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会社倒産時の個人保証リスク:自宅や不動産の差押を防ぐための対策とは?

会社の経営が厳しくなり、廃業や倒産を検討する際、経営者として最も気になるのは「個人保証」に関するリスクではないでしょうか。

特に、自宅や不動産が差押えの対象となる可能性は、家族の生活にも大きな影響を及ぼします。

このブログでは、個人保証の仕組みやリスク、差押えの手続き、そしてリスク回避のための具体的な対策について、専門的な視点から詳しく解説します。

経営者の皆様が安心して次の一歩を踏み出せるよう、ぜひ最後までお読みください。

個人保証とは何か?

個人保証とは、会社が金融機関や取引先などから資金調達を行う際に、経営者本人やその家族が「連帯保証人」として契約に加わり、万が一会社が債務を返済できなくなった場合に、その債務を個人の財産で肩代わりしなければならない仕組みを指します。

特に中小企業では、法人の信用力だけでは融資を受けることが難しいケースが多いため、経営者の個人保証が条件として求められることが一般的です。

このため、経営者の個人資産と法人の債務が密接に結びつくリスクが生じます。

社長個人名義の自宅は「保証債務の対象」となる

会社の借入に対して社長が個人保証をしていた場合、会社が返済不能になった時点で、その債務は社長個人に請求されることになります。

つまり、会社の倒産=社長個人の借金の始まりです。

自宅が差押え・競売の対象になる状況

社長が債権者からの請求に応じられず、以下の流れをたどると、自宅が差押え・競売の対象になります。

1. 債権者からの返済請求(督促や内容証明郵便など)

2. 裁判による請求 → 判決 or 支払督促が確定

3. 差押え(登記簿に記載される)

4. 競売申し立て(裁判所から通知が届く)

5. 競売開始 → 入札 → 売却・退去

自宅を守る or 債務整理するための選択肢

① 任意売却を検討
差押前や競売開始前であれば、任意売却によって自宅を市場価格で売却し、債務返済に充てることが可能です。
債権者の同意が必要ですが、競売より高く売れることが多いため、債権者側にもメリットがあります。

② 自己破産を申し立てる
債務が大きすぎて返済が困難な場合、自己破産による免責を目指すことも選択肢です。
ただし、自宅は原則として処分対象(=管財人により売却・換価)となり、住み続けることは難しくなります。

③ 家族に買い取ってもらう(リースバック)
親族が資金的に可能であれば、親族による買い取り&賃貸として住み続ける方法(リースバック)もあります。
ただし、財産隠しとみなされないよう、適正価格での売買と正当な手続きを踏むことが重要です。

倒産=即、自宅が差押えられるのか?

会社が倒産したからといって、すぐに自宅が差押えられるわけではありません。
しかし、以下のような場合には、自宅が差押えや競売の対象となる可能性があります。

・個人保証に基づく支払い請求を受けたにもかかわらず、返済ができない場合

・債権者が裁判を起こし、判決や支払督促によって債務が法的に確定した場合

・確定した債権に基づき、債権者が強制執行を申し立て、自宅に「差押」の登記がされる場合

いったん差押えの登記がされてしまうと、その不動産を自由に売却したり、担保に入れたりすることが原則できなくなります。

このような状況で自宅の売却はできる?

会社の倒産や個人保証によって債務を抱えた場合でも、状況に応じて自宅を売却することは可能です。

ただし、差押えの有無や売却のタイミング、債権者との関係によって、できる・できない、または「どうやって売却するか」が大きく変わります。

差押え前なら、売却の自由度は高い

債権者から支払い請求を受けた段階でも、まだ裁判や差押えに至っていなければ、自宅は通常の売却や任意売却が可能です。

・通常の売却:住宅ローンが残っていなければ、自由に売却し現金化できます。

・任意売却:住宅ローンや債務が残っていても、債権者の同意を得れば、相場に近い価格で売却し、債務返済に充てることができます。

差押え後でも「任意売却」は可能な場合がある

すでに自宅に差押えの登記がされている場合でも、まだ競売開始決定前であれば、債権者の許可を得て任意売却できる可能性があります。

・差押え後に売却するには、すべての債権者の同意が必要です。

・売却代金は、差押えの解除や債務の弁済に使われます。

・債権者にとっても競売より高く売れるため、交渉に応じてくれることが多いです。

個人としての自己破産を申し立ている場合には管財人が判断する

個人としても破産手続き中で管財人が選任されている場合には、自宅などの不動産を以下のように処分するには必ず管財人が判断することとなります。

・自宅を売却する

・第三者(親族含む)に譲渡する

・リースバックなどを利用して住み続けようとする

勝手に売却したり名義変更をしたりすると、「財産隠し」とみなされ、否認・取消の対象になったり、免責不許可となる可能性もあります。

自己破産していない場合でも管財人に確認すべき?

個人としては自己破産の申し立てをしておらず、会社の破産申し立てをしている場合には、法人破産の管財人が選任されています。

このような場合には、個人の資産なので売却は可能ですが、念のため管財人への確認は必要でしょう。
この場合は、以下の関係者に確認・相談することが重要です:

・主要債権者(銀行、信用保証協会など)

・担保権者(住宅ローンを貸している金融機関)

・任意売却に詳しい不動産会社

ただし、近い将来に自己破産を検討している場合は、早めに弁護士を通して対応を進め、管財人が関与するかどうかも含めて確認したほうが安全です。

連帯保証人としての法的責任

連帯保証人となった場合、以下のような極めて重い法的責任を負うことになります

催告の抗弁権が認められない

通常の保証人であれば、「まずは主債務者に請求してください」と債権者に主張することが可能ですが、連帯保証人はこの「催告の抗弁権」が認められません。

つまり、債権者は会社を飛ばして、いきなり連帯保証人に全額の請求をすることができます。

検索の抗弁権が認められない

通常の保証人であれば、「まずは主債務者の財産を差し押さえてからにしてください」と主張できますが、連帯保証人はそのような防御権も持ちません。

債権者は、会社の財務状況を無視して、連帯保証人の財産に対していきなり強制執行を行うことが可能です。

分別の利益が適用されない

複数の保証人がいる場合、通常の保証であれば債務は保証人同士で頭割りされますが、連帯保証では「各保証人が全額の支払い義務を負う」ことになります。

仮に他の保証人が支払不能となった場合でも、残りの連帯保証人が全額を支払わなければならず、責任が重くのしかかります。

経営者が負うリスクの大きさ

これらの法的特性から、連帯保証は単なる「保証人」とは異なり、主債務者とほぼ同等の責任を負う極めて重い制度です。

そのため、会社の倒産や経営悪化によって、経営者自身が自宅などの個人資産を失うリスクがあります。

個人保証の見直しの動き

近年では、中小企業庁をはじめとした行政機関も、経営者の過度な個人保証が企業再建の妨げになっているとして、金融機関に対して個人保証を不要とする融資方針への転換を促す動きが見られます。

特にM&A(企業の売却・買収)の場面では、買い手にとって経営者個人の保証債務が重荷となることもあり、スムーズな事業承継のために「保証債務の解除」や「個人保証の解除交渉」が重要な課題となることもあります。

倒産前に自宅を家族名義に変えれば個人保証のリスクは回避できるのか?

会社が倒産または廃業し、経営者が連帯保証人となっていた場合、その債務の返済義務は会社ではなく経営者個人に及びます。

このとき、自宅などの不動産も差押や仮差押の対象となる可能性が高く、最悪の場合、競売にかけられて失ってしまうこともあります。

こうしたリスクから逃れるために、**倒産前に自宅を家族名義に変更しておけば安全なのでは?**と考える方も少なくありません。

しかし、実際にはそれほど単純な話ではなく、法律上の重大な落とし穴があります。

家族名義への変更は「詐害行為」とみなされるリスク

倒産が差し迫った状況で自宅などの財産を配偶者や子ども名義に移転した場合、その行為が「詐害行為」に該当する可能性があります。

「詐害行為」とは、債権者を害する意図で財産を第三者に移転する行為を指し、民法424条に基づき、債権者がその行為の取り消しを裁判で求めることができる制度です。

詐害行為取消権が認められるとどうなる?
・不動産の名義変更(贈与や売買)が取り消される
・名義は元の経営者に戻される
・その後、差押や競売の対象となる
・名義変更先(家族など)も巻き込まれ、訴訟リスクが生じる

つまり、形式上は家族名義にしても、実質的には無意味どころか、後に裁判沙汰となり、かえってリスクが拡大する結果となることがあります。

安易な名義変更よりも法的整理・早期対応を

経営者が個人保証を負っている場合、倒産や経営悪化が見えた段階で、弁護士や専門家に早めに相談することが重要です。

債務整理や任意売却、個人再生といった合法的な手続きによって、家族の生活や資産を守る方法が検討できます。

また、近年は中小企業の事業再生支援や保証債務整理に精通した専門機関や士業ネットワークも整ってきており、「経営者保証に関するガイドライン」を活用すれば、一定の条件下で個人保証の免除や柔軟な対応が可能となる場合もあります。

自己破産における「免責不許可事由」に該当する可能性

自己破産を申立てた際、債務者が財産を隠匿した事実が明らかになると、免責不許可事由に該当し、借金の免除(免責)が認められない場合があります。

さらに、悪質と判断されれば、「詐欺破産罪」(破産法第265条)に問われ、刑事責任を問われる可能性もあります。

実際の破産手続では、破産管財人が過去数年間の資産移動を厳しく調査します。

特に不動産の名義変更は登記により明確に記録が残るため、隠しきれるものではありません。

名義変更は安易に行わず、専門家への相談を

経営が厳しくなると、「せめて自宅だけでも守りたい」と考えるのは自然な心理ですが、家族名義への変更は最善策ではなく、むしろ重大な法的リスクを伴う手段です。

こうした局面では、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談し、任意売却・債務整理・再生手続などの合法的な手段で資産や生活を守ることが、最も現実的かつ安全な選択肢となります。

家族名義に変更することの効果とその限界

経営者が会社の倒産や債務整理を見越して自宅や不動産を家族名義に変更することで、差押えなどのリスクから逃れられるのではないかと考えることがあります。

確かに、形式的には所有者が変更されるため、一時的に差押を回避できるケースもあります。

しかし、現実にはこの方法には明確な限界があり、かえって不利な結果を招くことも少なくありません。

以下に、名義変更によって生じうる効果と限界を解説します。

実質的な所有者が債務者と判断される場合は差押えの対象に

不動産の名義がたとえ配偶者や子どもなどの家族になっていたとしても、債権者や裁判所は「実質的な所有者」が誰かを重視します。

たとえば…

・購入資金を出したのが債務者本人である

・名義変更後も債務者が実質的に使用・管理している

・税金やローンの支払いを債務者が続けている

といった事情がある場合、たとえ登記名義が家族であっても、裁判所は債務者本人の財産とみなし、差押えを認める可能性があります。
つまり、名義だけ変えても実態が伴わなければ意味がないのです。

贈与税が課税されるリスクがある

無償で不動産の名義を家族に変更した場合、それは税務上「贈与」として取り扱われます。

この場合、贈与税の申告義務と納税義務が生じることになります。

贈与税は高額であり、特に不動産を対象とした場合は数百万円以上になることも珍しくありません。

事前に贈与税の対策を講じていないと、経営難の中で新たな税負担が発生し、状況が一層悪化する恐れがあります。

債権者との信頼関係を損ね、交渉が難航する

不動産の名義を変更する行為は、債権者の立場から見れば「財産隠し」「回収逃れ」と捉えられやすく、債権者との信頼関係を著しく損なう行為となります。

その結果…

・分割返済や債務整理などの交渉が拒否される

・法的措置(仮差押え・強制執行など)を早期に講じられる

・他の債権者への波及リスクが高まる

といった事態が発生し、再建や円滑な資産処分に向けた話し合いが極めて困難になることがあります。

一時しのぎの名義変更では根本解決にならない

家族名義に不動産を移すことで差押えを避けられると思いがちですが、名義変更には重大なリスクと法的限界が存在します。

不適切な資産移転は、差押えの対象になるだけでなく、贈与税の課税や債権者との関係悪化、さらには自己破産時の免責不許可といった深刻な結果につながることもあります。

リスクを最小限に抑え、生活の再建を図るためには、早期に弁護士などの専門家に相談し、適切な手段(任意売却・法人清算・債務整理など)を講じることが最善の策です。

適切な対応策:個人保証や差押えリスクに備えるために

会社の倒産や廃業が現実味を帯びてきた場合、経営者個人の資産にまで影響が及ぶ可能性があります。

特に個人保証をしている場合、自宅などの不動産が差押えの対象となることもあり、早急かつ的確な対応が求められます。

以下に、リスクを最小限に抑えるために取るべき具体的な対応策を解説します。

早期に専門家へ相談する

最も重要なのは、状況が深刻化する前に弁護士や司法書士などの専門家に相談することです。

・倒産前にどのような行為が「詐害行為」と見なされるのか

・差押えを避けつつ適法に資産を処分する方法

・任意売却や債務整理などの合法的手段の選択肢

などについて、法律上のリスクを踏まえた具体的なアドバイスを受けることができます。専門家の介入が早ければ早いほど、取り得る選択肢の幅も広がります。

「経営者保証ガイドライン」の活用

中小企業の経営者が個人保証の解除・緩和を目指す際には、金融庁と全国銀行協会が策定した「経営者保証に関するガイドライン」の活用が有効です。

このガイドラインでは、以下のような要件を満たす場合、個人保証の見直しや解除が認められる可能性があります。

・法人と経営者の資産・経理が明確に分離されている

・財務内容が適切に開示されている

・法人が一定の収益力や資産保全性を維持している

また、万一倒産した場合でも、誠実な清算を行うことで、一定の生活費や住居の確保などの配慮がなされるケースもあります。
再起を目指す経営者にとって、重要な救済制度といえるでしょう。

自己破産や民事再生による法的整理を検討

債務の返済が困難な状況にある場合は、法的手続きによる債務整理も視野に入れる必要があります。

・自己破産:すべての債務を免除してもらう手続き。一定の財産は手放す必要がありますが、借金から完全に解放され、生活の再建が可能となります。

・民事再生:継続的な収入がある場合に、借金を大幅に減額し、分割で返済する制度。自宅などの財産を維持しながら、債務を整理することができます。

いずれの手続きも、専門家の助言のもとで進めることで、不要なトラブルを回避し、最適な方法で生活や事業の再スタートを切ることができます。

リスクを正しく理解し、冷静な対応を

倒産や廃業が避けられない場合でも、冷静に正しい手続きを選択すれば、個人保証のリスクや差押えの危険を最小限に抑えることは可能です。

重要なのは、「思いつきの資産隠し」ではなく、「法的に認められた正当な手段」で対応すること。そして何よりも、できる限り早い段階で専門家に相談することが、最も確実なリスク回避策といえるでしょう。

まとめ

倒産や廃業に伴うリスクを最小限に抑えるためには、早期の対応が鍵となります。専門家への相談を通じて、適切な手続きを踏むことで、個人資産への影響を最小限に抑えることが可能です。

不安や疑問がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。早期の対応と適切な手続きを通じて、安心した生活を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。

経営者の方へ:個人保証のリスクから家族と資産を守る方法、今すぐご相談ください

会社の経営が厳しくなり、廃業や倒産を検討する際、経営者として最も気になるのは「個人保証」に関するリスクではないでしょうか。

特に、自宅や不動産が差押えの対象となる可能性は、家族の生活にも大きな影響を及ぼします。このような状況を未然に防ぐためには、早期の対応が重要です。

専門家への相談を通じて、適切な手続きを踏むことで、個人資産への影響を最小限に抑えることが可能です。

不安や疑問がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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