昇まで、相次ぐ倒産の背景と今後の見通し~

近年、中小・中堅規模の建築会社やハウスメーカーの倒産が急増しています。

特に2023年下半期以降、倒産件数は右肩上がりで推移しており、2024年に入ってからもその傾向は衰える気配がありません。

倒産の傾向:小規模業者とローコスト住宅が中心

倒産している企業の多くは、負債総額1億円未満の小規模業者で、特に注文住宅系やローコスト住宅、分譲建売住宅を主力とする会社に集中しています。

倒産は関東圏・関西圏のみならず、地方都市部にも広がっており、全国的な現象といえます。

背景①:資材・人件費の高騰に対応できず

最大の要因のひとつが、資材価格と人件費の急激な上昇です。

ウッドショック以降、木材価格が高止まりし、物流費も大幅に上昇。加えて、職人不足による人件費の高騰が追い打ちをかけています。

受注価格に転嫁しづらいローコスト住宅を主力とする企業にとって、原価上昇は命取りとなりかねません。

背景②:高コスト体質から脱却できない

多くの中堅ビルダーは、住宅展示場出展や大量の広告宣伝、フランチャイズ本部へのロイヤリティ支払いなど、高コスト体質に依存しています。

住宅販売が好調な時期にはこれが機能していたものの、販売不振に直面した今、それらが重い固定費として経営を圧迫しています。

背景③:住宅着工数の減少と販売不振

住宅ローン金利の上昇に加え、物価高騰や将来不安から消費者の購買意欲は大きく冷え込んでいます。

その結果、モデルハウスやWebサイトへの問い合わせ数(反響数)が激減。販売不振が続くなか、資金繰りの悪化に拍車がかかっています。

背景④:中小企業への融資引き締めとキャッシュ不足

中小企業にとって命綱とも言える銀行融資が、近年ますます厳格化されています。

特に財務基盤の脆弱な中小・中堅ビルダーにとっては深刻な問題です。

もともと信用力の低さから資材仕入れや人件費といった運転資金の調達には苦労していましたが、金融機関の審査基準が一層厳しくなったことで、短期資金の確保が困難となり、資金ショートに直面するケースが急増しています。

ローコスト住宅とは何だったのか?

「家賃並みで夢のマイホーム」――それは、かつて確かに現実だった時代がありました。

月々5〜6万円台の返済で新築一戸建てが購入できるというキャッチコピーは、特に地方都市で若年層や子育て世代の心を強くつかみ、一戸建てブームの大きな原動力となりました。

土地価格の安さに加え、超低金利の住宅ローン、住宅ローン減税制度の充実といった好条件が揃い、非正規雇用であっても融資審査に通るケースが珍しくなかったのです。

住宅会社も規格型住宅やプレカット工法などを駆使し、コストを徹底的に抑えることで「土地+建物」で1,000万円台という価格帯を実現し、チラシやモデルハウスでは「家賃と同じ支払いで庭付きの一戸建てが手に入る」という訴求が生活者の憧れを現実に変えていきました。

「どうせ家賃を払い続けるなら、いっそ自分の家を建てよう」――そうした想いが、多くの家族の背中を押していた時代が、確かに存在したのです。

ローコスト住宅の仕組みと強み

ローコスト住宅のビジネスモデルは、徹底した原価削減によって成り立っています。

材料や設備を大量一括で仕入れることでスケールメリットを生み出し、間取りや仕様を標準化することで設計や施工にかかるコストを大幅に削減。

また、外壁材や内装材には比較的安価な建材を使用することで初期費用を抑え、結果として顧客には手頃な価格で住宅を提供できる仕組みが築かれていました。

こうした工夫を積み重ねることで、販売価格を抑えつつも企業としての収益性を確保する、効率的で合理的なビジネスモデルが成立していたのです。

限界と脆弱性が露呈した現在

しかし、この効率的なビジネスモデルも、2020年以降の環境変化によって大きく揺らぎ始めました。

ウッドショックを契機とした資材価格の急騰、そして職人不足による人件費の上昇は、原価を抑えるというモデルの根幹を直撃しました。

標準化された建材が高騰すれば原価を吸収する余地はなく、また労働力不足の中で人件費を削減することもできず、“家賃並み”の価格帯を維持することが次第に困難となっていきました。

コスト上昇分をそのまま販売価格に転嫁することも難しく、体力の乏しい中小ビルダーを中心に、経営が行き詰まり倒産に追い込まれるケースが相次いでいます。

「家賃並みで建てられない」時代の到来~月5万円の夢が、今では現実離れに~

かつて「家賃並みで夢のマイホームを」という言葉は、住宅広告の定番として多くの家族の心を掴みました。

月々5万円台の返済で新築一戸建てが手に入るという現実は、若年層や子育て世帯にとって希望の象徴でもありました。

しかし、その時代は静かに終焉を迎えつつあります。資材価格の高騰や人件費の上昇といった構造的なコスト増により、かつて可能だった価格帯での住宅提供は困難となり、「家賃並み」というキャッチコピーは、もはや過去の幻想となりつつあるのです。

月5万円ではもう無理

2020年代に入り、建築業界はかつてないコスト上昇の波に直面しています。

ウッドショック以降も木材価格は高止まりを続け、鉄骨・断熱材・合板など主要な建材は軒並み値上がりしました。

さらに、職人不足による人件費の上昇、輸送費や燃料費の高騰による物流コストの増加も重なり、住宅の原価は大きく膨らんでいます。

その結果、かつて主流だった1,500万〜2,000万円といった価格帯で住宅を提供することは、今や非常に困難になりました。

追い打ちをかけているのが、住宅ローン金利の上昇です。仮に金利が1.0%から1.5%に上がっただけでも、35年ローンの総返済額は数百万円単位で増加します。

建物価格の上昇と金利上昇が重なれば、月々の返済額が1〜2万円増えるのも珍しくなく、「月々5万円台でマイホーム」というかつての現実は、今や多くの家庭にとって手の届かない理想になりつつあります。




結果として:施主の購買行動が変わった

住宅の「買い手」の動きにも明確な変化が表れています。

◎ 無理に建てず、「中古住宅」や「リノベ住宅」へシフト
今までは「新築」にこだわっていた若年層や子育て世代も、コストと返済負担の現実を見て、購入の方向性をシフトしています。

・中古住宅を購入し、自分たちのライフスタイルに合わせて部分リノベーション

・フルリフォーム済みの中古住宅を新築代替として購入

・立地を重視し、築年数にこだわらず購入する層も増加

特に、地方では新築との差額が数百万円から1,000万円以上になるケースもあり、「中古+リフォームで自分らしい住まい」という選択が現実的なものとなっています。

◎ 「持ち家=安定」の価値観が薄れ、賃貸を選ぶ層も増加
かつては「持ち家を持って一人前」という社会的価値観がありました。しかし現在は、ライフスタイルの多様化や将来不安の増大により、この考え方にも変化が生まれています。

・転勤・転職・離婚・介護など、人生の変化に柔軟に対応できるのはむしろ賃貸

・持ち家を持つことで、固定資産税や修繕コスト、地価下落リスクを抱える不安も

・「住宅ローンを抱えるのが怖い」「流動性のある暮らしをしたい」という声も顕著に

その結果、家を持たないという選択肢が“負け”ではなく、“合理的な選択”と認識される時代へとシフトしています。

需要と供給のアンバランス化

加えて深刻なのが、需要と供給のアンバランス化です。

住宅を「持ちたい」と願う層――特に若年層や子育て世帯――の潜在的な需要は依然として高いものの、それに応えられる価格帯の住宅が市場から姿を消しつつあります。

資材・人件費・物流費・金利といったコスト上昇によって、ビルダー側が十分な供給量を維持できなくなっている上、価格設定を抑えられないため、家を建てたい層が「欲しくても買えない」状態に陥っています。

つまり、住宅供給側のコスト構造と、消費者の所得水準とのギャップが年々広がっており、市場は“売りたくても売れない・買いたくても買えない”という歪な構造に陥っているのです。

住宅着工数は減っているのに、供給業者は多すぎる

全国の住宅着工数は、10年前と比べて約7割程度に減少しています。

これは新築住宅に対する需要が明確に落ち込んでいることを示しており、少子高齢化や人口減少、消費マインドの冷え込みなどが要因とされています。

一方で、地域の建築業者数は大きく減っていないため、需給のバランスが崩れ、業者間の競争が激化。特に地方都市では「住宅を建てたい人より、建てさせたい業者の方が多い」という状態が常態化し、過剰供給が起きています。

加えて、土地価格の上昇や建築コストの高止まりにより、施主側は「今は建てるべきタイミングではない」と様子見を決め込む傾向が強まり、“建て控え”の動きが一段と加速しています。

建売の在庫も増加傾向

とくに都市部では、建売住宅の在庫が目に見えて増加しています。

原因の一つは、「価格は高いのに、仕様や間取りがローコスト住宅の延長」という、中途半端な商品が多いことです。

買い手にとっては「これでこの価格?」という不満が募り、結果として売れ残りが常態化。在庫負担が膨らみ、資金繰り悪化に直結するという、建売ビルダーにとっては負のスパイラルが発生しています。

販売競争の激化で体力勝負に

こうした需給ギャップの中で、住宅業界では契約を獲得するための“値引き合戦”や、過剰な広告投入が横行しています。

特に、中小・中堅の工務店やハウスメーカーは、大手と比べて財務体力に乏しく、このような消耗戦に巻き込まれると、本来確保すべき利益が圧迫され、やがて資金繰りが行き詰まるリスクが一気に高まります。

値引きで価格を下げれば下げるほど、原価高を吸収できず、ただでさえ厳しい採算ラインがさらに崩壊していく――。

まさに「売れても儲からない」「受注しても苦しくなる」悪循環に、多くの中小ビルダーが飲み込まれつつあるのが現状です。


少子高齢化と世帯構造の変化

少子高齢化の進展とともに、世帯構造も大きく変化しています。単身世帯や高齢者夫婦のみの世帯が増加し、核家族化や「二世帯住宅」へのニーズも多様化しています。

これにより、住宅に求められる間取りや設備、立地条件はかつての「ファミリー向け一戸建て」とは異なり、多様な選択肢が必要とされています。

一方で、若年層の住宅取得意欲は依然としてあるものの、経済的な制約やライフスタイルの変化から、より小規模で利便性の高い住まいを求める傾向が強まっています。

こうした人口動態の変化は、住宅の供給側にも柔軟な対応を迫り、ビルダーにとっては新たな課題でありチャンスとも言える状況です。

住宅を「買う世代」が減っている

現在の日本は、出生数が80万人を下回る“超少子化時代”に突入しています。

未来の住宅購入層となる若年人口が減り続けているため、新築需要の長期的な減少は避けられません。

さらに、非正規雇用や賃金の伸び悩み、晩婚化・非婚化といった社会的背景から、住宅ローンの審査にも通りにくい層が増え、住宅購入そのものが高いハードルになってきています。

世帯数の増加は頭打ち

これまで住宅需要を支えてきたのは「核家族化」でしたが、その効果もすでにピークを過ぎました。

総人口が減少するなかで世帯数も伸び悩み、今後は“世帯ベース”でも住宅需要が減る”構造に突入しています。

単身世帯や高齢者世帯は住宅購入に積極的でないことも多く、かつてのような“マイホーム需要”は期待できない時代となりつつあります。

空き家の増加も追い打ち

全国の住宅ストック数は6,000万戸を超えており、そのうち900万戸以上が空き家とされています。

住宅の数、そのものは足りている、むしろ余っているという状態です。

これだけ空き家があれば、「わざわざ新築を建てる必要がない」と判断する消費者も増えて当然です。

この現実が、新築市場をさらに圧迫しているのです。

マンション価格の高騰と持ち家志向の変化

近年、マンション価格の高騰も住宅市場の変化を加速させています。

都市部を中心に土地の希少性が高まり、分譲マンションの価格は上昇の一途をたどっており、購入をためらう層も増えています。

これに伴い、若年層や子育て世代の間で持ち家志向にも微妙な変化が見られ、「購入」から「賃貸での柔軟な暮らし」や「シェアハウス」など、多様な住まい方への関心が高まっているのです。

また、テレワークの普及により郊外や地方の戸建て需要が一定程度回復する一方で、全体としては「価格と価値のバランス」を慎重に見極める消費者が増え、持ち家取得のハードルは依然として高い状況が続いています。

都市部マンション価格は「一般人には買えないレベル」に

都市部、とりわけ東京23区における新築マンションの平均価格は1億円を超えると報じられています。

20代・30代の一般的な共働き世帯であっても、この価格帯の物件に簡単に手が届かないのが現実です。

そのため、「買う」という選択肢から「借りる」という現実的な選択へとシフトする人が増加。

特に都市部では賃貸需要が逆に拡大し、その結果、戸建て住宅の需要にも抑制的な影響が及んでいます。

購入意欲より「身の丈に合った住まい志向」へ

住宅ローン金利の上昇に伴い、「無理して家を買うのはやめよう」という考え方が広がっています。

具体的には、「無理なローン返済は将来への不安を増す」「収入が安定していないため大きな借金を抱えたくない」「必要に応じて柔軟に引っ越せる方が良い」といった声が多く聞かれます。

こうした意識の変化は、長らく根強かった持ち家至上主義からの脱却を促し、建売や注文住宅から中古住宅や賃貸住宅への需要シフトを加速させているのです。

住宅新築市場の縮小 → 中小建築会社の経営悪化

構造的な変化が重なり合い、住宅新築市場は明確に縮小局面に入っています。

需要は減少し、購買意欲も冷え込む一方で、供給過剰による在庫の増加が問題となり、販売競争は一層激化しています。

特に中小・中堅の建築会社やハウスメーカーは、この厳しい市場環境の中で構造的に不利な立場に置かれており、経営環境の一層の悪化が避けられない状況です。

倒産が続く中小建築会社の実情~地方ビルダーの崩壊と、消費者被害の深刻化~

近年、建築業界、とりわけ中小・地方のビルダーが倒産の危機に直面しています。

資材価格の高騰、人件費の上昇、そして厳しい金融環境が重なり、経営基盤の脆弱な企業は次々と経営破綻に追い込まれています。

その影響は単なる業界内の問題にとどまらず、住宅を購入・依頼する消費者にまで深刻な被害を及ぼしています。

契約の遅延、工期の長期化、さらには施工不良や倒産による瑕疵リスクなど、地方ビルダーの崩壊は多くの家庭の暮らしを揺るがしています。

目立つ倒産例の特徴

最近倒産が報じられているのは、ローコスト建売住宅や賃貸併用住宅を主力商品としてきた地域密着型の中小ビルダーです。
特に地方都市で存在感を放っていたこれらの企業は、「月々○万円で建てられるマイホーム」などのキャッチコピーで若年層や子育て世帯のニーズを取り込み、一時は活況を呈していました。

しかし、原価上昇や価格競争に耐えきれず、多くが経営破綻に追い込まれています。中には、

・完成直前に倒産して引き渡し不能

・建築途中で工事が止まり、再開の目処が立たない
といった深刻な消費者被害を生むケースも増えており、住宅購入者の不安をさらに煽る要因になっています。

経営破綻の主な要因

倒産の背景には、複数のコスト要因と構造的な市場縮小が複雑に絡んでいます。

・資材費・物流費の高騰:ウッドショック後も木材や鉄骨、住宅設備の価格が高止まりし続け、原価率が上昇。

・職人不足と人件費の上昇:特に地方では大工や左官などの担い手が減少し、賃金の上昇が避けられない。

・販管費(販売管理費)負担の増加:住宅展示場の維持費、チラシ・インターネット広告など、販売経費が利益を圧迫。

・銀行融資の引き締め:資金繰りが厳しくなる中、小規模企業ほど信用力がなく、つなぎ融資が得られにくい。

・顧客の建て控え:価格高騰と金利上昇で顧客の購買意欲が低下し、反響が減少。

つまり、売上が減る一方で、コストだけが上がる。この悪循環が、体力のない企業から順に脱落させているのです。

関連企業・取引先の倒産・廃業の可能性

中小・ローコスト系の建築会社の倒産や廃業は、単に当該企業だけの問題では終わりません。

その背後には、長年にわたり取引を続けてきた関連業者──工務店、設備業者、建材商社、運送業者、さらには広告代理店や設計事務所などが連なっており、一社の崩壊が地域経済全体に連鎖的な打撃を与えるケースも少なくありません。

とりわけ地方においては、そうした取引先の受注依存度が高く、主要顧客の倒産が即座に自身の資金繰り悪化や廃業につながるリスクが現実化しています。

住宅市場の縮小と信用不安が続く今、倒産の波は中小の裾野企業へと確実に広がりつつあるのです。

中小建築会社の倒産がもたらす波紋

──関連企業・取引先にも広がる“静かな崩壊”

中小・ローコスト系の建築会社の倒産や廃業は、表面的には一企業の経営不振に見えますが、実際にはその影響が広範囲に及びます。住宅建築という事業は、多数の関連企業の協力によって成り立っており、一社の崩壊が連鎖的な経済ダメージを引き起こす構造になっているのです。

特に影響を受けやすいのが、以下のような取引先企業です。

・地場の工務店・大工・左官・内装業者などの協力業者

・建材・住設機器の卸売業者

・プレカット・加工工場・運送業者

・設計事務所・測量会社・広告代理店

・現場管理や清掃などを請け負う下請け業者

こうした中小零細の協力企業は、大手のように顧客を分散させる余裕がなく、主要顧客からの受注が売上の大部分を占めているケースが少なくありません。

そのため、施工元が突然倒産した場合、翌月以降の売上が激減し、あっという間に資金繰りが破綻することもあります。

さらに最近では、資材費の高騰や人件費の上昇、金融機関の融資審査の厳格化といったマクロ要因が重なり、経営に余力のない企業から順に市場から姿を消し始めています。

地方における“雇用と技術の断絶”も

こうした影響は、単に企業収支の話にとどまりません。地方においては、地域密着型の建築関連業者が長年培ってきた技能・技術・雇用基盤が崩れ、次世代への継承が断絶する懸念も広がっています。

「昔ながらの職人がいなくなった」「若手が育たない」「仕事がなくて地元を離れた」という声が増えることで、住宅建築の質や地域の経済循環に深刻な影響を及ぼし始めているのです。

背景にある構造問題|需要と供給のミスマッチ

中小建築会社の倒産増加や地方ビルダーの経営悪化には、単なる一時的な経済変動以上の構造的な問題が潜んでいます。

特に顕著なのが、住宅市場における需要と供給のミスマッチです。若年層や子育て世帯を中心に住宅取得へのニーズは依然として存在しているものの、資材高騰や人件費上昇、金融引き締めなどの要因により、適正価格での住宅供給が十分に追いついていません。

結果として、「買いたい人」と「買える住宅」のギャップが広がり、市場は停滞しがちになっています。

この需給の不均衡は、中小・地方ビルダーの経営環境をさらに厳しくし、倒産リスクを高める根本原因となっているのです。

新築需要はすでにピークアウト?

日本の住宅需要は、少子高齢化と人口減少により、すでにピークを過ぎています。特に地方では、「住む家がない」のではなく「使われていない家(空き家)が多すぎる」状態です。

・空き家数は全国で900万戸超

・築年数の浅い空き家やリフォーム可能な住宅も多数存在

そのため、新たに土地を買って注文住宅を建てるより、中古住宅を購入し、リノベーションして暮らす方が合理的と考える消費者が増えています。
「新築=合理的な選択」という前提は、すでに崩れているのです。

一方、建築会社は供給過剰

需要が確実に減少しているにもかかわらず、建築業者の数は大きく減っていないという現実も、住宅市場における構造的な歪みの一因です。

特に中小ビルダーは、地元の人脈や紹介営業など地域密着型の手法に依存してきたため、市場の縮小にも関わらず撤退や業態転換が進まず、結果として供給側が過剰なまま残り続けています。

そのため、競合過多・受注単価の下落・販売競争の激化が一層深刻化し、価格競争に耐えきれず経営破綻に至る企業が後を絶たないのが実情です。

不動産業者としてのリスクと対応策

中小・ローコスト系建築会社の倒産が相次ぐ中、不動産会社も決して他人事ではありません。

特に提携・紹介先として販売協力していた施工会社が突然倒産した場合、土地の売買契約や建築請負契約に重大な影響が及び、最終的には施主とのトラブルや責任問題に発展することもあります。

契約が白紙に戻るだけでなく、「建物完成を前提とした土地売買」や「建築条件付き土地販売」などでは、不動産会社自体が説明責任や損害賠償を問われるケースも存在します。

こうしたリスクを未然に防ぐためには、以下のような具体的な対応策が求められます。

【実務面のリスク】建築会社倒産が引き起こす問題

提携する施工会社が倒産した場合、不動産会社には二重三重のリスクがのしかかります。

ひとつは、「建築条件付き土地」が“売れない土地”へと一変するリスクです。

施工会社が倒産すれば、建築請負契約が履行不能となり、土地売買契約自体が白紙解約となるケースもあります。

これにより、販売機会を逸するだけでなく、仲介手数料の返還や顧客対応に追われる事態となり、営業活動に深刻な影響を及ぼします。

もうひとつは、建築途中での工事放棄による損害の連鎖です。

すでに施主が支払った工事代金や、金融機関から実行されたつなぎ融資の資金が戻らず、損失が発生する恐れがあります。

建築の継続が困難になるだけでなく、「紹介した不動産会社の責任ではないのか?」というクレームや、選定ミスを問う声が上がることも少なくありません。

【対応策①】施工会社の信用調査と提携先の選別

・定期的な財務状況・工事履歴のチェック
 施工会社の倒産リスクを事前に見極めるには、決算書の簡易分析や現場の品質管理状況を常に把握する必要があります。

・完成保証制度・履行保証保険の活用
 顧客に対しては、住宅瑕疵担保責任保険だけでなく、工事中の倒産に備えた完成保証(※ハウス・デポなど)の制度を提案・説明し、リスクヘッジを明確に示すべきです。

【対応策②】中古住宅+リフォーム提案の強化

・「建てられない」時代の新たな提案軸
 新築市場が縮小する中、中古物件に新たな価値を加えるリノベ提案が急速に普及。
 建物調査(インスペクション)+改修プラン+資金計画をワンセットで提案できる体制が求められます。

・設計士・工務店との「ワンチーム体制」の構築
 販売現場の担当者が、設計・施工・資金計画の専門家と連携し、契約前から総合的な提案を行えるスキーム作りがカギになります。

これからの住宅・不動産業界の展望

かつてのように「安ければ売れる」時代は終わり、今や住宅購入者の関心は「信頼できる会社かどうか」に確実にシフトしています。

購入希望者は、価格だけでなく、施工会社や不動産会社の実績・対応力・誠実さにまで目を向け、自ら情報を収集し、比較検討するのが当たり前となりました。

単なる物件紹介ではなく、安心できるパートナーとして選ばれるかどうかが、成約に直結する時代に突入しているのです。

生き残るのは「価格」より「信頼」「品質」「長期的視点」

「安さ」や「派手な宣伝」だけで顧客の心をつかめる時代は終わりを迎え、これからは“誠実な説明”と“安心できる対応”、そして“持続可能な品質とアフターサポート”こそが、選ばれる会社の決定的な要素となっていきます。

不動産会社に求められるのは「総合的なコンサル力」

単なる土地や建物の紹介にとどまらず、建築会社の選定や資金計画、リフォーム設計、将来の資産価値までを見据えた「暮らし全体の提案」ができるかどうか──これからは、住宅購入=暮らしの設計という視点で寄り添える会社こそが、顧客からの信頼と支持を集める存在になっていきます。

「ただ売るだけ」ではなく、「選ばれる不動産会社」に進化を

・売上主義ではなく、顧客の人生視点で寄り添う営業スタイルが求められます。

・不動産会社自身も、法務・建築・金融の知識を持ったプロフェッショナル化が必須となるでしょう。

まとめ|「売るだけ」の時代は終わり。不動産業者に求められる真の価値とは

中小・ローコスト系建築会社の倒産が相次ぐ中、不動産業者はこれまで以上に「建てる」プロセスへの理解と責任が問われる時代に入りました。

建築会社の経営不安は、土地販売や建築条件付き契約の不成立、工事の中断、引き渡しトラブルといった実務リスクに直結し、仲介業者の信頼までも揺るがしかねません。

これからの時代に選ばれる不動産会社とは、単に物件を「売る」だけでなく、信頼できる施工会社との連携、建築やリフォーム、資金計画までを含めたトータル提案ができる存在です。

「どの建築会社と組むか」よりも、「どんな価値を創り、お客様へどう届けるか」が本質的に問われています。

かつて多くの人の夢であった「家賃並みで建てられるマイホーム」は、もはや現実的な選択肢ではありません。

今求められるのは、価格の安さではなく、安心して長く暮らせる住まいと、そこに至るまでの信頼できるプロセスです。

不動産業者は、時代の変化と顧客のニーズを正しく読み取り、「安心・信頼・価値ある暮らし」を提案できる専門家としての役割を果たすべき時が来ています。

「売って終わり」の時代は終わり、今後は「暮らしを共に設計する」プロフェッショナルが求められているのです。

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