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令和の景気は“バブル経済”なのか?──業界・業種によって見える景色は違う

令和の景気は“バブル経済”なのか?──業界・業種によって見える景色は違う

はじめに

「令和の景気はバブルなのか?」という問いは、多くの人が関心を持つテーマです。
株価や不動産価格が過去最高水準に達する一方で、賃金や消費の実感はそれほど伴っていない…。
まさに「誰にとってのバブルなのか?」という視点が重要になります。

このブログでは、不動産業・金融業・製造業・一般消費者それぞれの立場から“バブル経済”をどう感じるのかを整理してみます。

株式市場から見れば「バブル的な高揚感」

日経平均株価は過去最高値を更新し、株式投資をしている人にとっては「令和は新しいバブルが始まった」と映るかもしれません。

特に、AI・半導体関連株やグローバル展開する輸出企業は株価が急騰し、投資家心理を大きく押し上げています。

しかし、株式を保有していない一般世帯からすれば、「景気が良い実感はない」という声も根強くあります。

給与水準の伸びは物価上昇に追いつかず、生活コストはむしろ増しているため、株価と生活実感の間には大きな乖離が生じているのです。

この「金融市場の好景気」と「家計の実感とのズレ」は、平成バブルの末期にも見られた特徴であり、現代の日本経済を読み解く上で重要なポイントといえます。

不動産業界から見れば「ミニバブル」

都市部のマンション価格は上昇を続け、地価も高止まりしています。特に東京23区や主要都市圏では、すでに30年前の平成バブル期を超える水準に達している物件も少なくありません。

不動産業者にとっては取引が活発になり、表面的には「活況」と映ります。

しかし、一般の購入希望者からすれば「高すぎて買えない」「住宅ローンを組むのが不安」という声が増えています。

特に、共働き世帯であっても年収に対して住宅価格が見合わないケースが目立ちます。

このような事は、平成のバブル期にも同様な事が起きていました。
不動産会社や建設会社・投資家での不動産取引が過熱して不動産価格が上昇してしまうことはバブル警句の典型と言えるでしょう。

さらに、住宅ローンの固定・変動金利の動向、日銀の金融政策転換による金利上昇リスク、そして長期的には人口減少による需給バランスの崩れが懸念されます。

こうした状況から「今の不動産価格はバブル的な形成である」と警戒する専門家も少なくありません。

マンション価格・地価の高騰

東京23区の平均マンション価格は過去最高を更新し、1980年代後半のバブル期の水準を超える地点も出てきています。

特に都心3区(千代田・港・中央区)や人気のタワーマンションでは、数億円単位の物件も珍しくありません。

地価も同様に上昇傾向で、都心部や人気駅近エリアでは「買いたくても買えない」状況が続いています。

不動産業者にとっては活況感が強く、取引件数や価格が上がることで収益が見込めなかで、一般購入者や実需層は資金面で参入が難しくマーケットは限定的になりつつあります。

ポイント: バブル期との比較では、全国的な地価上昇ではなく、都市部・人気エリアに集中した局所的な「ミニバブル」と言えます。

取引の偏在とリスク

現在の取引は、高額物件や投資物件に偏りがちです。特に資産価値の上昇を狙った投資家や法人購入が中心で、実際に住むための住宅購入は減少傾向にあります。

その結果、次のようなリスクが顕在化しています。

・流動性の低さ: 高額物件は買い手が限定され、売却時に想定価格での換金が難しい場合がある。

・局所的なバブル: バブル期のように全国一律の上昇ではなく、都市集中型。地域差によって価格差が拡大しやすい。

・投資リスク: 賃料収入や売却益を前提にした投資は、市況の変化で大きな損失につながる可能性がある。

融資・資金面の注意

低金利環境は継続していますが、銀行の融資審査は近年慎重化しています。

・諸費用ローン・フルローン減少: 自己資金ゼロでの購入が難しくなり、頭金や諸費用の準備が必要。

・高額融資のリスク: 高額な住宅ローンは返済計画を誤ると家計に大きな負担。金利上昇リスクも考慮すべき。

資金計画の重要性: 収入、返済能力、今後の金利動向を総合的に判断した資金計画が不可欠です。

専門的視点: 不動産業者としては「市場活況=安心」ではなく、購入者側の資金計画や融資審査の変化も見極めることが重要です。

ポイント

令和の都市部不動産市場は、バブル期を上回る価格水準の地域もありますが、全国的な広がりはなく、都市部集中型の「ミニバブル」です。

投資物件や高額物件の取引は活発でも、実需層の購入は減少傾向。購入を検討する際は、資金計画や融資条件の確認が不可欠です。

製造業・中小企業──景気の恩恵が届かない現実

令和の好景気は中小製造業・建設業・物流業に必ずしも届いていません。

原材料高騰や人手不足、複雑な資金関係により、黒字倒産のリスクは増加しているといえるでしょう。

原材料高騰と人手不足

令和に入ってからの景気回復・好景気のニュースは、製造業や中小企業に必ずしも反映されていません。

・原材料費・輸送費の上昇: 輸入依存度の高い部品や資材の価格が高騰し、売上増が利益増に直結しないケースが目立つ。

・人手不足: 建設業や物流業などでは慢性的な人手不足が生産性の伸びを制限。労働コスト増加により、景気好調でも企業の手元資金が圧迫される。

実務的ポイント: 収益改善のためには、原材料調達の見直しや効率化、外注管理の強化が不可欠です。

黒字倒産の増加

売上はあるにもかかわらず、キャッシュフローが不足して倒産する「黒字倒産」の事例が増えています。

・中小企業特有の構造: 仕入先や下請けとの支払条件が複雑で、資金繰りに余裕がない場合が多い。

・景気上昇の恩恵が届きにくい: 高額受注や売上増があっても、運転資金が不足すれば黒字倒産のリスクは残る。

専門視点: 売上や利益だけで判断せず、資金繰りと手元流動性を重視した経営判断が求められます。

不動産・資産の活用

景気が良くても、企業保有の不動産や設備をすぐに現金化できなければ、資金繰り悪化のリスクは消えません。

・不動産の運用: 使っていない事務所や工場、土地を運用することで、負債圧縮や資金確保が可能。

・資産の早期現金化: 不動産だけでなく、機械・備品などの資産も換金戦略を立てることで黒字倒産リスクを回避。

実務的アドバイス: 景気回復に浮かれるのではなく、資産運用・資金調達のバランスを常に見直すことが、企業経営の安定につながります。

IT・金融業界──成長と投資マネー集中

IT・金融業界は令和景気の恩恵を最も強く受けている分野です。投資マネーが集まり、人材・資本が集中することでさらなる成長が期待される一方、投資機会や資産運用の有無によって、個人・企業間の格差が広がるリスクも顕在化しています。

IT・デジタル産業の高成長

令和の景気を最も実感できるのが、IT・デジタル産業です。

・DX(デジタルトランスフォーメーション)需要: 官民を問わず業務効率化やデータ活用の流れが進み、関連企業への投資が加速。

・クラウド・AI市場の拡大: サブスクリプション型サービスや生成AIの普及が、継続的な収益基盤を支えている。

・人材市場: エンジニア、データサイエンティスト、AI関連職の求人数が増加し、給与水準も上昇。結果として「令和景気を肌で感じる業界」と言える。

専門的視点: 他業界が人手不足で苦しむ一方、IT業界は「人材獲得競争」が熾烈。給与上昇は優秀人材の囲い込み戦略の一環でもある。

株式市場・金融投資

株式市場も好景気を背景に高値圏で推移しています。

・日経平均株価: 海外投資家の資金流入、企業の業績改善、円安効果も相まって、高水準を維持。

・投資マネーの集中: IT株や半導体株など成長分野に資金が集まり、投資家心理を押し上げている。

・格差の広がり: ただし、株式投資の恩恵はすべての層に均等ではない。年齢層や資産規模によって差があり、投資余力のある層が大きな利益を得る一方、資産を持たない層は景気上昇を実感しにくい。

実務的アドバイス: 資産運用を始める層と始められない層の格差は今後拡大する可能性が高い。企業オーナーや中小経営者にとっても「事業資金」と「投資資金」をどう分けるかが課題。

地方・中小都市──景気の恩恵は限定的

令和景気の実態は「都市圏に集中したミニバブル」であり、地方・中小都市にはその恩恵がほとんど届いていません。

地価や賃料は横ばい~下落、空き家問題や人口減少による需要減退が続き、投資マネーも都市集中しています。

結果として、地方の不動産市場は停滞し、都市との格差がさらに拡大しています。

地価・賃料は横ばい

令和景気と呼ばれる現象は主に都市圏で見られ、地方都市や人口減少地域には十分に届いていません。

・地価・賃料: 多くの地方都市では横ばい、あるいは下落傾向。

・需要の偏り: 再開発エリアや駅前など一部地域を除けば、不動産需要は伸びにくい。

・都市圏との格差: 東京や大阪などの価格上昇と対照的に、地方は資産価値の上昇を実感しにくい。

専門視点: 「全国的な景気回復感」は必ずしも地方に浸透せず、むしろ二極化を深める要因となっています。

空き家問題と人口減少

地方では、景気よりも人口動態の影響が大きく、不動産市場に直結しています。

・空き家増加: 親世代が残した住宅や使われなくなった店舗が放置され、空き家率は上昇。

・人口流出: 若年層は都市部に流出し、需要減退が続く。

・投資の偏り: 投資マネーは都市部に集中し、地方への波及効果は限定的。

不動産実務の観点: 地方物件は売却が難しく「資産が資産でなくなる」リスクが高い。任意売却や早期処分、活用法の転換(民泊・福祉施設・企業誘致など)が検討されつつある。

金融・金融機関──景気を支える“血流”の変化

金融・金融機関は、令和景気の“血流”を担う存在ですが、その流れは一様ではありません。都市部や大手金融機関は投資マネーで潤う一方、地方銀行や中小企業への融資は慎重化し、資金格差を助長しています。

企業経営者にとっては「資産(不動産や設備)の現金化」と「金融機関との関係性構築」が、今後ますます重要になるでしょう。

金融機関の収益構造の変化

・低金利から正常金利へ: 長らくマイナス金利や超低金利で収益が圧迫されてきたが、金利上昇で利ざや改善の動きも。

・新規ビジネスへの進出: ネット銀行の拡大、投資信託・資産運用サービスの強化、フィンテック連携など。

・地域金融機関の課題: 地方銀行や信用金庫は融資先が限られ、人口減少で地域経済とともに縮小リスクを抱える。

融資姿勢の変化と企業への影響

・融資審査の慎重化: コロナ禍での「ゼロゼロ融資」終了後は、返済能力重視にシフト。

・中小企業の資金繰りリスク: 売上があっても追加融資が受けにくく、黒字倒産を招くケースが増加。

・不動産担保の重要性: 担保評価は融資可否に直結。都市部不動産は高評価だが、地方や特殊物件は換金性が低く、融資を引き出しにくい。

個人資産運用と金融格差

・投資マネー集中: 株式・投信・NISAなどの利用が拡大し、資産を持つ人はさらに資産を増やしている。

・資産格差の拡大: 投資に参加できる層とそうでない層の格差が、将来的に生活水準の差につながる懸念。

・金融リテラシーの必要性: 金融機関の商品に依存するのではなく、自らのライフプランに合った資産形成戦略が求められる。

景気の二極化──業界・地域による格差

令和景気の最大の特徴は、「業界・地域による二極化」 です。

・都市部不動産・株式市場:
 マンション価格や地価はバブル期を超える水準に。株式市場も高値圏を維持し、活況感が強い。

・IT・金融業界:
 DX・AI関連への投資が集中。給与水準も上がり、人材・資金の流入が続く。まさに令和景気の“勝ち組”。

・製造業・中小企業:
 原材料費や人件費の高騰で利益が圧迫。売上があっても資金繰りが厳しく、黒字倒産のリスクが高まっている。

・地方・中小都市:
 人口減少や空き家問題が深刻化。地価・賃料は横ばいか下落で、景気の実感は乏しい。

ポイント

令和景気は「全国一律のバブル」ではなく、都市集中・業界限定のミニバブル です。

活況を謳歌する業界・地域がある一方で、資金繰りや需要減少に苦しむ中小企業・地方都市も存在します。つまり、景気の実態は「二極化の加速」にほかなりません。

廃業コンサル・不動産業の視点

令和景気の二極化の中で、中小企業オーナーや不動産業者にとって重要なのは、景気動向を“眺めるだけ”ではなく、自社や自分の状況に即した戦略を持つことです。

1. 資産評価と現金化の見極め

・地価や株価が上がっても、すぐに現金化できなければ経営には直接寄与しません。

・不動産は「価格が高い=売れる」ではなく、「流動性があるか」が重要。都市部と地方では評価がまったく違います。

2. 黒字倒産の回避策

・資金繰り改善: 売掛金の早期回収、支払条件の見直し。

・不動産の活用: 担保融資や任意売却による資金確保。

・キャッシュフロー重視: 利益よりも「手元資金の厚み」を経営判断の軸に。

3. 業界・地域ごとの戦略

・都市部集中型バブル: 資産価値上昇を機会と捉え、売却・投資判断を冷静に。

・地方・中小都市: 景気の波を待つのではなく、早期の資産整理や活用法の転換(福祉・事業用・再利用)を検討。

ポイント

令和景気は一部業界・都市部にとって追い風ですが、すべての企業や不動産オーナーにとって「安全・有利」とは限りません。

資産の換金性・資金繰り・地域特性を冷静に見極め、事業戦略や投資判断を行うことこそが、景気の二極化時代を生き抜く鍵となります。

まとめ

令和の景気は、都市部不動産や一部産業でバブル的な活況を示す一方、地方や中小企業では恩恵を感じにくい 「二極化景気」 です。

・都市部不動産・株式市場 → 活況、部分的にバブル的

・製造業・中小企業 → コスト増・黒字倒産リスク

・IT・金融業界 → 高成長

・地方・中小都市 → 景気恩恵ほぼなし

廃業コンサル・不動産業の視点から重要なのは、業界・地域の差を正確に把握したうえで、資産運用や事業戦略、廃業・売却のタイミングを冷静に見極めることです。

令和景気を「ひとまとめの好景気」として捉えるのではなく、
👉 『自分の業界・地域にとって、この景気は追い風か、逆風か』
を軸に戦略を立てることが、経営や資産防衛の成功のカギになります。

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