住宅ローンの滞納や借金問題で「競売」の足音が聞こえてきた際、多くの債務者が一縷の望みを託すのが「無剰余」による取消しです。
「物件の価値より先に付いている抵当権(先順位)の額の方が大きいから、競売にかけても手元にお金が残らないはず。だから中止になるだろう」という予測です。
しかし、その期待を打ち砕く強力な法的手続きが民事執行法63条に基づく「買受申出(かいうけもうしで)」です。
こちらのブログでは、債権者が無理やり競売を押し進めるための「最終手段」の実態と、債務者にとっての致命的なデメリットを詳しく解説します。
1. そもそも「無剰余」とは何か?

競売は、裁判所が不動産を売却し、その代金を債権者に配当する手続きです。
しかし、売却予想価格が低すぎて、手続きにかかった費用や、自分より優先順位の高い債権者への支払いで消えてしまい、「差押債権者(競売を申し立てた人)」に1円も配当が回らない状態を「無剰余」と呼びます。
この場合、裁判所は「やっても意味がない」と判断し、原則として競売手続きを中止(取消し)します。
しかし、売却予想価格が低すぎて、手続きにかかった費用や、自分より優先順位の高い債権者への支払いで消えてしまい、「差押債権者(競売を申し立てた人)」に1円も配当が回らない状態を「無剰余」と呼びます。
この場合、裁判所は「やっても意味がない」と判断し、原則として競売手続きを中止(取消し)します。
2. 債権者の逆襲:民事執行法63条「買受申出」の仕組み

ここで登場するのが、民事執行法63条の救済策です。
たとえ配当がゼロであっても、債権者が「私がこの金額で買い取ることを保証します。
だから手続きを続けてください」と裁判所に申し出ることができます。
たとえ配当がゼロであっても、債権者が「私がこの金額で買い取ることを保証します。
だから手続きを続けてください」と裁判所に申し出ることができます。
買受申出が成立する「2つの条件」
債権者は、裁判所からの通知(無剰余の通知)を受けてから1週間以内に、以下のどちらかを行う必要があります。
1. 剰余が出る価格での買受申出: 優先債権をすべて支払い、かつ手続き費用を賄えるだけの金額で、自ら(または第三者)が買い取ることを申し出る。
2. 剰余が出る保証の提供: もし誰もその金額以上で入札しなかった場合、差額を自分が支払うという保証を提供する。
1. 剰余が出る価格での買受申出: 優先債権をすべて支払い、かつ手続き費用を賄えるだけの金額で、自ら(または第三者)が買い取ることを申し出る。
2. 剰余が出る保証の提供: もし誰もその金額以上で入札しなかった場合、差額を自分が支払うという保証を提供する。
3. 実務の流れと債権者のコスト・シミュレーション

債権者がこの手段を執る場合、相当な覚悟とコストが必要です。
それでも彼らがこのカードを切る理由は「たとえ赤字でも、債務者の資産を強制的に処分させ、回収のケリをつけたい」という強い意志があるからです。
それでも彼らがこのカードを切る理由は「たとえ赤字でも、債務者の資産を強制的に処分させ、回収のケリをつけたい」という強い意志があるからです。
コスト算出のシミュレーション例
例えば、以下の条件のマンションを想定してみましょう。
先順位抵当権(A銀行): 2,000万円
差押債権者(B社): 500万円(2番抵当)
競売の評価額(売却基準価額): 1,800万円
競売手続き費用(予納金等): 約100万円
この場合、1,800万円で売れても先順位のA銀行にすら全額払えず、B社への配当は確実にゼロです。通常は中止になりますが、B社が「買受申出」をすると、以下の支払い義務が生じます。
・買受申出額 2,100万円ー先順位2,000万 + 費用100万
・登録免許税 42万円ー評価額の2%(固定資産税評価額による)
・不動産取得税 約30万円ー取得後に別途発生
・維持管理費 随時ー管理費・修繕積立金の滞納分など
合計:約2,172万円以上
B社は、本来回収したかった500万円を諦めるどころか、自ら2,000万円以上の資金を持ち出して物件を引き取ることになります。
先順位抵当権(A銀行): 2,000万円
差押債権者(B社): 500万円(2番抵当)
競売の評価額(売却基準価額): 1,800万円
競売手続き費用(予納金等): 約100万円
この場合、1,800万円で売れても先順位のA銀行にすら全額払えず、B社への配当は確実にゼロです。通常は中止になりますが、B社が「買受申出」をすると、以下の支払い義務が生じます。
・買受申出額 2,100万円ー先順位2,000万 + 費用100万
・登録免許税 42万円ー評価額の2%(固定資産税評価額による)
・不動産取得税 約30万円ー取得後に別途発生
・維持管理費 随時ー管理費・修繕積立金の滞納分など
合計:約2,172万円以上
B社は、本来回収したかった500万円を諦めるどころか、自ら2,000万円以上の資金を持ち出して物件を引き取ることになります。
4. なぜ債権者はそこまでするのか?(債務者の誤算)

「そんな大金を払ってまで買い取るはずがない」と高を括るのは危険です。以下のようなケースでは、債権者は迷わず「買受申出」を行います。
◆再販価値の見込みがある: リノベーションして転売すれば、持ち出し分を回収できると判断した場合。
◆保証会社やサービサー(債権回収会社): 彼らは不動産扱いのプロです。競売で安く叩かれるより、自ら取得して一般市場で売却した方が最終的な損失が少ないと考えます。
◆債務者へのプレッシャー: 「逃げ得」を許さないという姿勢を示すため、見せしめ的に実行されることもあります。
◆再販価値の見込みがある: リノベーションして転売すれば、持ち出し分を回収できると判断した場合。
◆保証会社やサービサー(債権回収会社): 彼らは不動産扱いのプロです。競売で安く叩かれるより、自ら取得して一般市場で売却した方が最終的な損失が少ないと考えます。
◆債務者へのプレッシャー: 「逃げ得」を許さないという姿勢を示すため、見せしめ的に実行されることもあります。
5. 債務者にとっての「致命的な不利」とは
民事執行法63条が発動されると、債務者には以下の不利益が襲いかかります。
1. 強制退去までの時間が早まる: 通常の入札者が現れるのを待つ必要がないため、手続きが淡々と進み、引越し準備の時間が削られます。
2. 任意売却のチャンスが消滅する: 債権者が自ら買い取る意思を固めてしまうと、市場での任意売却に応じるメリットが彼らになくなるため、交渉が完全に遮断されます。
3. 残債務が減らない: 債権者が高値で買い取ってくれたとしても、その代金は先順位の支払いに消えるだけです。あなたへの借金(後順位債権者の分)はそのまま残り、家を失った後も厳しい督促が続くことになります。
1. 強制退去までの時間が早まる: 通常の入札者が現れるのを待つ必要がないため、手続きが淡々と進み、引越し準備の時間が削られます。
2. 任意売却のチャンスが消滅する: 債権者が自ら買い取る意思を固めてしまうと、市場での任意売却に応じるメリットが彼らになくなるため、交渉が完全に遮断されます。
3. 残債務が減らない: 債権者が高値で買い取ってくれたとしても、その代金は先順位の支払いに消えるだけです。あなたへの借金(後順位債権者の分)はそのまま残り、家を失った後も厳しい督促が続くことになります。
6. まとめ:対抗策はあるのか?

「無剰余だから大丈夫」というネットの断片的な知識を過信するのは、専門家から見れば非常に危険な状態です。民事執行法63条による買受申出は、債権者が持つ「リーサルウェポン(最終兵器)」です。
この通知が裁判所から届きそう、あるいは既に届いているという状況であれば、もはや個人で太刀打ちできる段階ではありません。
・競売の取下げ交渉
・自己破産を含めた法的整理の検討
・リースバックや親族間売買による住み続けの模索
これらを同時並行で進める必要があります。
手遅れになる前に、競売実務と法律に精通した専門家へ相談してください。あなたの資産を守る、あるいは再出発するための道は、まだ残されているかもしれません。
この通知が裁判所から届きそう、あるいは既に届いているという状況であれば、もはや個人で太刀打ちできる段階ではありません。
・競売の取下げ交渉
・自己破産を含めた法的整理の検討
・リースバックや親族間売買による住み続けの模索
これらを同時並行で進める必要があります。
手遅れになる前に、競売実務と法律に精通した専門家へ相談してください。あなたの資産を守る、あるいは再出発するための道は、まだ残されているかもしれません。
「競売中止」の期待が裏切られる前に。執行法のプロが教える、あなたの家を守るラストチャンス。

裁判所から「無剰余の通知」が届いた、あるいは競売の足音が聞こえて不安な日々をお過ごしではありませんか?
民事執行法63条による「買受申出」が行われると、交渉の余地は一気に狭まります。
弊社では、競売実務に精通した専門家が、任意売却や法的整理を含めた「あなたにとっての最善手」を共に考えます。
手遅れになる前に、まずは匿名でも構いません。現状をお聞かせください。
【著者プロフィール】
山中 賢一
ワイズエステート販売株式会社 代表取締役
不動産売却専門 兼 廃業・事業再生コンサルタント
埼玉県さいたま市を拠点として、全国の複雑な不動産問題を解決に導く専門家。
大手不動産会社やFC店で「売却不可」と断られた市街化調整区域、権利関係が複雑な訳あり物件、相続トラブル等の売却において圧倒的な実績を持つ。
また、提携法律事務所との強固なネットワークを活かし、廃業・倒産に伴う法人名義の不動産売却や、資金繰りに苦しむ経営者のための資産整理・再生スキーム構築を得意とする。単に「売る」だけでなく、任意売却や債権者交渉、弁護士と連携した法的措置を伴う出口戦略まで、金融・法務・実務の三位一体で顧客の「後悔のない選択」を支援している。
ワイズエステート販売株式会社
「他社で断られた案件」「銀行交渉が必要な売却」など、出口の見えない不動産のご相談を承ります。法務・金融の視点から、あなたの資産を守る「最適解」を提案します。
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山中 賢一
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また、提携法律事務所との強固なネットワークを活かし、廃業・倒産に伴う法人名義の不動産売却や、資金繰りに苦しむ経営者のための資産整理・再生スキーム構築を得意とする。単に「売る」だけでなく、任意売却や債権者交渉、弁護士と連携した法的措置を伴う出口戦略まで、金融・法務・実務の三位一体で顧客の「後悔のない選択」を支援している。
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