住宅ローンの返済ができなくなったときに任意売却をすれば自己破産を避けられるのか、そんな相談をよく受けますが、正直なところ任意売却というのは自己破産を防ぐ魔法の手段ではなく、あくまで競売を避けるための一つの方法に過ぎません。
例えばローン残高が2500万円あって任意売却で2000万円でしか売れなければ差額の500万円+遅延損害金はそのまま無担保債権として返済義務は残るわけで、銀行からは分割で払ってくださいと言われるのが現実です。
つまり任意売却をしたからといって借金がゼロになるわけではなく、その後も返済を続けられるかどうかで自己破産を選ぶかどうかが決まってくるのです。
よく「自己破産だけは避けたい」とおっしゃる方がいますが、私は必ずしもそう思いません。
確かに自己破産をすると一定の期間はクレジットカードが作れないし新しいローンも組めない、信用情報にも載るから不便はありますが、任意売却しなければならない状況になっている時点で個人信用情報に載っていますし、この事は競売になっても同様ですからね。
自己破産をしたからって会社を辞めさせられることもなければ戸籍や住民票に記録が残るわけでもなく、近所に知られることもほとんどありません。
むしろ無理をして返せない借金を抱え続けるほうが心も家庭も壊してしまう危険が大きいと感じます。
自己破産というのは人生の終わりではなくリセットであり、ゼロからやり直すための制度だと考えた方がいいでしょう。
「面倒くさいから競売でいいや」と諦めてしまう人もいますが、それは危険です。競売にかけられると相場より安く売られ、借金が余計に残り、引っ越し費用も出ないので退去のときにトラブルになることも多いのです。
諦めるという選択はそのまま自己破産を覚悟することに近く、もし少しでもやり直したい気持ちがあるなら任意売却を検討した方が良いと思います。
結局のところ、住宅ローンが払えなくなったときは任意売却を試みて、その結果として残債が返せるかどうかを見極め、返せそうにないなら自己破産も選択肢に入れるという流れになります。
借金の額が大きすぎて返済の見込みが立たない、他にも消費者金融やカードローンがある、そんな状況であれば自己破産は現実的な選択肢であり、逆に数百万円程度の残債なら生活の見直しで分割返済が可能になる場合もあります。
不動産屋の立場としては競売よりも任意売却を選んで少しでも高く売り、借金を減らしておいた方が後の生活が楽になるのでその方を勧めますが、任意売却をしたからといってすべてが解決するわけではなく、残った借金の処理は法律や生活再建の問題になるため弁護士と並行して相談するのが現実的です。
結局、大切なのは任意売却か自己破産かという二択の話ではなく、自分と家族の生活を守るためにどの道を選ぶかという視点であり、任意売却はあくまで通過点であって自己破産を避けるかどうかを見極めるためのステップなのです。
それさえも面倒なら、最初から自己破産を選択して競売で処分してもらった方が良いですよ。
そうでなければ「諦める」のではなく「選ぶ」意識を持つことが大事であり、もし今まさに悩んでいる人がいるなら、任意売却も自己破産も手段の一つとして冷静に検討し、自分にとって最も前向きな道を選んでほしい、それが不動産屋としての独り言であり本音です。
