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相続した実家の名義は「単独」か「共有」か?配偶者と子供2人の出口戦略と税金の盲点

相続した実家の名義は「単独」か「共有」か?配偶者と子供2人の出口戦略と税金の盲点

1. はじめに:実家相続を「とりあえず」で決めると誰が損をするのか?

親が亡くなり、実家を相続することになったとき、多くの家族が「名義をどうするか」という問題に直面します。

特に「配偶者(残された母または父)と、成人した子供2人」という家族構成は、一見すると円満に話し合いが進みそうな理想的なバランスに見えます。

しかし、実務の現場において、トラブルや後悔の種が植え付けられやすいのは、この「配偶者+子供2人」のケースなのです。

「みんなで平等に分ければ文句が出ないだろうから、とりあえず3人の共有名義にしておこう」

「名義変更の手続き(相続登記)が義務化されたから、ひとまず法定相続分通りに登記だけ済ませてしまおう」

このような安易な判断は、将来的に実家を「売却する」とき、あるいは「誰かが住み続ける」ときに、多額の税金ペナルティや家族間の深刻な亀裂を生む引き金になります。

不動産は、現金や預貯金のようにハサミで綺麗に3等分することはできません。

名義の選択肢一つで、手残りの現金が数百万円単位で変わるだけでなく、次の世代(二次相続)にまで重い足かせを残すことになるのです。

こちらのブログでは、相続や不動産流動化の現場で数多くの複雑な資産整理をコーディネートしてきた専門家の視点から、配偶者と成人した子供2人が選ぶべき「名義の正解」を、売却・居住という出口戦略と、一般の不動産会社が語りたがらない税務の盲点まで踏み込んで徹底的に解説します。

【著者プロフィール】 山中 賢一
ワイズエステート販売株式会社 代表取締役
不動産売却専門 兼 廃業・事業再生コンサルタント

埼玉県さいたま市を拠点に、大手不動産会社やFC店で「売却不可」と断られた市街化調整区域の売却において圧倒的な実績を持つ専門家。また、弁護士をはじめとする士業や専門家集団を率いる「プロデューサー」として、権利関係が複雑な訳あり物件、相続トラブル、さらには企業の廃業・再生に伴う資産整理まで、金融・法務・実務の三位一体で顧客の「後悔のない選択」を支援している。

【結論】「配偶者+子供2人」の相続登記における最適解

まずは、この記事の最も重要な結論からお伝えします。

配偶者と成人した子供2人が実家を相続する場合、その実家を「将来どうするのか(出口戦略)」によって、選ぶべき名義は明確に2つに分かれます。

「迷ったらとりあえず3人の共有名義」という選択肢は、どちらのケースにおいても絶対に避けるべき最悪の手です。

【実家の今後の出口戦略】

├─① 将来的に「売却して現金化」する
│ └─⇒【最適解】実家に住む『配偶者の単独名義』にして「換価分割」

└─② 配偶者がそのまま「住み続ける」
└─⇒【最適解】『配偶者の単独名義』 + 必要に応じて「配偶者居住権」の活用

将来的に「売却して現金化」する場合の結論

⇒「配偶者の単独名義」にして、遺産分割協議書に基づき「換価分割」を行う。

実家を売却してお金で分ける場合、安易に3人の共有名義にしてはいけません。
不動産の売却手続きの際、全員の書類や実印が必要になり極めて煩雑になるだけでなく、最大の落とし穴は「税金(譲渡所得税)」にあります。

実家を出て自立している子供2人には、売却益にかかる税金を大きく減らせる「3,000万円の特別控除(居住用財産の特例)」が適用されません。

もし共有名義のまま売却すると、子供たちの持分に対して多額の税金が課されてしまいます。

スムーズに、かつ税負担を最小限にするプロの選択

あらかじめ遺産分割協議書で「売却するために一時的に(特例が使える)配偶者の単独名義とする。売却代金から諸経費を差し引いた残額を、3人で法廷相続分通りに分配する(換価分割)」と明記しておきます。

これにより、税負担を賢く抑えつつ、1円単位まで公平かつスムーズに現金化することが可能になります。

配偶者がそのまま「住み続ける」場合の結論

⇒ 配偶者の「単独名義」にする。または「配偶者居住権」を設定する。

お母様(またはお父様)が残りの人生をその家で暮らす場合、子供たちの名義を少しでも入れるのはリスクしかありません。

成人した子供たちには、それぞれの人生設計(結婚、マイホーム購入、起業、あるいは離婚や自己破産などの予期せぬリスク)があります。

「次の相続(二次相続)」で実家が完全にフリーズする恐怖

さらに恐ろしいのは、万が一、子供が先に亡くなった場合です。

子供の持分は、その配偶者(義理の息子・娘)や孫へと相続されます。

結果として、「全く面識のない親族や、折り合いの悪い義理の権利者」が実家の名義に登場し、配偶者が自分の家なのに住み続けられなくなったり、売ることも直すこともできない「お化け物件」化したりする恐れがあります。

残された配偶者の生活を守るためには、配偶者の「単独名義」にするか、あるいは家の所有権(名義)は子供たちに譲りつつ、配偶者が死ぬまで無償で住める権利である「配偶者居住権」を登記するのが、将来のトラブルを未然に防ぐ確実な防貧の策となります。

「共有名義」が引き起こす3つの致命的リスクと実務のリアル

なぜ、これほどまでに不動産の実務家や専門家は「共有名義」を嫌うのでしょうか。

一般的な不動産会社のホームページでは、「共有名義にすると売却時に全員の同意が必要です」といった表面的な解説にとどまることが多いですが、実務の現場で起きるトラブルはもっと泥臭く、深刻です。

成人した子供が2人以上いるからこそ発生する、未来の家族を壊す「3つの致命的リスク」を深掘りします。

リスク①:意思決定の「完全ロック」と、避外できない兄弟格差

不動産を安易に共有名義(例:配偶者2/1、子A 4/1、子B 4/1)にすると、売却、解体、大規模リフォーム、さらには賃貸に出すといったすべての行為に「共有者全員の同意(実印と印鑑証明)」が必要になります。

「うちは兄弟仲が良いから大丈夫」
そう断言する方に限って、数年後に大トラブルに発展しています。子供が成人していれば、それぞれの配偶者(嫁・婿)や、それぞれの家庭の経済事情が大きく影響してくるからです。

【実務のリアルな衝突シーン】

高齢になったお母様が施設に入所することになり、実家を売却してその一時金や介護費用に充てようとしたケース。

●子A:「お母さんの介護費用のために、1日も早く売りたい」

●子Bの配偶者:「今は不動産の市況が悪いから売るべきではない。もっと高値で売れるまで待つべきだ」

このように、一人でも反対者(またはその後ろにいる配偶者)が出た時点で、実家は売ることも貸すこともできない「塩漬け資産(完全ロック状態)」になります。兄弟間の経済的格差や、それぞれの家庭の事情によって、実家に対するスタンスは必ずズレていくのです。

リスク②:子供の「人生の転落」に実家が巻き込まれる恐怖

共有名義にするということは、実家の一部(持分)が法律上、完全に「子供個人のプライベートな資産」になるということです。

これは、子供が今後の人生で起こす(あるいは巻き込まれる)経済的トラブルが、ダイレクトに実家へ波及することを意味します。

もし、子供の1人が事業に失敗して多額の債務を抱えたり、住宅ローンの返済に窮したり、自己破産をすることになった場合、債権者(金融機関や国税局)は、その子供が持つ「実家の持分(4/1など)」を容赦なく差し押さえます。

ある日突然、見知らぬ業者が実家にやってくる

差押えられた持分は競売にかけられ、いわゆる「持分買い取り専門の不動産業者(プロの海千山千)」に安値で買い取られてしまうケースが後を絶ちません。

ある日突然、見知らぬ業者が実家にやってきて、中に住んでいる高齢のお母様に向かってこう言い放ちます。
「私はこの家の4/1のオーナーです。住み続けたいなら、私に毎月家賃を払うか、私の持分を数百万円で買い取ってください。さもなければ、家全体を競売にかけてお金で強制分配しましょう(共有物分割請求)」

これは絵空事ではありません。

実務の現場では日常茶飯事に起きている、地獄のようなシナリオです。

リスク③:実家の権利が「ネズミ算式」に広がる時限爆弾

共有名義の最大の罠は、「時間が経てば経つほど、解決が100%不可能になる」という点にあります。

当初は「配偶者・子A・子B」の3人で共有名義にしていたとします。数年後、子Aが不慮の事故や病気で亡くなってしまった場合、子Aが持っていた実家の持分は、子Aの配偶者やその子供(孫)へと相続されます。

【数次相続による権利拡散のイメージ】

 当初:[母] + [兄(子A)] + [弟(子B)] の3人(話し合いが可能)
     ▼ 数年後、兄が死亡
 現在:[母] + [弟] + [義理の姉] + [甥・姪]

気づいたときには、「普段まったく連絡も取らない、折り合いの悪い義理の権利者」が実家のオーナーに名を連ねることになります。

こうなると、いざ実家を売却しようとしても、連絡がつかない、実印を押してくれない、ハンコ代として法外な金銭を要求される、といった事態になり、手続きは不可能なレベルに難航します。

共有名義とは、トラブルを未来へ先送りし、次世代を巻き込む「時限爆弾」に他なりません。

知らないと大損する「相続税」と「譲渡所得税」の盲点

不動産の名義をどうするかは、納める税金の金額に直結します。

ここからは、一般的なポータルサイトには書かれていない、あるいは一般の方が誤解しがちな「2つの税金の罠」について、具体的な計算や制度の仕組みを交えて解説します。

売却時に子供を襲う「3,000万円特別控除」の適用除外

実家を売却した際、購入した時の金額(不明な場合は売却額の5%)よりも高く売れると、その利益(譲渡所得)に対して約20%(所得税・住民税)の税金が課されます。
これを免除してくれる最強の特例が「居住用財産の3,000万円の特別控除」です。

しかし、この特例には厳しいルールがあります。それは「現にその家に住んでいる人しか使えない」という点です。

【具体例で見る税金の差】

実家(売却益3,000万円とする)を、同居していた配偶者と、すでに独立して別居している子供2人の計3人で、法定相続分(配偶者1/2、子A1/4、子B1/4)の共有名義にして売却した場合:

●配偶者(持分1/2=1,500万円の利益):自分の住んでいた家なので3,000万円控除が使えます。
利益1,500万円<控除3,000万円となるため、税金は0円です。

●子A(持分1/4=750万円の利益):別居しているため特例は使えません。
750万円×約20% = 約150万円の税金

子B(持分1/4=750万円の利益):別居しているため特例は使えません。
750万円 ×約20% = 約150万円の税金

家族全体で見ると、合計で約300万円もの税金を「共有名義にしただけ」で余分に支払うことになるのです。

【専門家からの裏技提示:「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」の確認】

もし実家が「一人暮らしをしていた親(被相続人)の空き家」になった場合、一定の要件(昭和56年5月31日以前に建築された新耐震基準を満たす一戸建て、解体して更地にして売却するなど)を満たせば、住んでいない子供でも3,000万円控除が使える「空き家の特例」があります。

ただし、これも共有名義にしていると、上限額の計算や手続きが複雑化するため、事前にどの特例が使えるかを一気通貫で見極める必要があります。

目先の非課税に目が眩む「二次相続」の地獄

相続税には「配偶者の税額軽減」という非常に強力な特例があります。配偶者が相続する遺産のうち、1億6,000万円(または法定相続分)までであれば、相続税が一切かからないというものです。

一次相続は「無税」でも、二次相続で子ども世代に牙をむく巨額の相続税

一般の人は「じゃあ、今回の相続(一次相続)では、実家もすべてお母さん(配偶者)の名義にしておけば税金がかからなくて一番お得だね」と考えます。

ここに最大の罠があります。

それが「二次相続(将来、配偶者も亡くなった時の相続)」の視点不足です。
配偶者が実家を100%単独名義で引き継いだ場合、数年後〜十数年後にその配偶者が亡くなったとき、残された子供2人が実家を再度相続することになります(二次相続)。

この時、以下の3つの理由によって、子供たちに牙をむくような巨額の相続税が襲いかかります。

二次相続で相続税が爆発的に跳ね上がる「3つの構造的理由」

1. 配偶者控除が使えない: 二次相続では、税金を大幅に減らしてくれた「配偶者の税額軽減」はもう使えません。

2. 基礎控除額の減少: 相続税の基礎控除は「3,000万円 + 600万円×法定相続人の数$」です。

●一次相続(親が亡くなり、配偶者+子2人):法定相続人3人 ⇒ 基礎控除 4,800万円

●二次相続(配偶者が亡くなり、子2人):法定相続人2人 ⇒ 基礎控除 4,200万円基礎控除の枠が 600万円も減るため、課税対象になりやすくなります。

3. 資産の集約による税率アップ: 配偶者自身がもともと持っていた固有の財産(預貯金など)に、一次相続で引き継いだ実家の価値が上乗せされるため、資産総額が膨れ上がり、相続税の税率そのものが跳ね上がることがあります。

実家をどう名義変更するかは、今回の相続だけでなく、必ず「次の相続で子供たちがいくら税金を払うことになるか」までをセットにした数理シミュレーションを行わなければ、本当の正解は導き出せません。

ポイント

実家をどう名義変更するかは、今回の相続だけでなく、必ず「次の相続で子供たちがいくら税金を払うことになるか」までをセットにした数理シミュレーションを行わなければ、本当の正解は導き出せません。

円満な解決を導く「遺産分割協議」の正しい3ステップ

実家の名義を最適な形にするためには、家族間で「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」を行い、全員の合意を形成する必要があります。

この話し合いを揉めさせず、最も税負担の少ない形で成立させるための実務的な3ステップを解説します。

ステップ1:不動産の「正しい市場価値」を把握する(一括査定の罠)

遺産分割協議が破綻する最大の原因は、家族それぞれが思い込んでいる「実家の価値」がバラバラだからです。

よくある失敗が、ネットの簡易一括査定サイトを使い、業者が契約を取りたいために提示した高めの「チャレンジ価格(希望的観測)」をベースに話し合いを始めてしまうことです。

【よくある破綻パターン】

「ネットの見積もりで5,000万円って出たよ!」と子供が主張。
  ↓
「お母さんがこの家に住み続けるなら、僕たちに2,500万円ずつの現金をちょうだい(代償分割の要求)」
  ↓
現金など用意できず、協議は一発で決裂。

まずは、実際に売り出したときに「確実に3ヶ月以内で現金化できるリアルな市場価値(成約予測価格)」や「路線価」など、複数の指標をプロの手で一本化し、家族全員が納得できる「共通の物差し」を作ることがスタートラインです。

ステップ2:出口戦略に合わせた「遺産分割協議書」の作成

不動産の価値が定まったら、将来の出口(売るのか・住むのか)に合わせた「遺産分割協議書」を作成します。

ここにプロのテクニックを盛り込みます。

① 売却する場合(換価分割)

協議書に「配偶者〇〇を代表者として実家を売却し、諸経費(税金や仲介手数料)を引いた残額を、配偶者1/2、子A1/4、子B1/4の割合で分配する」という旨を明記します。

これがないと、売却代金を子供に分けた際、税務署から「子供への贈与」とみなされ、高額な贈与税を課されるリスクが生じます。

② 住み続ける場合(配偶者居住権の活用)

「実家の所有権は子供が相続する。ただし、配偶者は死ぬまで無償で居住できる権利(配偶者居住権)を相続する」と記載し、登記します。

これにより、実家の将来の所有権を子供に確定させつつ(二次相続対策)、配偶者の住まいを完全に守ることができます。

ステップ3:手続き(点)ではなく、出口(線)を見据えたチームの選定

一般の方は、名義変更は「司法書士」、税金は「税理士」、売却は「不動産会社」へ個別に足を運びます。

しかし、これが大きな落とし穴です。

司法書士: 言われた通りに登記を申請するプロ(将来の売却時の税金特例までは考慮してくれない)

税理士: 税金を申告手続きするプロ(実際の不動産市場の動向や、現場の売れ行きはわからない)

それぞれの専門家がバラバラに正論を主張した結果、パズルのピースが噛み合わず、依頼者が大損をするケースが後を絶ちません。

本当に必要なのは、これらの専門家(士業)のハブとなり、依頼者の意向を汲み取って全体の設計図(プロデュース)を描ける「総合的な窓口」を最初に見つけることです。

全体の「出口(線)」を見据えて動くことで、結果として時間も費用も最小限に抑えることが可能になります。

難しい専門用語の徹底解説

本記事で登場した、相続不動産実務における「最重要キーワード」を分かりやすく解説します。

表面的な法律用語の意味だけでなく、「実務においてどう作用するか」というプロの視点とセットで押さえておきましょう。

共有名義(きょうゆうめいぎ)

【概要】 1つの不動産を、複数の人間で割合(持分)を決めて所有する登記方法。

【実務のリアル】
全員の同意(実印・印鑑証明)がないと、売却、解体、リフォーム、賃貸のすべてが不可能です。1人でも反対者が出た時点で資産が完全にロックされるため、実務上は「もっともトラブルを呼び込みやすい、絶対に避けるべき所有形態」とされています。

単独名義(たんどくめいぎ)

【概要】 不動産の所有者を「1人だけ」に特定して登記する方法。

【実務のリアル】
意思決定が1人で完結するため、将来の売却や管理が圧倒的に スムーズになります。相続においては、誰か1人が実家(現物)を引き継ぐ代わりに、他の相続人に自分の固有財産(現金など)を支払ってバランスを取る「代償分割(だいしょうぶんかつ)」などの手法とセットで行われるのが一般的です。

遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)

【概要】 遺言書がない場合に、法定相続人全員で「誰が・何を・どれだけ引き継ぐか」を話し合って決める手続き。

【実務のリアル】
成立には「相続人全員の署名と実印の押印(および印鑑証明書の添付)」が絶対条件です。1人でも拒否する人がいれば、1ミリも前に進みません。この協議の結果をまとめた公式な書類が「遺産分割協議書」であり、不動産の名義変更(相続登記)の必須書類となります。

換価分割(かんかぶんかつ)

【概要】 不動産などの切り分けられない財産を、一度売却して「現金」に変えた上で、その現金を事前に決めた割合通りに分ける遺産分割の手法。

【実務のリアル】
実家を1円単位まで公平に分配できるため、「将来、誰も住む予定がない実家」を処分する際の王道とされています。ただし、税務上の特例(3,000万円特別控除)を誰に適用させるかによって、誰の名義で売却活動を行うかの戦略(スキーム構築)が極めて重要になります。

配偶者居住権(はいぐうしゃきょじゅうけん)

【概要】 2020年に施行された比較的新しい制度。実家の「所有権(売ったり壊したりできる権利)」と「居住権(タダで住み続ける権利)」を切り離し、配偶者に居住権を与える仕組み。

【実務のリアル】
「自宅の所有権」を子供に譲って将来の二次相続対策をしつつ、高齢の配偶者が「住む場所」を終身にわたって確実に保護できます。また、自宅の評価額を「所有権」と「居住権」に分けることで、配偶者が自宅以外の遺産(預貯金など)をより多く確保するための有効な手段としても活用されます。

二次相続(にじそうぞく)

【概要】 最初の相続(一次相続:例として父親が死亡)の次に発生する、残された配偶者(母親)の死亡に伴う、将来の相続のこと。

【実務のリアル】
一次相続に比べて「相続人の数が減る(基礎控除額が下がる)」「非常に強力な『配偶者の税額軽減(1.6億円の枠)』が使えない」というダブルパンチにより、相続税の負担が爆発的に重くなる傾向があります。一次相続の時点で、この二次相続まで見据えた数理シミュレーションをしておくことが大損を防ぐ絶対条件です。

3,000万円特別控除(居住用財産の特例)

【概要】 自分が住んでいるマイホームを売却した際、売却益(譲渡所得)から最高3,000万円まで差し引くことができる税制上の強力な特例。

【実務のリアル】
この特例が使えないと、売却益に対して20.315%の譲渡所得税が容赦なく課されます。原則として「現にその家に住んでいる人」しか使えないため、すでに別居して自立している子供が実家を共有名義で相続して売却すると、子供の持分にはこの特例が使えず、数百万円単位の税金で大損することになります。

実家相続に関するよくある疑問(Q&A)

実務の現場で、お客様から特によくいただく「実家の名義」に関する4つの疑問に、プロの視点から本音でお答えします。

Q1. 兄が実家に残り、私(妹)と母が別居しています。兄と母の共有名義にするのが一番公平ですか?

A1. 絶対にやめてください。公平どころか、将来の家族を壊す最大の火種になります。
お兄様が今後もその家に住み続けるのであれば、取るべき選択肢はお兄様の「単独名義」の一択です。

名義を共有にせず、以下の方法で「金銭的な公平さ」を担保するのが実務の王道です。

●代償分割(だいしょうぶんかつ): お兄様が実家を引き継ぐ代わりに、実家の価値の数分の一に相当する「自分の現金」を妹様に支払う。

●遺産配分の調整: 不動産はお兄様がもらう代わり、親の預貯金などの「現金資産」を妹様が多めに相続する。

●二次相続での調整: お兄様に現金の用意がない場合、「今回はお兄様の単独名義とするが、将来お母様が亡くなった時(二次相続)の遺産配分で妹様を優先する」という約束を、今回の遺産分割協議書にしっかりと落とし込む。

名義を安易に共有にすることだけは、何があっても避けてください。

Q2. 不動産会社に「とりあえず法定相続分で共有登記しましょう」と言われましたが、信じて大丈夫ですか?

A2. その言葉をそのまま受け入れるのは極めて危険です。今すぐ立ち止まってください。
一般的な不動産会社や、一部の事務的な司法書士は、売却の仲介手数料を急いでいたり、登記手続きを早く終わらせたいために、「とりあえず共有で登記して、売る時にみんなでハンコを押せばいいですよ」と悪気なく勧めがちです。

しかし、これは前述した「3,000万円特別控除(税金の特例)」が別居の子供世代に使えなくなる致命的な減税リスクや、売却活動の途中で誰かの気が変わるリスクを完全に無視した提案です。

1回目の名義変更であっても、最終的な「出口(税金の最適化・家族の真の合意)」から逆算して名義を決めなければ、後から数百万円単位の損をすることになります。

Q3. 「配偶者居住権」を設定すれば、将来子供が実家を勝手に売ることはできなくなりますか?

A3. 形式上の売却は不可能ではありませんが、現実的には「100%不可能」になります。非常に強力な防衛策です。
法律の建前上、子供は「配偶者居住権(お母様がタダで住む権利)がついた状態の所有権」を第三者に売りに出すことは可能です。

しかし、そんな不動産を買い取る奇特な個人や業者は、現実の市場には存在しません。 なぜなら、大金を払って買い取ったところで、中におられるお母様が亡くなるまで、その家を自由に使うことも、リフォームすることも、取り壊すことも一切できないからです。

そのため、配偶者居住権をしっかり登記しておくことは、「子供が勝手に実家を売却する」「実家を担保に無理な借金をしてくる」といった暴挙に対する、極めて強力な実質的抑止力になります。

残されたお母様の老後の住まいと生活を守るための、非常に賢い選択肢です。

Q4. 実家がいくらで売れるか分からない状態ですが、遺産分割協議書は作れますか?

A4. はい、全く問題なく作れます。それこそが「換価分割」の正しい手続きです。
具体的な売却金額が決まっていなくても、あらかじめ以下のような文言を盛り込んだ遺産分割協議書を作成し、家族全員で調印を済ませることができます。

【遺産分割協議書の記載イメージ】
「実家の売却手続きのため、一時的に配偶者〇〇の単独名義とする。その後、不動産を売却処分し、そこから生じた諸経費(税金・仲介手数料等)を差し引いた手残りの現金を、【配偶者50%、子A25%、子B25%】の割合で確定後に分配する」

この方法(換価分割)を取れば、名義を代表者に一本化してスムーズに売却活動を進めつつ、売却が完了した後に、確定した金額ベースで1円単位まで綺麗に分けることが可能になります。

まとめ:点の手続きを「線」でつなぐコーディネートの重要性

実家の相続は、人生で何度も経験することではありません。だからこそ、多くの人が「目先の手続きのやり方(点)」にばかり目を奪われ、「その後の暮らしや税金、家族関係(線)」にまで頭が回らなくなってしまいます。

●法務局へ行って、とりあえず名義を変える(登記)

●税務署へ行って、言われた通りの税金を納める(税務)

●不動産業者に頼んで、実家を売りに出す(売却)

これらを個々のパーツとして別々の会社にバラバラに依頼しているうちは、決してベストな相続は実現しません。

本当に必要なのは、あなたの家族の状況――。

●配偶者の年齢や、これからの健康状態

●子供2人の現在の住まいや、それぞれの経済状況

●実家が「実際にいくらで売れるか」というリアルな市場価値

●将来、配偶者が亡くなった時の「二次相続」の綿密な試算

これらすべての要素を机の上に並べ、「どの名義を選び、どの順番で手続きを進めれば、家族全員が最も損をせず、円満にいられるか」というオーダーメイドのシナリオを描けるコーディネーター(プロデューサー)の存在です。

あなたの家族にとっての「唯一無二の正解」を、共に

弊社では、単なる不動産仲介(売り買い)の枠を超え、提携する経験豊富な税理士・司法書士らとワンチームとなり、お客様の実家相続を入り口から出口まで一気通貫でプロデュースしています。

各士業や不動産業者がバラバラに正論を主張して立ち往生する前に、まずは全体を俯瞰して最適な「設計図」を引きましょう。

「何から手を付けたらいいか、全く分からない」

「共有名義のリスクを、今のうちに確実に回避しておきたい」

「次の相続まで見据えて、一番税金で損をしない方法を知りたい」

そうお悩みの方は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。あなたの家族にとっての「唯一無二の正解」を、私たちがハブとなり、共に導き出します。

【著者プロフィール】

山中 賢一
ワイズエステート販売株式会社 代表取締役
不動産売却専門 兼 廃業・事業再生コンサルタント

埼玉県さいたま市を拠点として、全国の複雑な不動産問題を解決に導く専門家。
大手不動産会社やFC店で「売却不可」と断られた市街化調整区域、権利関係が複雑な訳あり物件、相続トラブル等の売却において圧倒的な実績を持つ。

また、提携法律事務所との強固なネットワークを活かし、廃業・倒産に伴う法人名義の不動産売却や、資金繰りに苦しむ経営者のための資産整理・再生スキーム構築を得意とする。単に「売る」だけでなく、任意売却や債権者交渉、弁護士と連携した法的措置を伴う出口戦略まで、金融・法務・実務の三位一体で顧客の「後悔のない選択」を支援している。

ワイズエステート販売株式会社
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