はじめに|相続人と連絡が取れず、不動産の売却が進まない
親が亡くなり、実家や土地を相続したため売却しようと考えたところ、相続人の1人と連絡が取れず、手続きが進まなくなってしまうことがあります。
例えば、兄弟の1人が何年も前に転居しており、どこに住んでいるのか分からないケースです。親族に連絡しても所在が分からず、電話番号も変わっているため、本人の意思を確認できないことがあります。
他の相続人は実家の売却に賛成していても、相続人全員で遺産分割協議を進められなければ、不動産の名義変更や売却に必要な手続きが止まってしまう可能性があります。
その間も、空き家の固定資産税や管理費用は発生し続けます。
このような場合に検討できる制度の1つが「不在者財産管理人」の選任です。
ただし、不在者財産管理人を選任すれば、すぐに不動産を自由に売却できるわけではありません。不在者財産管理人の選任の要件を満たす必要があるほか、遺産分割協議や不動産の売却などを行う場合には、原則として別途、家庭裁判所の許可(権限外行為許可)が必要になります。
この記事では、相続不動産の売却を検討している方に向けて、不在者財産管理人の要件、申立て方法、費用や期間、認知症など他のケースとの違い、選任後の売却代金の扱いまで、実務上の注意点を分かりやすく解説します。
結論|相続人が行方不明でも不動産を売却できる可能性がある

ただし、検討にあたっては以下の4つの実務上の注意点を正しく理解しておくことが重要です。
◎ 「単に連絡がつかない」だけでは選任できません
電話に出ない、LINEが既読にならないといった「音信不通」だけでは対象になりません。戸籍の附票の追跡調査、親族への聞き取り、従来の住所への郵便送付結果など、「所在調査を行った具体的な経過と結果」を裁判所に提出する必要があります。
◎ 不在者財産管理人の選任と「売却許可」は別々の手続きです
不在者財産管理人が選任されても、直ちに不動産を売却できるわけではありません。管理人の本来の役目は財産の「保存・管理」のため、遺産分割や不動産売却を行うには、選任後に管財人から別途「権限外行為許可」を裁判所に申し立てて許可を得る必要があります。
◎ 認知症の相続人がいる場合は、別の制度(成年後見制度等)を検討します
居場所は分かっているものの、認知症などで判断能力が低下している場合は「不在者」には該当しません。この場合は不在者財産管理人ではなく、成年後見制度(後見・保佐・補助)などの適切な支援制度を利用して手続きを進めます。
◎ 不在者の利益を守ることが最優先されるため、ほかの相続人の希望だけでは決められません
不在者財産管理人は、行方不明者の権利と財産を守る立場にあります。「売却代金を残りの相続人だけで分ける」「不当に安く売り払う」といった条件は認められず、本人の潜在的な取得分や利益に配慮した公正な売却条件や分配案を立てる必要があります。
不動産の売却を検討している場合は、相続人の所在調査を進めると同時に、不動産の権利関係の確認、査定による価格の把握、必要な法的手続きの段取りを並行して整理しておくことが、無駄な時間やコストを抑えてスムーズに解決するためのポイントです。
1.不在者財産管理人とは?相続人が行方不明の場合に利用できる制度

1-1.不在者財産管理人の基本的な仕組み
根拠となるのは民法第25条などの規定です。
例えば、相続人の一人が長年行方不明になっており、相続した実家を売却するための遺産分割協議ができない場合があります。
このような場合、ほかの相続人などの利害関係人が家庭裁判所に申し立て、要件を満たせば不在者財産管理人が選任される可能性があります。
選任された管理人は、不在者本人の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の許可を得て、必要な遺産分割協議や財産の処分などを行うことができます。
重要なのは、不在者財産管理人は、ほかの相続人のために行動する人ではなく、行方不明になっている本人の財産を守る立場にあるという点です。
不動産を早く売却したいという事情があっても、不在者の権利や利益を無視して手続きを進めることはできません。
1-2.どのような場合に不在者財産管理人を検討するのか
◎ 相続人の一人が転居しており、現在の住所や居所が分からない。
◎ 長年連絡が取れず、親族も所在を把握していない。
◎ 相続人の一人が行方不明になり、遺産分割協議を進められない。
◎ 共有不動産の処分に必要な対応をしたいが、共有者の所在が分からない。
◎ 不在者が所有する不動産について、管理や処分の必要が生じている。
ただし、これらに該当する事情があっても、必ず選任が認められるとは限りません。
家庭裁判所では、本人の所在が分からない事情や、財産管理の必要性などを確認します。申し立てる前に、本人の住所や連絡先を調べるためにどのような調査を行ったのか、具体的に整理しておくことが重要です。
1-3.相続人と連絡が取れない=不在者財産管理人ではない?成年後見制度や失踪宣告との違い
連絡が取れない理由には、長年にわたって行方が分からない場合、認知症などによって本人が意思決定できない場合、本人が話し合いを拒否している場合など、さまざまな事情があります。大切なのは、連絡が取れないという事実だけで判断せず、その原因や本人の状況に応じた制度を検討することです。
主な制度や対応方法には、次のような違いがあります。
行方が分からず、従来の住所や居所を離れ、容易に戻る見込みがないー不在者財産管理人
一方、遺産分割協議への参加や不在者の不動産の売却など、通常の管理権限を超える行為については、原則として家庭裁判所の許可が必要です。
例えば、遺産分割協議を成立させる場合や、不在者の不動産を売却する場合には、財産の内容や手続きの目的などに応じて、必要な許可を得なければなりません。
そのため、不在者財産管理人が選任されれば直ちに不動産を売却できるわけではなく、売却に至るまでには、権限の確認や家庭裁判所への許可申立てなどの手続きが必要になることがあります。
認知症などにより、判断能力が不十分ー成年後見制度等(後見・保佐・補助)
判断能力が著しく不十分な場合は「後見」、不十分な場合は「保佐」、不十分な部分がある場合は「補助」が検討されます。それぞれ、本人に代わって行える行為や、同意・取消しができる行為の範囲が異なります。
生死不明の状態が長期間続いているー失踪宣告
失踪宣告には、主に次の2種類があります。
普通失踪:従来の住所や居所を去った人の生死が7年間明らかでない場合に、家庭裁判所へ失踪宣告を申し立てることができます。
危難失踪(特別失踪):戦争、船舶の沈没、その他の死亡の原因となる危難に遭遇した人について、危難が去った後、その生死が1年間明らかでない場合が対象となります。
失踪宣告が確定すると、普通失踪では原則として7年間の期間が満了した時に、危難失踪では危難が去った時に死亡したものとみなされます。
ただし、失踪宣告は、単に相続手続きを進めるために利用できる制度ではありません。法定要件を満たす必要があり、相続関係や財産の帰属にも大きな影響を及ぼします。そのため、相続人の所在が分からない場合には、不在者財産管理人の選任など、ほかの手続きも含めて適切な対応を検討することが重要です。
住所や連絡先は分かっているが、遺産分割の話し合いに応じないー遺産分割調停・審判
ただし、相続人の一人が行方不明の場合は、不在者財産管理人の選任など、別の手続きが必要となることもあります。どの手続きを利用するかは、相続人の所在や相続関係などに応じて検討することが重要です。
ポイント
一方、相続人が高齢で認知症になり、遺産分割の内容を理解して判断することが難しい場合には、不在者財産管理人ではなく、成年後見制度等を検討することになります。ただし、認知症という診断だけで制度が決まるわけではなく、本人の判断能力や具体的な状況に応じた判断が必要です。
また、相続人の住所が分かっていて、本人が意図的に連絡を拒否している場合は、通常、それだけで不在者財産管理人の選任要件を満たすことにはなりません。この場合は、遺産分割調停など、別の解決方法を検討する必要があります。
なお、失踪宣告は、単に相続手続きを進めやすくするために利用できる制度ではありません。法律で定められた要件を満たす必要があり、宣告によって相続関係などに重大な影響が生じるため、慎重な検討が必要です。
不動産の売却を進めるためには、まず「なぜ相続人と連絡が取れないのか」を整理し、状況に合った手続きを選ぶことが重要です。 制度の選択を誤ると、手続きのやり直しや売却までの長期化につながる可能性があるため、相続関係と不動産の権利関係を併せて確認しましょう。
2.不在者財産管理人の選任を申し立てることができる人

2-1.ほかの相続人から申し立てることができる
一般に、申立てができるのは、不在者の配偶者や相続人、債権者など、不在者の財産について法律上の利害関係を有する人です。法律上の要件を満たす必要があり、最終的には家庭裁判所が判断します。
例えば、父親が亡くなり、相続人が長男・次男・長女の3人だったとします。
長男と長女は連絡が取れますが、次男は長年行方不明です。実家を売却して遺産分割をしたいと考えていても、次男の所在が分からず、協議が進まない場合があります。
このような場合、長男や長女は、相続人としての利害関係を踏まえて、不在者財産管理人の選任を申し立てることを検討できます。
ただし、申立てができることと、家庭裁判所が選任を認めることは別です。所在調査や財産管理の必要性などを具体的に説明する必要があります。
2-2.申立先はどこの家庭裁判所?
売却したい不動産がある場所の家庭裁判所に申し立てるとは限らないため、注意が必要です。
例えば、売却したい実家が埼玉県さいたま市にあっても、行方不明になっている相続人の従来の住所地などによって、申立先が異なる可能性があります。
申立先が分からない場合は、裁判所の公式ウェブサイトで管轄を確認するか、専門家に相談するとよいでしょう。
2-3.申立てにはどのような書類が必要?
◎ 不在者財産管理人選任の申立書(収入印紙800円分等が必要)
◎ 不在者の戸籍謄本
◎ 不在者の戸籍の附票
◎ 財産管理人候補者の住民票や戸籍の附票など
◎ 不在者の所在が分からないことを示す資料(調査報告書等)
◎ 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書等)
◎ 申立人が利害関係人であることを示す資料
相続不動産の売却を目的としている場合は、相続関係や不動産の権利関係を確認できる資料も整理しておくと、手続きを検討しやすくなります。
3.不在者財産管理人の選任までの流れ

3-1.相続人の所在を調査する
戸籍や戸籍の附票などを確認し、過去の住所や転居の履歴を調べることがあります。
また、親族への聞き取りや、従来の住所への郵便物の送付結果・返戻状況の確認なども、所在調査の手掛かりになります。
ただし、所在調査は個人情報や取得できる資料の範囲にも関わるため、適切な方法で行う必要があります。
3-2.不動産の名義と相続関係を確認する
例えば、亡くなった親の名義のままになっている不動産と、すでに相続人全員の共有名義になっている不動産では、必要な手続きが異なる可能性があります。
相続人の確定ができているか、遺言書があるか、過去に遺産分割協議が行われていないかなども確認する必要があります。
不動産の売却を考えている場合は、単に相続人の所在を調べるだけでなく、売却に必要な登記や書類が何かを整理することが重要です。
3-3.家庭裁判所に選任を申し立てる
家庭裁判所は、提出された書類や不在の事情を確認し、必要に応じて申立人への照会や親族への確認などを行います。
そのため、申立てをすれば必ずすぐに選任されるわけではありません。
所在が分からなくなった経緯や、これまでどのような調査をしたのかを具体的に説明できるようにしておくことが大切です。
3-4.管理人が選任された後も、売却までには手続きが必要
ただし、選任されたことによって、直ちに遺産分割協議や不動産売却ができるわけではありません。
不在者財産管理人の権限は、原則として財産の管理・保存などに限られます。遺産分割協議や不動産の売却など、権限の範囲を超える行為をするには、別途、家庭裁判所の許可が必要です。
この点を理解しておくことが、売却までの見通しを立てるうえで重要です。
4.不在者財産管理人が選任されても、すぐに不動産を売却できない理由

4-1.遺産分割協議には権限外行為許可が必要
そのため、管理人が自由に本人の財産を処分したり、ほかの相続人の希望に合わせて遺産分割協議を成立させたりすることはできません。
不在者に代わって遺産分割協議を行う場合は、原則として家庭裁判所に「権限外行為許可」を申し立て、許可を得る必要があります。
なお、権限外行為許可の申立ては、選任された不在者財産管理人が行います。 ほかの相続人が管理人の選任を申し立てた場合であっても、その申立人が選任後の許可申立てを当然に行えるわけではない点にご注意ください。
4-2.権限外行為許可とは?
例えば、次のような行為が対象になります。
◎ 不在者に代わって遺産分割協議を行う
◎ 不在者の不動産を売却する
◎ 不在者の財産を処分する必要がある
許可の申立ては、原則として、不在者財産管理人を選任した家庭裁判所に行います。
重要なのは、選任の申立てと権限外行為許可の申立ては、別の手続きだという点です。権限外行為許可は、選任された管理人が申し立てることになります。
4-3.家庭裁判所の主な検討事項の例
◎ 売却・処分を行う合理的な理由・必要性があるか(維持管理費用や老朽化リスクなど)
◎ 売却価格や取引条件が妥当であるか(客観的な査定資料の有無など)
◎ 遺産分割の内容や売却条件が、不在者本人の利益を不当に害するものになっていないか(法定相続分等も考慮し、本人の取得分や利益が適切に確保されているか)
4-4.売却代金のうち、不在者の取得分はどうなる?
不在者財産管理人が関与して不動産を売却する場合、売却代金の扱いは、遺産分割の内容や不動産の権利関係などによって異なります。
不在者が取得する財産や金銭については、本人の利益を害することがないように取り扱わなければなりません。ほかの相続人の都合だけで、不在者の取得分を自由に決められるわけではありません。
そのため、売却代金の分配方法や管理方法は、遺産分割の内容、売却の方法、家庭裁判所の許可内容などを踏まえて整理する必要があります。具体的な取扱いは個別の事情によって異なるため、手続きに関与する専門家や家庭裁判所に確認しましょう。
5.不在者財産管理人の費用はいくら?申立て費用と予納金

費用は「申立てにかかる実費」「裁判所に納める予納金」「専門家への報酬」を区別して整理することが大切です。
5-1.家庭裁判所への申立てにかかる費用
◎ 選任申立て:収入印紙800円分+連絡用郵便切手代など
◎ 権限外行為許可申立て:収入印紙800円分(処分対象ごと)+連絡用郵便切手代など
費用の詳細は申立先の家庭裁判所の案内を確認してください。
5-2.予納金が必要になる場合がある
予納金の要否や金額は、管理する財産の内容、管理に必要な事務、管理期間の見込みなどによって異なります。全国一律の金額ではないため、特定の金額を前提にせず、申立先の家庭裁判所や依頼する専門家に確認することが大切です。
5-3.不在者財産管理人の報酬は誰が負担する?
また、管理人の業務が長期にわたる場合には、継続的な費用負担が問題になることもあります。
不動産を売却する目的で制度の利用を考える場合は、売却によって得られる金額だけでなく、手続きに必要な費用や時間も含めて検討する必要があります。
5-4.弁護士や司法書士などの専門家に依頼する費用
また、専門家に依頼する業務の範囲によっても費用は異なります。不在者財産管理人の選任申立てだけでなく、その後の遺産分割協議や不動産売却に向けた手続きまで依頼する場合には、追加の費用が必要となることもあります。
そのため、依頼前に見積もりを取り、報酬に含まれる業務内容や追加費用の有無を確認しておくことが大切です。
6.不在者財産管理人の選任から不動産売却まで、どのくらいの期間がかかる?

ただし、期間は事案によって異なり、一律の期間を断定することはできません。
手続きは、①事前準備・所在調査 → ②選任申立て・審理 → ③管理人による調査・管理開始 → ④権限外行為許可の申立て(※管理人が実施)・審理 → ⑤売買契約・決済・登記 という複数の段階を踏むためです。
例えば、次のような事情がある場合は、手続きが長期化する可能性があります。
◎ 不在者の所在調査に時間がかかる
◎ 相続人の確定に時間がかかる
◎ 不動産の登記や権利関係に問題がある
◎ 遺産分割の内容について調整が必要
◎ 権限外行為許可の審理に追加資料が必要になる
◎ 売却価格や売却条件について整理が必要
また、不在者財産管理人の選任と権限外行為許可は別の手続きです。そのため、選任が終わった段階で売却までのすべての手続きが完了したと考えないことが大切です。
不動産の売却を急いでいる場合ほど、早い段階から相続関係や不動産の状況を確認し、必要な手続きの見通しを立てておくことをおすすめします。
7.不動産売却の実務で注意したい5つのポイント

7-1.不在者の所在調査と不動産調査を並行して進める
売却を考えている不動産についても、登記事項証明書や固定資産税の資料などを確認し、現在の名義や権利関係を整理しておくことが大切です。
例えば、相続登記が必要なのか、抵当権が残っているのか、共有者がほかにもいるのかなどを把握しておくことで、売却に向けて必要な対応を検討しやすくなります。
7-2.売却査定は早めに依頼してもよい
ただし、査定を受けることと、売買契約を締結したり所有権を移転したりすることは別です。
法的な手続きが整っていない段階では、売却を確約できない場合があります。
不動産の価格や売却の見通しを把握しておくことは、今後の判断材料になりますが、具体的な進め方は専門家と確認しながら進めましょう。
7-3.売却価格の根拠を整理しておく
そのため、不動産の売却を予定している場合は、価格の根拠を説明できるようにしておくことが役立ちます。
例えば、周辺の取引事例、土地や建物の状態、接道状況、法令上の制限、建物の解体費用などを踏まえて、価格を検討します。
相続不動産には、一般的な住宅とは異なる事情を抱えた物件もあります。単純に周辺の売出価格だけを参考にするのではなく、物件固有の条件を確認することが大切です。
7-4.空き家の維持費や管理負担も考える
建物の老朽化が進めば、雨漏りや外壁の損傷、庭木の繁茂などの問題が生じることもあります。ただし、費用がかかるからといって、必要な法的手続きを省略することはできません。
費用や管理負担を整理しながら、適法に売却を進める方法を検討することが重要です。
7-5.相続人の問題以外に売却の障害がないか確認する
例えば、次のような問題です。
◎ 相続登記が未了になっている
◎ 抵当権や差押えなどの登記がある
◎ 共有者がほかにもいる
◎ 境界や越境の問題がある
◎ 接道条件や再建築の制限がある
◎ 建物の解体や残置物の処理が必要
こうした問題は、売却の直前になって発覚するより、早い段階で把握しておく方が対応を検討しやすくなります。
相続人の問題だけに注目せず、不動産全体の状況を確認することが大切です。
8.不在者財産管理人を利用する前に確認したいこと

相続関係について
◎ 誰が亡くなり、誰が相続人になっているのか
◎ 遺言書が残されていないか
◎ 相続人の一人が所在不明になった経緯
◎ これまでにどのような所在調査を行ったか
不動産について
◎ 不動産の現在の名義
◎ 相続登記が済んでいるか
◎ 共有者や抵当権などの権利関係
◎ 売却を希望する理由と時期
◎ 建物や土地の管理状況
費用と今後の方針について
◎ 家庭裁判所の手続きに必要な費用
◎ 管理人の報酬や予納金の可能性
◎ 売却査定額と維持管理費用
◎ 売却代金の分配方法
◎ 専門家に依頼したい業務の範囲
これらを整理しておけば、単に「相続人が行方不明で困っている」という相談から一歩進み、どのような解決方法が考えられるかを具体的に検討しやすくなります。
9.難しい専門用語を分かりやすく解説

不在者
不在者財産管理人
遺産分割協議
遺産分割協議を行う場合は、原則として相続人全員が参加する必要があります。相続人の一人が不在者である場合には、不在者財産管理人の選任などを検討することがあります。
権限外行為許可
予納金
予納金が必要かどうかや、その金額は事案によって異なります。
相続登記
相続した不動産を売却する場合は、現在の登記名義や相続関係を確認し、必要に応じて相続登記などの手続きを進める必要があります。
10.不在者財産管理人に関するよくある質問(Q&A)

Q1.相続人の一人と何年も連絡が取れません。不在者財産管理人を選任できますか?
まずは戸籍や戸籍の附票などを確認し、最後に確認できた住所や転居先を調べるなど、所在調査を進めることが重要です。そのうえで、遺産分割協議が進められないなど、具体的な事情を整理し、不在者財産管理人の選任申立てを検討しましょう。
Q2.不在者財産管理人が選任されれば、相続不動産を売却できますか?
また、不動産の名義や相続関係によっては、相続登記などの手続きも必要になります。売却を進める際は、管理人の権限や家庭裁判所の許可の要否を確認し、法的な手続きと不動産取引の準備を並行して進めることが大切です。
Q3.不在者財産管理人は、親族がなることもできますか?
例えば、候補者自身も相続人であり、遺産分割協議で不在者と利害が対立する可能性がある場合には、別の人が選任されることもあります。親族を候補者にする場合は、利害関係や管理する財産の内容を整理したうえで、申立てを検討しましょう。
Q4.不在者財産管理人の費用は誰が負担しますか?
管理人の報酬や財産管理に必要な費用は、原則として不在者の財産から支払われますが、不在者の財産が不足している場合などには、申立人が予納した金銭から充てられることがあります。必要な費用は事案によって異なるため、申立てを検討する段階で、家庭裁判所や依頼する専門家に確認しておくと安心です。
Q5.行方不明の相続人がいる場合、失踪宣告を利用した方がよいですか?
ただし、単に連絡が取れないという理由だけで利用できる制度ではありません。また、失踪宣告が確定すると、相続関係や財産の帰属にも大きな影響が生じます。
そのため、相続人の所在が分からない場合は、失踪宣告の要件を満たすかを確認するとともに、不在者財産管理人の選任など、ほかの手続きも含めて状況に合った方法を検討することが重要です。
Q6.相続人の住所は分かっていますが、連絡を拒否されています。不在者財産管理人を利用できますか?
このような場合は、まず書面による連絡など、話し合いを進める方法を検討します。それでも遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。
調停でも合意に至らない場合は、原則として審判手続に移行します。本人の所在や連絡状況、話し合いが進まない理由を整理し、適切な手続きを確認しましょう。
Q7.不在者財産管理人の手続き中でも、不動産会社に相談できますか?
ただし、不動産の査定や売却相談と、売買契約の締結や所有権移転は別の手続きです。管理人の選任前や必要な許可を得る前に、売却を確約できるわけではありません。相続登記の状況や権利関係も確認しながら、弁護士などの専門家や不在者財産管理人と連携して進めることが大切です。
Q8.不在者財産管理人の選任後、行方不明の相続人が見つかったらどうなりますか?
例えば、本人が戻ってきた時点で遺産分割協議が完了していない場合は、本人が協議に参加できるかを含めて、その後の進め方を検討する必要があります。すでに家庭裁判所の許可を得て何らかの行為を行っている場合なども、個別の状況に応じた確認が必要です。
本人の所在が判明したときは、不在者財産管理人が独自の判断で手続きを終了させるのではなく、家庭裁判所に連絡し、財産の引継ぎや管理人の職務について必要な対応を確認することが重要です。
11.筆者の見解|相続人が行方不明の場合、不動産売却の準備は早い段階から始めることが大切です
実際には、相続人の所在調査だけでなく、相続関係の確認、不動産の名義や権利関係の整理、売却の必要性や条件の検討など、複数の課題を整理する必要があります。
また、不在者財産管理人を選任すれば必ず売却できるというものでもありません。選任後に必要となる家庭裁判所の許可や、不在者の利益に配慮した売却条件についても考えておく必要があります。
大切なのは、最初から一つの手続きだけに絞るのではなく、「誰が相続人なのか」「どのような事情で連絡が取れないのか」「どの不動産をどのような条件で売却したいのか」を整理し、状況に合った進め方を検討することです。
相続人の問題と不動産売却の問題を切り離さず、両方を見据えて準備することが、手続きのやり直しや無用な時間のロスを防ぐうえで重要だと考えています。
12.まとめ|相続人が行方不明で不動産が売れない場合は、早めに対応を検討しましょう
ただし、選任には一定の要件があり、選任後も遺産分割協議や不動産の売却には別途、家庭裁判所の許可が必要になる場合があります。
また、申立て費用や予納金、管理人の報酬などが生じる可能性があるほか、所在調査や家庭裁判所の審理に時間がかかることもあります。
相続不動産の売却を考えている場合は、次の点を意識しましょう。
◎ 相続人の所在や連絡状況を確認する。
◎ 不在者財産管理人の選任要件を確認する。
◎ 相続関係や不動産の名義、権利関係を整理する。
◎ 遺産分割協議や売却に必要な許可を確認する。
◎ 費用や期間、空き家の管理負担を踏まえて今後の方針を考える。
相続人の問題によって不動産売却が止まってしまった場合は、早い段階から必要な手続きを整理することが大切です。
相続人と連絡が取れず、不動産売却でお困りの方へ

ワイズエステート販売株式会社では、提携司法書士などの専門家と連携し、複雑な権利関係を抱えた不動産の売却についてご相談を承っています。
相続人の所在が分からず不動産売却が進まない方、相続手続きと不動産の問題をどこに相談すればよいか分からない方は、まずは現在の状況をお聞かせください。
売却の方針が決まっていない段階でも、現状を整理することからご相談いただけます。
※本記事は一般的な制度の解説です。実際に利用できる手続きや必要書類、費用、期間などは個別事情によって異なります。具体的な申立てや法律上の判断については、弁護士・司法書士などの専門家や管轄の家庭裁判所にご確認ください。