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【日本政策金融公庫の仮差押があっても売却できる?】任意売却の流れと注意点を徹底解説

【日本政策金融公庫の仮差押があっても売却できる?】任意売却の流れと注意点を徹底解説

事業資金や設備資金など、中小企業や個人事業主にとって心強い存在である日本政策金融公庫(以下「公庫」)。

しかし、事業の業績悪化や予期せぬトラブルで返済が困難になると、公庫から督促や法的措置が講じられることがあります。

その中でも、”仮差押”という言葉を突然目にすると、驚きと不安を抱える方も多いのではないでしょうか。

今回は「公庫による仮差押が入った不動産でも任意売却はできるのか?」というテーマについて、詳しく解説いたします。

仮差押と差押の違い

仮差押と差押は、いずれも債権者が債務者の財産に対して行う法的手続きですが、その目的や効力には明確な違いがあります。

仮差押は、債権者が将来の強制執行に備えて、債務者の不動産などの財産を勝手に処分されないように一時的に保全するための「保全処分」であり、登記簿には「仮差押」と記載されます。

これにより所有者はその財産を自由に処分することができなくなりますが、原則として債権者の同意があれば任意売却が可能であり、解除も担保の提供や債権者の同意により比較的容易に行うことができます。

一方で、差押は確定した債権に基づいて裁判所が行う「強制執行」の一種であり、財産を強制的に換価・回収することを目的とした処分手続きです。

登記簿には「差押」と記載され、所有者は財産を一切処分できなくなり、その後は競売手続きに進む可能性が高まります。

任意売却についても原則として認められず、実行するには債権者の許可が必要となるため、仮差押に比べて売却や解除の自由度は大幅に制限されます。

なお、仮差押も差押も登記された順番によって優先順位が決まる点は共通していますが、差押のほうが法的な強制力が強く、解除の難易度も高くなる傾向があります。

このように、両者は見た目こそ似ていても、法的な位置づけやその後の手続きの流れにおいて大きな違いがあるため、実務では正確な理解と慎重な対応が求められます。

ポイント

仮差押は「将来の差押に備える手続き」であり、差押は「実際に回収するための最終手続き」です。

仮差押がある不動産は売却が可能ですが、債権者の同意が必要です。実務上、任意売却(債務整理の一種)を行う場合、債権者と交渉して仮差押を解除してもらう流れがよく取られます。

差押が入ってしまうと任意売却が難しくなり、競売へ移行するリスクが高まるため、早めの対応が重要です。

なぜ仮差押なのか?差押ではない理由

日本政策金融公庫や金融機関などが債権回収を進める際、すぐに「差押」ではなく、まず「仮差押」を行うことが多くあります。

これは、以下のような法的・実務的背景があるためです。

差押には確定判決または債務名義(公正証書など)が必要

差押を実行するためには、法律上の根拠となる「債務名義(さいむめいぎ)」が必要です。債務名義とは、債権者が強制執行をするための正式な証明書類のことで、以下のようなものが該当します。

・裁判での確定判決

・仮執行宣言付き判決

・確定した支払督促

・強制執行認諾条項付きの公正証書

これらを得るには、訴訟や支払督促の申立てを行い、一定の時間と手続きを経る必要があります。特に訴訟は争点の有無により長期化する場合も多く、すぐに差押には進めません。

訴訟や支払督促の手続きが終わっていない段階でも、仮差押なら迅速に財産保全が可能

仮差押は、「債務名義がまだ無い段階」でも申し立てが可能な手続きです。

民事保全法に基づき、債権者が債務の存在と保全の必要性を裁判所に主張・立証すれば、比較的短期間で仮差押命令を得られます。

これにより、訴訟や督促の結果を待たずに、不動産や預金といった債務者の財産を一時的に凍結・保全できるという大きなメリットがあります。

特に不動産においては、登記によって第三者への対抗力が生じるため、後順位の債権者や買主に対しても法的効力を持つのです。

債務者が財産を隠したり処分する前に、登記によって先手を打つため

債権者が債務不履行の兆候に気づいたとき、最も警戒すべきは「債務者が財産を処分してしまうこと」です。

たとえば、次のようなリスクがあります:

・不動産を第三者に売却される

・他の債権者に担保設定される

・名義を家族などに移される(仮装譲渡)

・現金や預金が引き出される

こうした処分が行われた後では、たとえ訴訟に勝っても実際に回収できない「絵に描いた餅」になってしまいます。

そこで仮差押を行い、登記簿に記載することで、財産処分に対する抑止力と法的拘束力を確保することが極めて重要になります。

仮差押によって登記されれば、たとえその後に買主が現れても、仮差押登記が優先されるため、買主に対しても「処分制限がある物件」としての効力を持ちます。

仮差押は“本格的な回収手続きに備えた準備段階”

仮差押は単なる一時的な措置ではなく、強制執行(差押・競売)に進むための事前準備として機能しています。


訴訟が確定して債務名義を得た際、仮差押をしておけば即座に差押に移行できるという大きなアドバンテージがあるのです。

特に公庫などの公的金融機関は、法的手続きに則った慎重な対応を求められるため、「まずは仮差押で保全しておき、必要に応じて差押に移行する」という段階的な方法を選ぶことが多くなっています。

ポイント

仮差押は、訴訟等の結果を待たずに素早く財産を保全できる、債権回収における極めて重要な手段です。

差押に必要な確定判決や債務名義がない段階でも先手を打てる点、また不動産登記によって第三者への対抗力が生じる点などから、実務ではまず仮差押を活用し、その後に本格的な差押や競売手続きへ進むというのが一般的な流れとなっています。

仮差押のデメリットとは?

仮差押は債権者にとっては財産を保全する有効な手段ですが、債務者側にとっては非常に大きな不利益を伴います。

特に不動産に対する仮差押は、債務者の経済的自由や信用に深刻な影響を及ぼすことがあり、放置していると状況がさらに悪化する可能性があります。

以下に、主なデメリットを詳しく説明します。

不動産が事実上売却・担保提供できなくなる

仮差押が登記された不動産は、法律上の処分禁止命令がかかっているわけではないものの、第三者から見て「トラブル物件」と認識されるため、売却や担保提供が非常に困難になります。

例えば、買主が金融機関から住宅ローンを借りる場合、金融機関は仮差押の登記がある不動産には融資を出しません。

よって、実質的には「売れない」「担保にできない」状態となり、債務者の資金調達手段が絶たれてしまいます。

登記簿に記録されるため、不動産取引上の信用が著しく損なわれる

仮差押は、法務局の登記簿に「仮差押登記」として正式に記録されます。登記簿は誰でも閲覧可能であり、不動産取引の際には必ず確認される情報です。

そのため、仮差押登記があるだけで、「この不動産には未解決の債務問題がある」と判断され、買主・仲介業者・金融機関などの関係者から敬遠されることになります。

これにより、物件の価値や流動性が著しく低下し、再建の道が狭まります。

借入・融資審査で大きなマイナス要素になる

仮差押が入っている不動産を所有していることは、個人や法人の信用力に重大な影響を与えます。

銀行や信用金庫などの金融機関は、融資審査の際に登記簿情報や信用調査を行うため、仮差押の存在は「返済不能リスクが高い」と判断される大きなマイナス要因になります。

特に事業用資産として不動産を保有している法人にとっては、運転資金や設備投資資金の調達が難しくなり、事業継続に支障をきたす恐れもあります。

他の債権者が介入しにくくなり、債務整理が難航する

仮差押が登記された不動産には、他の債権者も強制執行を仕掛けにくくなります。

というのも、仮差押には「登記順位」があるため、後から差押や担保設定をしても、仮差押の優先順位が先になるからです。

これにより、他の債権者との話し合いや債務整理の交渉が難しくなり、全体的な再建計画が立てづらくなります。

結果的に、競売などの強制的な清算手段へと進まざるを得ない事態に陥ることもあります。

仮差押は“警告信号”、早期対応が不可欠

仮差押は、単なる「登記」ではなく、債務者にとっては経済的・信用的に深刻な影響をもたらす“警告信号”です。

この段階で早期に専門家へ相談し、債権者との和解や任意売却などの選択肢を検討することが、差押や競売を回避するための重要なポイントとなります。

仮差押の解除方法とは?

仮差押は、不動産の売却や資金調達を著しく制限する登記であり、放置していると差押や競売に発展する恐れがあります。

そのため、状況に応じた適切な方法で解除を図ることが重要です。

以下に、仮差押を解除する主な方法とそれぞれの特徴を解説します。

債権者の同意を得て任意売却を行い、売却代金で債務を返済

もっとも一般的かつ現実的な方法が、不動産を任意売却し、その売却代金をもって債務を返済するという手段です。

債権者(例:日本政策金融公庫)と協議し、売却代金から回収されることに同意してもらうことで、仮差押は抹消されます。

この方法は以下のようなメリットがあります:

・競売より高値で売却できる可能性がある

・債権者との協議により柔軟な対応が期待できる

・不動産登記の仮差押を売買契約直前に解除してもらえる

任意売却を進める際は、経験豊富な不動産業者や専門家のサポートを受けるのが望ましいです。

債権者との協議により、売却と仮差押解除を同時に進行する

実務上よくあるのが、公庫の承諾に基づき、「仮差押の解除」と「売却手続き」を同時に進めるケースです。

これは、「売却が確定すれば、その代金で債務返済される」という前提で、売買契約成立と同時に仮差押を抹消してもらう方法です。

この方式は、売主・買主・債権者が連携しながら進めるため、調整が必要ですが、任意売却の実現性が高まる合理的な方法です。

和解や分割返済の合意により、仮差押を解除してもらう

債権者と直接交渉し、一定の金額を支払ったり、将来の分割返済計画に合意することで、仮差押を解除してもらう方法もあります。

たとえば以下のような条件提示が行われます:

・一部弁済と分割返済契約の締結

・一定額の供託・預託

・担保の追加提供

この場合、債権者は「将来的な回収見込みが立つ」と判断すれば仮差押の解除に応じることもあります。

ただし、確実ではなく、交渉力と誠意ある対応が鍵となります。

供託金の積立などを通じ、裁判所に解除を申し立てる

民事保全法に基づき、仮差押によって不当な損害を被っていると主張し、裁判所に対して仮差押の取消や変更を求める申し立ても可能です。

たとえば以下のような対応が考えられます:

・仮差押に対抗する「保全異議申立て」

・債権額に相当する供託金を積んで仮差押の代替措置を取る

・過剰保全の主張(債権額に対して過剰な財産への仮差押)

ただし、この方法は手続きが煩雑で費用や時間がかかるため、実務ではあまり選ばれません。

仮差押に不服がある場合の法的対抗手段

仮差押の原因となる債権が不当である場合、債務不存在確認訴訟や保全異議申立てによって、仮差押自体を取り消すことも理論上は可能です。

たとえば次のような状況が該当します:

・債権が時効により消滅している

・債権がすでに弁済されている

・債権自体が存在しない

ただし、これらを立証するには時間と費用がかかる上、裁判所での争いになるため、最終手段として位置付けられます。

最も現実的で効果的な方法とは?

現実的かつ効果的な方法として最も多く利用されているのは、「任意売却+債権者(公庫など)の合意に基づく仮差押の解除」という手段です。

この方法であれば、債務の返済と仮差押解除を同時に実現でき、競売に移行するリスクも回避できます。

仮差押が入ってしまった段階であっても、早期に専門家へ相談し、債権者と交渉することで解決への道が開けます。

日本政策金融公庫の仮差押でも任意売却は可能?

結論から申し上げますと、日本政策金融公庫が仮差押を設定した不動産でも、任意売却は十分に可能です。

ただし、任意売却を進めるためには以下の2つの条件を満たす必要があります。

債権者(日本政策金融公庫)の承諾を得ること

公庫は公的機関であるため、単なる強硬姿勢に終始せず、債務者の事情や将来の返済計画を考慮した対応をすることが多いです。

したがって、仮差押を解除し、売却に同意してもらうためには、まず公庫側との誠実な交渉が欠かせません。

返済計画や資金使途などを具体的に示し、任意売却によって債権回収が合理的に進むことを理解してもらうことがポイントです。

売却代金で債務整理が合理的に図れること

任意売却は、売却代金を債務返済に充てることで債権者の回収を図る方法です。

公庫としても、競売より高値で売却され債権回収が見込める場合、任意売却を認めやすくなります。

従って、売却価格の目安や債務残高、今後の返済見込みについて合理的な計画が必要です。

これを示せなければ、公庫の同意は得にくくなります。

公庫の特徴と任意売却のポイント

日本政策金融公庫は、民間金融機関とは異なり、経済支援や中小企業の振興という社会的責務があります。

そのため、単なる回収のみならず、債務者の再建や早期解決を重視する傾向があります。

このため、根気強い交渉や誠実な対応、具体的な返済計画の提示があれば、比較的柔軟に任意売却の合意を得られる可能性が高いのが特徴です。

任意売却の流れ(公庫の仮差押ありの場合)

日本政策金融公庫による仮差押がついた不動産の任意売却は、慎重かつ段階的な手続きが必要です。

一般的な流れは以下の通りです。

現状把握

まずは、売却対象の不動産に関する詳細な情報を正確に把握します。

・借入残高の確認
現在の債務額や返済状況を正確に調査します。

・登記簿の確認
抵当権や仮差押、差押などの権利関係を調べ、売却に影響があるかどうか確認します。

・滞納税金・管理費などの調査
固定資産税や都市計画税、管理費・修繕積立金の未払いがある場合は、これも考慮します。

不動産の査定・売却計画の策定

次に、売却価格の目安を算出し、現実的な売却計画を立てます。

・査定価格の算出
近隣の類似物件の成約事例や市場価格を参考に査定します。

・売却計画の策定
売却までの期間や条件、価格交渉の方針などを具体的に決めます。

公庫への任意売却の申し出

査定結果と売却計画に基づき、債権者である日本政策金融公庫へ任意売却の申し出を行います。

・売却計画書・配当案の提出
売却価格と、売却代金を用いてどの程度債務を返済できるかの案を提示します。

・公庫の内部審査
提出した計画が妥当か、公庫内部で審査されます。ここで承諾が得られなければ進行できません。

売買契約締結・引渡し・債務精算

最後に、売買契約の正式締結と物件の引渡しを行います。

売却代金だけでは債務全額を返済できない場合は、分割払いの合意や債務免除交渉を公庫と並行して進めます。

公庫の仮差押があっても、適切な段取りと公庫との誠実な交渉によって、任意売却は十分に実現可能です。

各段階で専門家の支援を受けることで、スムーズかつ有利に手続きを進めることが期待できます。

任意売却の注意点とリスク

任意売却は仮差押が付いた不動産でも可能な有効な手段ですが、以下のような注意点とリスクを理解した上で進める必要があります。

公庫の査定や条件が厳しい場合がある

日本政策金融公庫は公的機関として厳格な審査基準を持っています。

売却価格が市場価値と比較して著しく低いと判断されると、承諾が得られず任意売却が進まないケースもあります。

そのため、事前に信頼できる不動産業者による適正な査定を受け、公庫に説明できる合理的な根拠を用意することが重要です。

他の差押や担保権がある場合、関係者との調整が必要

不動産に対して公庫以外の差押えや抵当権、担保権が設定されている場合は、それぞれの債権者や自治体との調整が必要になります。

特に固定資産税や滞納税金による差押があれば、自治体との配当協議が不可欠です。

これらの調整が長引くと任意売却のスケジュールに影響し、手続きが複雑化するリスクがあります。

時間との戦い

仮差押が設定されている状況は、債権者による差押や競売が差し迫っていることを意味します。

時間的猶予が限られているため、迅速な判断と行動が必要です。

遅れると差押えが実行されて競売に進んでしまい、任意売却での高値売却や交渉の余地が大幅に減少してしまいます。

日本政策金融公庫からの仮差押の不動産は売却できる? 実例紹介

ある個人事業主の方は、新型コロナウイルスの影響で売上が大幅に減少し、日本政策金融公庫への返済が滞ってしまいました。

返済遅延に伴い、公庫から不動産に対して仮差押が入る事態となりました。

この段階で専門家に相談され、任意売却を選択。専門家が公庫との交渉をサポートし、売却代金で残債の約7割を一括返済することに成功しました。

残りの債務については、公庫と分割返済の合意を取り付け、無理のない返済計画を策定しました。

この結果、競売に至らずに不動産を売却でき、事業主の信用回復と経済的再建につながりました。

【まとめ】日本政策金融公庫に不動産に仮差押されても売却できる

日本政策金融公庫による仮差押が設定されていても、任意売却は原則として可能です。

ただし、売却を進めるには公庫の承諾が必須であり、そのためには適切な査定・返済計画・交渉が求められます。

放置してしまえば、仮差押から差押、そして競売へと進行するリスクが高まり、選択肢が狭まってしまいます。

したがって、早期相談・早期対応が最も重要なポイントです。

当社では、仮差押や差押のある不動産の任意売却について豊富な実績があり、査定・売却から債権者(公庫)との交渉までトータルでサポートいたします。

お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

「仮差押=終わり」じゃない。任意売却という“再出発”の選択肢。

💡「もしかして自分も仮差押されるかも…?」「すでに公庫から通知が来て困っている」

そのような方は、お気軽にご相談ください。

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