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市街化調整区域でのクリニック・病院の開発行為・建築等のお話です

市街化調整区域の不動産を「売れない」と諦める前に

市街化調整区域の不動産を所有している方から、

  • 不動産会社に売却を断られた
  • 建物が建たない土地だから価値がないと言われた
  • 相続したが使い道が分からず放置している

このようなご相談を受けることは少なくありません。

確かに、市街化調整区域は原則として新たな開発行為や建築行為が制限されており、全ての不動産を住宅用地としては売却するのは難しいのが現実です。

しかし、市街化調整区域は「何も建てられない土地」ではありません。

こちらのブログでは、 市街化調整区域の土地が「医療施設用途」で評価される理由と、 売却を検討する際に知っておくべきポイントを、実務目線で解説します。

市街化調整区域とは?

市街化調整区域は、都市計画法により「無秩序な市街化を抑制する区域」として指定されています。

重要なのは、 市街化を抑制する=生活に必要な施設まで建築する事が出来ない区域ではないという点です。

実際に都市計画法では、 市街化調整区域に居住する人々の生活を維持するため、 一定の公益性を持つ施設については建築を認める法律があります。

この制度的な位置づけを理解することが、 「売れない土地」から「用途次第で売れる土地」へと視点を変える第一歩になります。

市街化調整区域で医療施設・クリニックは建築できる?

市街化調整区域でも、都市計画法第34条に基づき、診療所とクリニックの建築は可能です。

しかし、開業には開発許可申請など、多くの行政手続きが必要となります。

これらの手続きには時間がかかることが多いため、スケジュールには余裕を持つことが重要です。

また、土地の用途変更や形質変更、建築に関する高度な専門知識が求められるため、早い段階で専門家の協力を得ることがスムーズな開業につながります。

医療施設=公益性の高い用途

医療施設は、公益性の高い施設として自治体の審査対象になります。

市街化を抑制しなければならない区域といえども、市街化調整区域に居住されている方にも生活があり医療施設は必要です。

その結果、住宅用途では評価されにくい市街化調整区域の土地でも、医療用途という前提が加わることで、検討対象になるケースが生まれます。

市街化調整区域でも医療施設・クリニックを建てられる理由とは?

通常、市街化調整区域では、新たな建築や開発行為が原則として認められていません。

都市計画法第34条1号の立地基準を満たせば、診療所・クリニックの開発行為・建築行為は可能になる可能性があります。

都市計画法第34条に基づく特例として、地域住民の生活に必要不可欠な医療施設などの公益性の高い建築物は、自治体の判断によって許可される場合があります。

そのため、クリニックの建築も以下の条件を満たすことで可能となります。

地域に必要な医療施設であること

クリニックがその地域にとって本当に必要かどうかが重要です。

既に、十分な医療機関がある場合、新たなクリニックの建設は認められにくくなります。

しかし、近隣に医療機関が少なく、住民が適切な医療を受けるのが難しい状況であれば、許可が下りる可能性が高まります。

例えば、高齢者の多い地域や、小児科や内科など特定の診療科が不足している地域では、新しいクリニックの設立が認められやすいでしょう。

自治体の許可を得ること

クリニックの建設を進めるには、自治体の開発許可を取得する必要があります。

自治体ごとに審査基準が異なるため、事前にしっかりと調査し、適切な手続きを踏むことが重要です。

具体的には、地域の医療需要を示す資料を準備したり、自治体と協議を重ねたりすることで、許可が得られる可能性が高まります。

立地基準を満たすこと

クリニックは、住民が利用しやすい場所に建てる必要があります。

例えば、主要道路沿いや既存の集落内など、アクセスの良い立地が求められます。特に高齢者や車を利用できない人々が通院しやすいように、公共交通機関の利用が可能な場所が望ましいでしょう。

また、十分な駐車スペースを確保できるかどうかも、重要な判断基準となります。

市街化調整区域の医療施設・クリニック建築のメリット

市街化調整区域での医療施設・クリニックの建設には、以下のようなメリットがあります。

土地価格が市街化区域に比べると安い

市街化調整区域は、都市部から離れた郊外に指定されることが多く、土地の価格が比較的低い傾向にあります。

そのため、都市部での開業に比べて初期投資を抑えることが可能です。

また、広めの土地を確保しやすく、十分な駐車スペースを設けることも容易です。

同業の競合が少ない

市街化調整区域では、新規の建物建設が制限されているため、医療機関の数も少ない傾向にあります。

その結果、競合が少なく、地域の医療ニーズを満たしながら安定した患者数を確保しやすい環境が期待できます。

地域貢献ができる

医療過疎地域にクリニックを開設することで、地域住民の健康維持に大きく貢献できます。

特に、高齢者が多い地域や、特定の診療科が不足している地域では、クリニックの存在が住民の生活の質を向上させる重要な役割を果たします。

目立ちやすい立地

郊外の市街化調整区域では、周囲に建物が少ないため、クリニックが目立ちやすいという利点があります。

これにより、大掛かりな広告を行わなくても、自然と患者を集める効果が期待できます。

これらのメリットを最大限に活かすためには、地域の医療ニーズを十分に把握して適切な立地選びや自治体との連携を図ることが重要です。

また、開業に際しては、専門家のアドバイスを受けながら計画を進めることで、スムーズな運営が期待できます。

市街化調整区域での医療施設・クリニックの建築のデメリット

市街化調整区域でのクリニック建設には、さまざまなメリットがある一方、特有のデメリットも存在します。

これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることが成功するクリニック運営の鍵となります。

開発行為の許可が必要

市街化調整区域では、開発行為や建築行為が厳しく制限されています。

市街化調整区域で医療施設・クリニックを建設する際には、都市計画法第34条に基づく開発許可申請が必要となり、厳格な審査を受けることになります。

この審査をクリアしなければ、建設を進めることができません。

開発行為の許可取得のプロセスは複雑で時間がかかる場合があり、計画通りに進まないリスクも考慮する必要があります。

対策

●事前に専門家や自治体と連携し、必要な手続きや書類を確認する。

●余裕を持ったスケジュールを組み、許可取得に必要な時間を確保する。

インフラ整備が不十分

市街化調整区域は、都市部から離れた郊外や農村地域に指定されることが多くインフラが十分に整備されていない場合があります。

そのため、これらのインフラを新たに整備する必要が生じ、追加のコストや時間がかかる可能性があります。

対策:

●建設予定地のインフラ状況を事前に調査し、必要な整備項目と費用を把握する。

●インフラ整備に関する自治体の補助金や助成金の有無を確認し、活用を検討する。

交通アクセスの課題

市街化調整区域では、公共交通機関の便が乏しい場合が多く、患者やスタッフの来院・通勤が困難になる可能性があります。

特に、高齢者や車を持たない患者にとっては、大きなハードルとなるでしょう。

対策

●十分な駐車スペースを確保し、車での来院をサポートする。

●地域の交通事情を考慮し、送迎サービスの導入や最寄りの公共交通機関からのアクセス情報を提供する。

集患の難しさ

市街化調整区域は人口密度が低いため、患者数の確保が課題となる場合があります。

周辺に医療機関が少ないことはメリットである一方、潜在的な患者数自体が少ないと経営に影響を及ぼす可能性があります。

対策

●地域の医療ニーズを事前に調査し、必要とされる診療科目やサービスを提供する。

●地域住民とのコミュニケーションを積極的に図り、信頼関係を築く。

●オンライン診療や訪問診療など、多様な診療形態を取り入れ、患者の利便性を高める。

市街化調整区域でのクリニック建設は、これらのデメリットを十分に理解し、適切な対策を講じることで、地域医療への貢献と安定した経営を実現することが可能です。

計画段階から専門家や自治体と連携し、綿密な準備を行うことが成功への鍵となります。

市街化調整区域の土地に医療施設・クリニックが建築できる法的根拠

― 都市計画法第34条第1号の立地基準とは ―

市街化調整区域では、原則として新たな開発行為や建築行為は認められていません。
この点だけを見ると、「市街化調整区域の土地に建物は建てられない」「売却も難しい」と考えられがちです。

しかし、都市計画法は市街化調整区域を“何も建ててはいけない区域”として設計しているわけではありません。

都市計画法第34条は、市街化調整区域においても、地域住民の生活を維持するために必要な施設については、一定の条件のもとで開発行為・建築行為を認めるという考え方を明確に示しています。

その代表的な規定が、都市計画法第34条第1号です。

都市計画法第34条第1号の基本的な考え方

都市計画法第34条第1号では、次のような趣旨が定められています。

市街化調整区域内に居住する者の日常生活に必要な施設で、その区域内に建築されることがやむを得ないものについては、開発許可を与えることができる。

この条文が意味する重要なポイントは次の3点です。

・市街化調整区域にも「居住者の生活」は存在する

・住民の生活を支える施設まで排除する趣旨ではない

・住民が生活するにあたって必要性と立地の妥当性があれば、建築を認める余地がある

つまり、第34条第1号は市街化調整区域の生活を成立させるための“例外規定”ではなく、“前提規定”とも言える条文です。

医療施設・クリニックが第34条第1号に該当しやすい理由

診療所やクリニックは、都市計画法上、次の点で評価されます。

・地域住民の日常生活に不可欠な施設である

・他の用途に代替しにくい(医療は近接性が重要)

・高齢者や通院困難者の生活維持に直結する

このため、医療施設は市街化調整区域においても必要性が認められやすい公益性の高い施設として扱われます。

住宅や店舗、投資目的の建物とは異なり、「その地域に存在する合理性」が明確である点が大きな特徴です。

「例外的に建てられる」のではなく「制度上想定されている用途」

市街化調整区域での医療施設建築は、よく「例外的に認められる」と説明されますが、実務的にはやや誤解を含みます。

正確には、

・無秩序な市街化を防ぐ

・しかし生活を維持する機能は確保する

・医療施設はそのために必要不可欠

という都市計画制度の思想に基づき、あらかじめ想定された用途の一つとして判断されているのが実情です。

そのため、「市街化調整区域だから絶対に建てられない」という判断は正しくありません。

立地基準として求められる主な考え方

都市計画法第34条第1号に基づき、医療施設が検討される際には、主に次の点が重視されます。

・その地域に医療施設の必要性があるか

・既存の医療機関で需要が満たされているか

・住民が日常的に利用できる立地であるか

・幹線道路や生活道路に接しているか

・駐車場など利用に必要な敷地条件を満たしているか

これらは自治体ごとの判断基準によって具体化されるため、事前協議が極めて重要になります。

この法的根拠が「売却可能性」に直結する理由

市街化調整区域の土地が売却しづらい最大の理由は、「どんな用途で使えるのかが見えない」ことです。

しかし、

・医療施設という明確な用途

・都市計画法第34条第1号という法的根拠

・自治体判断の余地がある制度設計

これらが整理されることで、土地は「建てられない土地」から「用途次第で評価される土地」へ変わります。

実際、医療法人や開業医にとっては、

・市街化区域より地価が抑えられる

・駐車場を確保しやすい

・競合が少ない

といった理由から、市街化調整区域の土地が積極的に検討されるケースも少なくありません。

市街化調整区域の不動産を所有している方が知っておきたい事

都市計画法第34条第1号のすべての市街化調整区域の土地が対象になるわけではありません。
実務上、次のような条件を満たす土地は、検討されやすい傾向があります。

・生活道路・幹線道路に接道している

・既存集落の近くに位置している

・敷地にある程度のまとまりがある

・駐車場を確保できる広さがある

・上下水道・浄化槽などインフラ対応が可能

これらは売却前に把握しておくべき重要な評価ポイントです。

大規模な医療施設は建築はできるの?

市街化調整区域に大規模な医療施設がある場合はありますね。

今までのお話は、小規模な医療施設の開発行為・建築行為について解説しましたが、大規模な医療施設はどうなのか疑問を感じている方もいるでしょう。

結論から申し上げますと、各自治体によって判断基準が違うということを前提にお話をしますと、都市計画法第34条14号の立地基準を満たせば可能性が僅かながらあります。

しかし、今回のお話で例えると、その自治体に大規模な医療施設が必要なのかということを協議して決定されることになるので許可が下りるのはレアケースと言えるようです。

まとめ

市街化調整区域で診療所・クリニックを建築するには、都市計画法第34条の立地基準をクリアすることが不可欠です。

土地の安さや競争の少なさといったメリットがある一方で、開発行為の制限やインフラ不足といったデメリットもあるため、事前のリサーチが重要です。

市街化調整区域でのクリニック開設を検討する際は、自治体の担当部署や専門家に相談しながら計画を進めることをおすすめします。

お知らせ

「市街化調整区域の不動産を売却したいけど、不動産会社に断られた」とお悩みの方は、ワイズエステート販売株式会社にご相談ください。

市街化調整区域の不動産は、都市計画法や農地法の観点から立地基準・用途等を見極めて売却計画を立てることで、良い条件での売却の可能性が高まります。

まずは、お気軽にお問い合わせください。あなたの不動産の悩みを解決し、安心して売却できるよう全力でお手伝い致します。


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