
不動産をめぐるトラブルの中でも、「仮差押(かりさしおさえ)」は一般の方には馴染みが薄いものの、いざ巻き込まれると大きな影響を及ぼす法的手続きです。
不動産の売却を進めようとした矢先に登記簿に「仮差押」の文字を見つけて驚いた、というご相談は少なくありません。
こちらのブログでは、実際にあった仮差押トラブルの事例をもとに、どのように問題を把握し、どんな方法で解決できるのかを解説します。
不動産を所有するすべての方にとって有益な内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
仮差押とは?

仮差押とは、金銭債権の回収を目的として、裁判所の決定により不動産などの財産を仮に凍結する手続きです。
債権者(お金を貸した側)が、「このままでは債務者(お金を借りた側)が財産を処分してしまい、回収ができなくなる」と判断したときに申し立てます。
あくまで「仮」の差押であるため、実際の差押とは異なり、確定的に財産を差し押さえるものではありません。
ただし、不動産登記簿に仮差押えの記録が載るため、売却や担保設定に大きな支障が出ます。
債権者(お金を貸した側)が、「このままでは債務者(お金を借りた側)が財産を処分してしまい、回収ができなくなる」と判断したときに申し立てます。
あくまで「仮」の差押であるため、実際の差押とは異なり、確定的に財産を差し押さえるものではありません。
ただし、不動産登記簿に仮差押えの記録が載るため、売却や担保設定に大きな支障が出ます。
事例①:知らぬ間に親族名義の不動産に仮差押が…

Aさんは、数年前に父親から相続した空き家をそろそろ売却しようと、不動産会社に査定を依頼しました。ところが、登記簿謄本を確認してみると、そこには「仮差押」の記載が…。
実は父親が生前、親族から借金をしていたようで、その債権者が仮差押を登記していたことが後に判明しました。
しかし、すでにその債権者とは連絡が取れない状況に…。
実は父親が生前、親族から借金をしていたようで、その債権者が仮差押を登記していたことが後に判明しました。
しかし、すでにその債権者とは連絡が取れない状況に…。
相談内容
Aさんは、数年前に父親から相続した空き家をそろそろ売却しようと、不動産会社に査定を依頼しました。ところが、登記簿謄本を確認してみると、そこには「仮差押」の記載が…。
実は父親が生前、親族から借金をしていたようで、その債権者が仮差押えを登記していたことが後に判明しました。しかし、すでにその債権者とは連絡が取れない状況に…。
実は父親が生前、親族から借金をしていたようで、その債権者が仮差押えを登記していたことが後に判明しました。しかし、すでにその債権者とは連絡が取れない状況に…。
問題点の整理
1. 仮差押えの債権者と連絡が取れない
●債権者の所在が不明、または連絡がつかない状況。
●任意売却や差押の抹消の交渉すらできず、足止め状態。
2. 債務の内容が不明
●何の債務に基づいて仮差押えされたのかが不明確。
●債権額や契約書類などの詳細資料が手元にない。
3. 不動産売却が進められない
●仮差押が登記簿に残っているため、売買契約を結べない。
●買主や仲介会社も手続きに不安を抱え、取引が進行不能。
●債権者の所在が不明、または連絡がつかない状況。
●任意売却や差押の抹消の交渉すらできず、足止め状態。
2. 債務の内容が不明
●何の債務に基づいて仮差押えされたのかが不明確。
●債権額や契約書類などの詳細資料が手元にない。
3. 不動産売却が進められない
●仮差押が登記簿に残っているため、売買契約を結べない。
●買主や仲介会社も手続きに不安を抱え、取引が進行不能。
解決方法・対策
① 債権者の現在の所在・現存性の調査
●債権者個人が死亡している場合、相続人に連絡をとる必要があります。
●法人の場合、登記簿から解散・清算手続き状況を調査します。
●弁護士や司法書士に依頼し、戸籍・登記簿・商業登記・職権照会などで現在の状況を把握。
② 公示送達の手続きで意思表示を届ける
●債権者に通知が届かない場合でも、「公示送達」を使えば、通知が届いたものとして扱われます。
●債権者が不在のままでも、一定の手続き(解除請求・訴訟など)を進められる可能性があります。
③ 「仮差押の取下げ」を求める訴訟(消滅確認・債務不存在確認)
●仮差押から本訴(支払請求訴訟)が提起されていなければ、「仮差押は無効である」として登記抹消を請求する訴訟も検討できます。
●「債務が存在しないことの確認訴訟」を通じて、債権の不存在を証明し、登記抹消の判決を得るルートもあります。
④ 仮差押後の「本訴の有無」を確認
●仮差押後、本訴を提起していなければ、仮差押の効力は一定期間後に失われます(通常は30日以内に提起されなければ仮差押は無効)。
●事件番号から、裁判所で本訴の有無を照会できる場合があります。
●本訴がなければ、「仮差押の効力失効→登記抹消請求」のルートも有効です。
⑤ 裁判所の許可を得た供託による債権者不在対応
●売買代金相当額を供託し、「供託によって債務を履行した」として、仮差押の目的を失わせる方法。
●これは主に仮差押が本訴判決に基づく仮執行になった後などのケースに限られますが、供託は強力な手段です。
●債権者個人が死亡している場合、相続人に連絡をとる必要があります。
●法人の場合、登記簿から解散・清算手続き状況を調査します。
●弁護士や司法書士に依頼し、戸籍・登記簿・商業登記・職権照会などで現在の状況を把握。
② 公示送達の手続きで意思表示を届ける
●債権者に通知が届かない場合でも、「公示送達」を使えば、通知が届いたものとして扱われます。
●債権者が不在のままでも、一定の手続き(解除請求・訴訟など)を進められる可能性があります。
③ 「仮差押の取下げ」を求める訴訟(消滅確認・債務不存在確認)
●仮差押から本訴(支払請求訴訟)が提起されていなければ、「仮差押は無効である」として登記抹消を請求する訴訟も検討できます。
●「債務が存在しないことの確認訴訟」を通じて、債権の不存在を証明し、登記抹消の判決を得るルートもあります。
④ 仮差押後の「本訴の有無」を確認
●仮差押後、本訴を提起していなければ、仮差押の効力は一定期間後に失われます(通常は30日以内に提起されなければ仮差押は無効)。
●事件番号から、裁判所で本訴の有無を照会できる場合があります。
●本訴がなければ、「仮差押の効力失効→登記抹消請求」のルートも有効です。
⑤ 裁判所の許可を得た供託による債権者不在対応
●売買代金相当額を供託し、「供託によって債務を履行した」として、仮差押の目的を失わせる方法。
●これは主に仮差押が本訴判決に基づく仮執行になった後などのケースに限られますが、供託は強力な手段です。
仮差押がされている=絶対に売れない」ではない
●売主・買主が合意し、引渡しと同時に仮差押解除を前提とした条件付き売買契約(停止条件付きなど)を結ぶことも可能。
●また、買主の了解を得たうえで、売買代金の一部を「仮差押の解除費用」として留保し、抹消手続き完了後に残代金を支払う形もあります。
●また、買主の了解を得たうえで、売買代金の一部を「仮差押の解除費用」として留保し、抹消手続き完了後に残代金を支払う形もあります。
事例②:売買契約直前で仮差押が付いたケース

Bさんは自身の持つマンションを売却するため、買主と売買契約を結ぶ直前でした。
ところが、契約の前日に登記簿を確認したところ、新たに「仮差押」が登記されており、売主であるBさんもその内容に驚愕。
調べてみると、過去に未払いの業者費用に関してトラブルとなっており、その業者が裁判所に仮差押を申し立てていたことが判明しました。
ところが、契約の前日に登記簿を確認したところ、新たに「仮差押」が登記されており、売主であるBさんもその内容に驚愕。
調べてみると、過去に未払いの業者費用に関してトラブルとなっており、その業者が裁判所に仮差押を申し立てていたことが判明しました。
問題点は複数…
この状況にはいくつもの問題が含まれていました。
●契約締結が目前だったため、買主から「この物件は大丈夫なのか?」と疑念を持たれてしまい、信頼関係に影響
●仮差押が登記されたままでは、不動産の所有権移転登記ができず契約の履行そのものが不可能
●売主であるBさんには、すぐに弁済や和解金を支払えるような資金的余裕がなかった
いずれも、スムーズな売却にとっては致命的な障害です。
●契約締結が目前だったため、買主から「この物件は大丈夫なのか?」と疑念を持たれてしまい、信頼関係に影響
●仮差押が登記されたままでは、不動産の所有権移転登記ができず契約の履行そのものが不可能
●売主であるBさんには、すぐに弁済や和解金を支払えるような資金的余裕がなかった
いずれも、スムーズな売却にとっては致命的な障害です。
解決方法
このケースで学べるのは、仮差押が判明した時点で、早急かつ誠実に行動することの重要性です。
放置してしまえば買主に不信感を与え、最悪の場合は契約破談や損害賠償のリスクにもつながります。
一方で、司法書士や弁護士と連携し、債権者と交渉→和解→登記抹消の流れを適切に踏めば、円満解決も十分に可能です。
不動産売却を目前に控えている方は、「登記簿の最新チェック」を忘れず、想定外のトラブルにも備えておきましょう。
放置してしまえば買主に不信感を与え、最悪の場合は契約破談や損害賠償のリスクにもつながります。
一方で、司法書士や弁護士と連携し、債権者と交渉→和解→登記抹消の流れを適切に踏めば、円満解決も十分に可能です。
不動産売却を目前に控えている方は、「登記簿の最新チェック」を忘れず、想定外のトラブルにも備えておきましょう。
迅速な交渉と誠意ある対応がカギに
Bさんはすぐに司法書士と弁護士に相談。登記簿に記載された仮差押えの原因を調べたうえで、債権者と直接交渉することになりました。
債権者と連絡がつかないケースも多い中、幸いにも今回は債権者本人と連絡が取れ、以下のステップで事態の収拾を図りました。
債権者と連絡がつかないケースも多い中、幸いにも今回は債権者本人と連絡が取れ、以下のステップで事態の収拾を図りました。
具体的な解決ステップ
① 和解交渉の開始 Bさんは、当時の未払い金に対し「分割で支払う」という和解案を提示。債権者も不動産の売却予定であることを理解し、交渉は前向きに進展しました。
② 買主への説明と契約日の延期 仮差押えの事実と、現在解決に向けて動いていることを誠意をもって買主に説明。買主も状況を理解し、契約締結を「2週間延期」することで合意してくれました。
③ 仮差押の取下げ同意書を取得 無事に和解が成立し、債権者から「仮差押え取下げの同意書」を受領。これをもとに、司法書士が裁判所および法務局に登記抹消の手続きを実施。
④ 登記抹消完了 → 契約へ 登記簿から仮差押えが正式に抹消されたことで、安心して売買契約を締結。わずか2週間の遅れで、無事に取引は完了しました。
② 買主への説明と契約日の延期 仮差押えの事実と、現在解決に向けて動いていることを誠意をもって買主に説明。買主も状況を理解し、契約締結を「2週間延期」することで合意してくれました。
③ 仮差押の取下げ同意書を取得 無事に和解が成立し、債権者から「仮差押え取下げの同意書」を受領。これをもとに、司法書士が裁判所および法務局に登記抹消の手続きを実施。
④ 登記抹消完了 → 契約へ 登記簿から仮差押えが正式に抹消されたことで、安心して売買契約を締結。わずか2週間の遅れで、無事に取引は完了しました。
仮差押が不動産に及ぼす深刻な影響とは?

仮差押は、債権者が「将来的に本訴(本裁判)で勝訴し、債務者の財産を差し押さえるための準備措置」として行う法的手続きですが、不動産に登記されると以下のような実務上の重大な支障を引き起こします。
登記簿に記載 → 買主の不安・不信を招く
登記簿に「仮差押」が記載されることで、不動産の法的トラブルが明らかになります。
買主にとっては「何かトラブルのある物件では?」という印象を与え、取引自体を見送られる可能性も高まります。
買主にとっては「何かトラブルのある物件では?」という印象を与え、取引自体を見送られる可能性も高まります。
所有者の意思に関係なく勝手に登記される
仮差押は裁判所の命令によって行われるため、所有者の同意や通知がなくても登記されてしまう点が非常に厄介です。
気づいたときにはすでに登記されていた…というケースも珍しくありません。
気づいたときにはすでに登記されていた…というケースも珍しくありません。
金融機関からの融資が一切通らなくなる
金融機関は、不動産に仮差押えなどのトラブルがあると、担保価値にリスクがあると判断し、住宅ローンやアパートローンなどの融資を一切認めてくれません。
結果として、買主の融資が下りず、契約破談になるリスクが極めて高くなります。
結果として、買主の融資が下りず、契約破談になるリスクが極めて高くなります。
売買・贈与・担保提供などの取引が事実上ストップ
仮差押が登記されている限り、原則として所有権移転登記(売買や贈与)、抵当権設定(担保提供)などがすべてストップします。
事実上、何の取引も進められなくなります。
事実上、何の取引も進められなくなります。
仮差押は「仮」の処分だが、登記上は強力な制約
仮差押は、法律上あくまで「本訴前の仮の手続き」であり、債務が確定したわけではありません。
しかし、登記上は非常に強い効力を持つため、「そのままにしておけば何とかなる」と考えて放置するのは絶対にNGです。
しかし、登記上は非常に強い効力を持つため、「そのままにしておけば何とかなる」と考えて放置するのは絶対にNGです。
仮差押を解除する3つの方法

仮差押が登記されてしまうと、不動産の売却や担保提供などの取引が事実上できなくなります。
このような状況を打開するためには、以下のいずれかの方法で仮差押の解除(取り下げや執行停止)を図る必要があります。
このような状況を打開するためには、以下のいずれかの方法で仮差押の解除(取り下げや執行停止)を図る必要があります。
債務の支払い・和解による解除
最も現実的かつ迅速な方法は、債務の全額弁済または債権者との和解成立によって、仮差押の取り下げに同意してもらうことです。
●分割払いで和解することも可能
●同意書があれば司法書士を通じて登記抹消が可能
●債権者との交渉には弁護士の関与が安心
※信頼関係のある第三者(司法書士や不動産業者)を通すと、スムーズに進みやすくなります。
●分割払いで和解することも可能
●同意書があれば司法書士を通じて登記抹消が可能
●債権者との交渉には弁護士の関与が安心
※信頼関係のある第三者(司法書士や不動産業者)を通すと、スムーズに進みやすくなります。
裁判所への保証金の供託(執行停止)
債務の支払いがすぐにできない場合や、和解交渉が難航している場合には、裁判所に所定の保証金を供託することで、仮差押えの効力を一時的に停止(執行停止)させることが可能です。
●保証金は債権額と裁判所の判断により決定
●供託後、仮差押登記の効力は止まるが、完全に消えるわけではない
●あくまで“時間を稼ぐ”ための手段
この方法は、売買契約を急ぐ場合の応急処置として使われることがあります。
●保証金は債権額と裁判所の判断により決定
●供託後、仮差押登記の効力は止まるが、完全に消えるわけではない
●あくまで“時間を稼ぐ”ための手段
この方法は、売買契約を急ぐ場合の応急処置として使われることがあります。
裁判による法的解決
債務そのものに争いがある場合(例:時効、債務不存在など)、裁判で仮差押の不当性を主張する方法もあります。
●時間と費用はかかるが、法的に決着がつけられる
●判決で勝訴すれば、登記の抹消手続きが可能
●弁護士の専門的なサポートが必須
この方法は、特に「納得できない仮差押」「無効な債権主張」への反論として有効です。
●時間と費用はかかるが、法的に決着がつけられる
●判決で勝訴すれば、登記の抹消手続きが可能
●弁護士の専門的なサポートが必須
この方法は、特に「納得できない仮差押」「無効な債権主張」への反論として有効です。
まとめ:仮差押の「放置」が一番危険!

仮差押は「仮の処分」にすぎない──そう考えて軽視してしまうのは非常に危険です。
実際には、不動産の売却・贈与・担保提供・相続手続きなどに深刻な制限がかかります。
不動産の所有者であれば、定期的に登記簿を確認する習慣を持ち、
もし仮差押えの記載を発見したら、すぐに専門家と連携して対処することが重要です。
✅ 放置すれば売却チャンスを逃す
✅ 放置すれば買主や金融機関に不信感を与える
✅ 放置すれば法的手続きにより余計な費用や時間がかかる
問題の先送りはトラブルの長期化を招きます。早めの行動が解決への第一歩です。
実際には、不動産の売却・贈与・担保提供・相続手続きなどに深刻な制限がかかります。
不動産の所有者であれば、定期的に登記簿を確認する習慣を持ち、
もし仮差押えの記載を発見したら、すぐに専門家と連携して対処することが重要です。
✅ 放置すれば売却チャンスを逃す
✅ 放置すれば買主や金融機関に不信感を与える
✅ 放置すれば法的手続きにより余計な費用や時間がかかる
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弊社では、以下のようなお悩みをお持ちの方からのご相談を随時受け付けております。
●不動産に仮差押えが登記されているが、解除の方法がわからない
●債権者と連絡が取れず、売却が進められない
●時効や債務不存在を主張できるか確認したい
●和解の方法や供託金による執行停止の流れを知りたい
●買主にどう説明すればよいか不安
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●債権者と連絡が取れず、売却が進められない
●時効や債務不存在を主張できるか確認したい
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