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市街化調整区域でも家は建てられる?『既存宅地』と『線引き前宅地』の違いと不動産売却の注意点

市街化調整区域でも家は建てられる?『既存宅地』と『線引き前宅地』の違いと不動産売却の注意点

都市計画法では、土地を効率的かつ秩序ある形で開発するために、全国の市町村が「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分されています。

「市街化調整区域」と聞くと、「家は建てられない」「開発できない」「価値が低い」といったイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際には一定の条件を満たせば、市街化調整区域でも住宅を建てたり土地を売却したりすることは可能です。

その鍵を握るのが「既存宅地」や「線引き前宅地」といった市街化調整区域の地目が宅地の不動産です。

こちらのブログでは、これらの違いや不動産売却時の注意点を、分かりやすく専門的に解説します。

市街化調整区域とは?

まずは基本から確認しておきましょう。

市街化調整区域とは、「市街化を抑制する地域」のことです。

つまり、都市の無秩序な拡大を防ぐために、原則として開発行為(建物の建築や造成など)が制限されているエリアです。

建築物を建てるには、原則として【開発許可】が必要であり、誰でも自由に家を建てられるわけではありません。

『既存宅地』とは?

「既存宅地」とは、市街化調整区域内に位置しながらも、過去に住宅が建っていた、あるいはそれに準じた開発が行われていた土地を指します。

たとえば、昭和45年の市街化調整区域に指定された以前から住宅が建っていた土地や、古くから人が居住しており自治体が事実上の宅地として取り扱っていた土地などが該当します。

これらの土地については、都市計画法上の開発許可が不要または簡略化される場合があり、自治体によっては比較的スムーズに建築許可が下りることもあります。

ただし、既存宅地の取り扱いは自治体ごとに異なるため、実際に建築が可能かどうかは、該当地の市町村に確認することが必要です。

既存宅地で家を建てられる条件(例)

市街化調整区域内であっても、「既存宅地」として認められることで住宅の建築が可能になる場合があります。ただし、その条件は自治体ごとに異なります。以下は一般的な要件の一例です

・既存宅地であることの証明ができること
 昭和45年以前に住宅が建っていたこと、または宅地として継続的に利用されていたことを示す資料(航空写真、課税証明書、登記簿謄本など)が必要です。

・建て替えや再建築であること
 新たに宅地として開発するのではなく、すでに建物が存在していた土地に対する建て替えであることが前提になることが多いです。

・周辺環境との整合性があること
 周囲に住宅が連なっている、インフラ(道路・上下水道など)が整備されているなど、単独で突出した開発でないこと。

・一定の接道義務を満たしていること
 幅員4m以上の道路に一定距離以上接していることが原則です(建築基準法上の「接道義務」)。

・災害リスクが低いエリアであること
 土砂災害警戒区域や浸水想定区域など、安全性に問題がある地域では建築許可が下りない可能性があります。

・農地・山林等ではなく、宅地であること
 土地の現況が農地や山林である場合には、農地転用や開発許可が別途必要になる場合があります。

・自己用住宅であること
 分譲や賃貸などの収益目的ではなく、自分や家族が住むための住宅であることが求められるケースがあります。

これらの条件はあくまで一例であり、自治体ごとに運用方針が異なります。実際に建築を検討する際は、必ず該当する市区町村の都市計画課や建築指導課に事前相談することが重要です。

注意点|既存宅地でも家を建てられないことがある?事前に自治体で確認を!

市街化調整区域内の既存宅地であっても、必ず家を建てられるとは限りません。

というのも、一部の市町村では既存宅地制度そのものを廃止しているケースがあり、または建築許可の要件を厳格化している自治体もあるからです。

仮に、建築行為ができたとしても属人生の制限がかけられる可能性もあるので注意が必要です。

そのため、たとえ過去に住宅が建っていた土地であっても、現在の制度上では建築不可とされる可能性もあるのです。

✅ 既存宅地の建築可否は「市町村の最新の運用状況」を確認しよう

「この土地は既存宅地だから建てられるはず」と思い込まず、必ず該当する市町村役場の都市計画課や建築指導課に確認を行いましょう。

現地調査や接道状況、過去の使用履歴など、具体的な条件の確認が必要です。建築計画の前段階として、専門家(建築士や土地家屋調査士、不動産業者)に相談するのも有効です。

線引き前宅地とは?市街化調整区域でも建築できる可能性のある土地

「線引き前宅地」とは、市街化区域と市街化調整区域に区分される(=線引き)前から、すでに住宅が建っていたり、宅地として利用されていた土地のことを指します。

この用語は法律上の制度名ではなく、実務上の慣用的な呼び方です。

線引き後に市街化調整区域に編入された土地であっても、こうした過去の宅地利用の実績が認められることで、開発許可や建築許可が得られる可能性があります。

実際の判断は自治体ごとに異なりますが、「線引き前宅地」であることは、市街化調整区域内での建築において重要な要素の一つとなっています。

✅ 線引き前宅地の具体例|建築可能性があるケースとは?

線引き前宅地とは、都市計画法に基づく「市街化区域」と「市街化調整区域」の線引き(昭和45年頃)以前から、すでに宅地として利用されていた土地のことです。以下のようなケースが、線引き前宅地として扱われる可能性があります:

・昭和45年(1970年)より前から住宅地として利用されていた土地
 → 市街化調整区域に指定される前から、すでに人が住んでいた実績がある場合

・線引き以前に合法的な建物(住宅・店舗など)が建築されていた土地
 → 建築確認を受けて適法に建物が存在していた履歴があることがポイントです

・分筆や相続などで分かれた土地であっても、元の宅地からの継続性が認められる土地
 → たとえば親の所有地を相続で分割した場合などでも、建築可能性が残ることがあります

このような土地は、市街化調整区域内であっても建築許可が下りる可能性がある貴重な不動産です。ただし、実際に建築できるかどうかは、市町村の判断基準や条例により異なります。

✅ 線引き前宅地でも家は建てられる?|カギは「宅地利用の継続性」

たとえ線引き前宅地であっても、市街化調整区域に指定されている場合には、すべての土地で家が建てられるわけではありません。

ポイントとなるのが、自治体がその土地に対して「宅地利用の継続性」を認めているかどうかです。

宅地利用の継続性が認められる条件とは?

市街化調整区域内であっても、過去に合法な建物が建っていた記録(登記簿や航空写真など)があり、長期間にわたって宅地として利用されていた履歴が確認できる場合や、周辺の土地利用と整合性があり(例:周囲にも住宅が建っている)、現在も宅地としての形状や利用実態が維持されている(更地であっても宅地として課税されている等)場合には、自治体が「宅地として継続的に利用されてきた」と判断し、市街化調整区域内でも建築許可が下りる可能性があります。

ただし、こうした判断基準は市町村ごとに異なるため、個別に自治体へ確認することが重要です。

線引き前宅地と既存宅地の違いとは?|市街化調整区域における建築可否の判断ポイント

市街化調整区域内の土地であっても、一定の条件を満たせば家を建てられる可能性があります。特に判断材料としてよく取り上げられるのが、「既存宅地」と「線引き前宅地」の2つの区分です。

「既存宅地」とは、市街化調整区域に指定された後も宅地として継続的に利用されてきた土地のことであり、登記簿・航空写真・固定資産税の課税記録などをもとに、過去の宅地利用履歴が確認されることで、建築許可が下りる可能性があります。

一方の「線引き前宅地」は、昭和45年頃に市街化区域と市街化調整区域が区分される前から、すでに宅地として利用されていた土地を指します。法的な制度名ではありませんが、線引き前からの住宅利用や建物の存在実績があれば、それが建築許可の重要な判断材料になることがあります。

ただし、いずれの場合も建築の可否は市町村の判断に委ねられており、実際の運用基準は自治体によって異なるため、個別の確認が不可欠です。

線引き前宅地と既存宅地の違いを簡単に

✅ 既存宅地とは
・市街化調整区域に指定された後も宅地として継続利用されてきた土地

・登記簿、航空写真、固定資産税の課税記録などから過去の宅地利用履歴が確認できる場合に該当

・利用履歴が明らかであれば、建築許可が下りる可能性がある

✅ 線引き前宅地とは
・昭和45年頃の区域区分(線引き)以前から宅地として利用されていた土地

・法的な制度名ではなく一般的な呼称

・線引き前に住宅が建っていた、または宅地として使わ・れていた実績があれば、建築許可の判断材料となることがある

ポイント:建築許可のカギは「宅地利用の継続性」

どちらの土地であっても、自治体が宅地としての継続性や正当性を認めるかどうかが建築可否の分かれ目です。

過去の使用実態、建物の存在、有効な資料の有無などが審査対象となるため、事前に十分な確認と準備が必要です。

市街化調整区域の既存宅地・線引き前宅地を売却する際の注意点|トラブル回避のために知っておくべきこと

市街化調整区域にある既存宅地や線引き前宅地を売却する際には、建築の可否や契約内容などについて十分な注意が必要です。

以下に、不動産売却時に起こりやすいトラブルとその回避策をまとめました。

「家を建てられる土地」=「高く売れる土地」ではない

たとえ土地が既存宅地や線引き前宅地の条件を満たしていたとしても、買主がすぐに家を建てられるとは限りません。
建築には以下のような条件クリアが求められます:

・建築許可が下りるかどうか(宅地利用の継続性)

・接道義務(原則:幅4m以上の道路に2m以上接していること)

・上下水道・電気・ガスなどのインフラ整備状況

これらの条件を満たしていないと、買主が建築を断念し、売却価格が下がる要因にもなります。

「契約不適合責任」に注意|建築可否は売主の責任ではないことを明記

「建築できると聞いていたのに、役所に確認したらダメだった」という買主からのクレームや損害賠償請求を防ぐために、以下の対応が重要です:

・建築可否は買主自身で自治体に確認してもらう

・売買契約書に「建築の可否については保証しない旨」を明文化する

これにより、契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)によるトラブル回避につながります。

境界があいまいな場合は「確定測量」や「境界確認」を実施

市街化調整区域内の土地は、長期間放置されていたケースも多く、隣地との境界が不明確なことがあります。
そのまま売却すると「境界トラブル」に発展する可能性があるため、

・境界杭の有無を確認

・必要に応じて土地家屋調査士による確定測量や境界立会いを実施

しておくと安心です。

必ず自治体の役所で「建築の可否」「制度の運用状況」を確認

既存宅地制度や線引き前宅地制度は、市町村によって運用状況が大きく異なります。

・既に制度が廃止または厳格化されている自治体

・個別判断で宅地利用の継続性が認められないケース

もありますので、売却前・購入前には、必ず該当地の都市計画課や建築指導課に確認しましょう。
※必要であれば「建築相談記録」や「建築可否証明書」などの発行を受けることも検討しましょう。

まとめ|市街化調整区域の既存宅地・線引き前宅地で家を建てる・売却する際のポイント

結論として、「既存宅地」と「線引き前宅地」はどちらも市街化調整区域内であっても建築が可能となる“例外的な土地”であり、過去の宅地利用実績がカギになりますが、その判断は最終的に各市町村の基準によって異なるため、建築可否を確認するには必ず自治体への個別相談が必要です。

特に「既存宅地」はかつて制度的な認定が行われていたため、比較的建築許可の取得が明確だった一方で、「線引き前宅地」は制度名がないため判断が曖昧になるケースも多く、より慎重な調査・確認が求められます。したがって、どちらの場合も「資料の収集」と「行政への相談」が建築実現の重要なステップとなります。

市街化調整区域内の土地でも、「既存宅地」や「線引き前宅地」に該当すれば、建築許可の取得が可能なケースがあります。

しかし、建築可否や建築条件は自治体ごとに異なるため、必ず役所で最新の運用状況を確認することが重要です。

また、売却をスムーズに進めるためには、境界確定・接道要件のクリア・上下水道や電気などのインフラ整備状況など、物理的な条件の確認も欠かせません。

土地の売買や建築を検討する際は、不動産業者や建築士、行政書士などの専門家と連携し、自治体と十分に協議を重ねることが成功のポイントです。

これにより、市街化調整区域内の土地活用や売却でのトラブルを未然に防ぎ、安心して進められます。

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