今日は「老後の資金のためにリバースモーゲージやリースバックは有効なのか?」という、ちょっとシビアだけど避けて通れないテーマについてお話ししましょうかね。
定年退職後、年金だけじゃ心もとない、でも生活費や医療費、それに将来の介護のことも考えたら「老後にはある程度まとまった資金が必要だ」というのは誰もが思うことですね。
数年前には、老後に現金2000万円は無くてはならないみたいな事が話題になりましたけど、昨今の物価高騰では2000万円どころではなく4000万円が必要かもしれませんね。
でも、その資金は現役時から働いて貯蓄したり退職金を残しておくような事をしなければ、そんな大金は貯められませんよね。
テレビやネットで、このようなニュースが出回ると「どうにかして現金を貯めなきゃ」なんて考えが先行してしまい間違った方向で現金を手元に残そうなんて考えてしまう人もいるのではないでしょうか。
財産や資産というと不動産がありますが、その大事な資産を売却して現金を手元にと考えた場合に、それじゃ何処に住むの?っていうことになりますよね。
そんな状況の時に甘い蜜のような臭いを漂わせたスキームを勧められたら?
その代表的な方法としてよく出てくるのが「リバースモーゲージ」と「リースバック」。この2つ、言葉は耳にしても仕組みをきちんと理解している方は案外少ないんですよ。
まずリバースモーゲージからいきましょう。これは自宅を担保に金融機関から融資を受けて、毎月の生活費として少しずつ借りる仕組みです。
これはカタカナ・横文字で格好よく聞こえるかもしれませんが、ただ単に不動産を担保に借金しましょうということですから注意してくださいね。
リバースモーゲージは、「老後に不動産を担保に現金を借りて、亡くなった後に家を売って返済する」というスタイルです。
月々の返済は利息だけで、元本は亡くなった後に一括で精算されるのが一般的です。
つまり、自分が生きている間は比較的楽にお金を手にできる仕組みです。ただし、ここには落とし穴があって、土地の評価額によって借りられる金額が制限されるし、金利が上がれば毎月の利息負担もじわじわ増える。
さらに「相続のときに親族が家を引き継ぎたい」と思っても、金融機関に売却されるのが前提だから相続する権利を持っている親族からしてみたら、すんなりと賛成はしませんからスムーズにはいきません。
一方でリースバックというのは、自宅を売却してまとまった資金を手にしつつ、そのまま賃貸契約を結んで住み続けるという方法です。
リースバックの仕組みとしてはシンプルで、不動産を売却してお金が一度に手に入るので急な出費にも対応しやすく大変効果を感じるスキームかもしれませんね。
例えば医療費やリフォーム費用、あるいは老後の生活資金を一気に確保できるのは大きな魅力ですね。
ただし、当然ながら「売った後は借家人」なので、毎月家賃を払い続けなければいけません。
家賃の設定次第では「結局家計を圧迫してしまう」ということもあるし、将来オーナーが変わったときに「退去してください」と言われるリスクもゼロではない。
じゃあ、この2つの仕組みは老後資金対策として本当に有効なのか?正直に言うと「人による」としか言えないのが現実なんですよね。
資産が自宅しかなく、年金では生活が厳しいという方には、一定の金銭的余裕をもたらす手段になります。だけど「子どもに家を残したい」「先々の住まいの安定を最優先にしたい」と考える方にとっては、必ずしも最良の答えではありません。
特にリバースモーゲージは「長生きリスク」がつきまといます。
長く生きれば借入限度額を超えてしまい、その時点で融資が止まることもある。
リースバックについても「家賃をずっと払えるか?」という現実的な問題があります。
結局のところ、老後に借金をしたり、大事な資産を売却して尚且つ長期間の家賃の支払いをしてまで多額の資金を用意することが「本当に自分の幸せにつながるのか?」を考えることが一番大事なんです。
リバースモーゲージもリースバックも「今ある資産をどう活かすか」という選択肢のひとつに過ぎません。
老後の安心をお金で買うのか、それとも「子や孫に資産を残すこと」に重きを置くのか、そこは人其々です。
だから私としては、「制度を鵜呑みにする前に、自分や家族にとって何が本当に必要なのかを一度腰を据えて考えること」をお勧めしたいですね。
結果的には、不動産を担保に借金をする事と不動産を売却して住み続けて家賃を支払い続けるという債務が発生するという事を忘れてはいけないし、その事を客観的に見る事ができる家族がどのように判断するか難しいところですよね。
まあ、不動産屋の立場から言わせてもらえば、「自宅をどう扱うか」は人生の最後の大仕事という事で、不動産を売るにしても借りるにしても、そこに暮らす人の生き方や価値観が色濃く反映されるんです。
リバースモーゲージもリースバックも万能薬ではないけれど、「知っているか知らないか」で大きな差が出るのは間違いありません。
もし自分のケースでどうなるのか気になるようでしたら、ご相談はお気軽にどうぞ。
それでは、おしまいです。
