任意売却
事業再生・事業承継コンサルタント
資金繰り悪化から始まる「工場を失う危機」
ご相談者K様 50代男性/会社経営者
はじめに
経営が厳しくなったとき、真っ先に資金繰りの影響を受けるのが「固定資産」です。
特に製造業では、自社工場が経営の中核にあるため、金融機関からの融資・保証協会の債務・リース契約などの担保対象になっているケースも多くあります。
「もし工場を差押えられたら…」
「営業が止まったら、立て直すチャンスはもうないのでは…」
そんな不安を抱える経営者は少なくありません。
今回は、実際に工場差押え寸前の状態から、リースバックによって事業継続を実現した製造業オーナーの事例をご紹介します。
相談内容
ご相談いただいたのは、創業30年の金属加工業を営むK社のオーナー。
地方の工業団地内にある自社工場で、数名の従業員とともに精密部品の加工を行っていました。
ここ数年、主力取引先の受注減少や資材高騰の影響を受け、売上はじわじわと減少。
それでもなんとか資金繰りを回していましたが、コロナ禍の落ち込みと返済猶予終了が重なり、資金ショートが目前に迫っていました。
・銀行融資の返済延滞2か月
・信用保証協会からの代位弁済予告通知
・工場の担保権実行・差押え予告
オーナーは「もう廃業しかないのか」と思いつつも、
「従業員を守りたい」
「仕事の受注はまだある」
「なんとか事業は続けたい」
と強い気持ちで相談に来られました。
提案した解決の方向性
相談を受けてまず行ったのは、現状の資産と債務の整理です。
・工場の不動産評価額と担保残高を確認
・債権者(銀行・保証協会)との交渉余地を精査
・稼働している受注と事業価値の洗い出し
この結果、工場にはまだ一定の価値があり、任意売却+リースバックで現金化と事業継続の両立が可能であると判断しました。
👉 リースバックとは
自社の不動産(この場合は工場)を売却し、買主と賃貸借契約を結ぶことで、売却後も同じ場所で事業を続ける仕組みです。
売却代金で債務を整理し、毎月の賃料を支払いながら経営を立て直すことができます。
解決に向けた具体的な流れ
① 債権者との交渉
まず、差押のリスクを止めるために銀行と保証協会に連絡。
「任意売却で早期に債権回収を実現できる」ことを説明し、法的手続きに移る前に猶予期間を確保しました。
② 工場のリースバック先の選定
工場の立地・建物の状態・稼働状況を踏まえ、不動産投資会社と交渉。
通常、リースバックは住宅が多いですが、工場や倉庫でも実施可能です。
今回は事業継続性を評価してくれる投資家をマッチングしました。
③ 売却代金で債務整理
売却代金で銀行融資・保証協会の債務を一括返済し、差押えリスクを解消。
債務超過も一部残りましたが、分割返済の合意を取り付け、倒産を回避しました。
④ リース契約の締結
買主との賃貸借契約を締結。
元の工場で従業員はそのまま稼働を継続できました。
オーナーは「事業の再構築」に専念できる環境を得られたのです。
解決後の変化
リースバックによる資金再生スキームの実行により、A社は次のような結果を得ることができました。
✅ 差押え・競売の回避
✅ 借入金の大部分を清算
✅ 自社工場での操業を継続
✅ 取引先・従業員への信用維持
✅ 経営再建計画の立ち上げ
まさに、「工場を失わずに会社を再生した」成功事例となりました。
オーナーはこう語ります。
「もし相談があと1か月遅れていたら、差押えで全てを失っていたと思います。」
この言葉が示すように、“タイミング”こそが事業再建の分かれ道です。
廃業や破産を避けたい経営者にとって、
リースバックなど資産を活かした資金繰り戦略は、再建への有効な選択肢と言えます。
資金が尽きる前に、
「動く勇気」と「専門家の支援」を得ることが、会社と従業員を守る第一歩です。
リースバックを活用する際の注意点
リースバックは、資金繰り再建や差押え回避の有効な手段ですが、“万能の解決策”ではありません。
実務上は、以下のようなポイントを慎重に確認する必要があります。
① 売却価格と賃料のバランス
リースバックは「売却額」と「毎月の賃料」がセットで決まります。
売却価格を高く設定すれば一時的に資金は入りますが、その分、賃料負担が重くなり資金繰りを圧迫するリスクがあります。
長期的に事業を続けるには、「手元資金確保」と「月次支出負担」のバランスが欠かせません。
② 投資家・買主の選定(事業理解の有無)
単なる不動産投資家ではなく、事業再建の視点を理解してくれるパートナー選びが重要です。
製造業や店舗系のリースバックでは、稼働状況・操業音・機械設備など、事業特有の事情を理解できないとトラブルになることがあります。
③ 債権者との交渉タイミング
リースバックは、差押えや競売に入る前に動くことが前提です。
債権者(銀行・保証協会・税務署など)との交渉が遅れると、売却条件や譲渡時期の調整が難しくなり、最悪の場合、交渉の主導権を失います。
「仮差押え通知」や「督促状」が届いた段階で、すぐに専門家へ相談することが大切です。
④ 法的リスクと税務整理の確認
リースバックでも、売却に伴う譲渡所得税や、賃貸契約に関する登記・契約上のリスクがあります。
法人所有の場合は、会計処理や減価償却の扱いにも注意が必要です。
司法書士・税理士・不動産コンサルタントが連携して対応するのが理想です。
⑤ 事業計画の再構築
資金を確保した後に大切なのは、再建計画の立て直しです。
リースバックはあくまで“時間を稼ぐ仕組み”であり、根本的な事業改善がなければ再び資金難に陥る恐れがあります。
売却資金をどのように使うか、固定費削減・取引先見直し・補助金活用などを含めた再設計が必要です。
事業を守る選択肢は「売却=終わり」ではない
経営が厳しくなったとき、多くの経営者は「廃業か継続か」の二択に追い込まれます。
しかし、実際には「資産を活用して時間を稼ぎ、再起を図る」選択肢も存在します。
今回のA社のように、工場をリースバックすることで、従業員と取引先、そして事業そのものを守ることができました。
相談受付中
差押え予告・債務問題・資金ショートでお悩みの経営者さまへ。
早期相談が、会社を守る最大のカギになります。
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👉 「工場を手放したくない…でも資金が足りない」
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