不動産の売却相談を受けていると、よく耳にする言葉があります。
「うちの会社なら、なんでも買い取りますよ!」。
これ、聞くと「じゃあ、うちの農地もすぐ売れるんだ!」と思いがちですが、実はそう簡単ではありません。
私にご相談頂く方の多くは、市街化調整区域の農地の売却で何社(時には何十社)に断られたので、「不動産会社の農地は無理でしょ」という方々ですが、弊社のホームページに辿り着くまでは相当な時間を労力を費やして何とかしようと思っている方ですので農地の買取は難しいことを認識しています。
特に市街化調整区域にある農地の場合は、少し事情が複雑です。
今回は、農地の売却事情について、ざっくばらんにお話ししてみたいと思います。
まず前提として、「市街化調整区域」とは、都市計画法で定められた区域で、原則として新しい建物を建てることが制限されている土地のことです。
この区域の土地は、むやみに宅地に変えられないため、不動産会社が「なんでも買い取ります」と言っても、買えるかどうかは都市計画法の立地基準次第という事が殆どです。
特に農地は、法律による制限や縛りがいくつもあります。
じゃあ、農地は買えるのか?
結論から言うと、「宅地に変更できる農地であれば、買い取れる可能性あり」です。
都市計画法第34条第11号の物件、つまり特定の条件を満たした農地は、宅地への転用が認められる場合があります。
この場合、不動産会社は買い取ったあとに宅地として活用できるので買取りの道が開けます。
実務上も、宅地化の可能性があるかどうかが、農地売却の最大のポイントになります。
ただし、農地のなかには親族要件がついているものもあります。これは簡単に言うと「親族が農業を続けることを前提に所有される農地」で、売買契約自体は可能ですが、不動産会社が譲受人(買主)であると農地転用ができません。
つまり、買手がついたとしても、農地を宅地に変更できないため、残金決済して所有権移転ができないという事ですね。
せっかく買いたい人がいても、手続き上の制約で売れない…というジレンマですね。
では、「農地として買い取れるのか?」という話です。農地としての購入は、農業法人や農業従事者として認められた場合のみ可能です。
つまり、一般的な不動産会社が農地そのものを買い取ることはほとんどないと考えてよいでしょう。
要するに、農地売却の大前提は「宅地にできるかどうか」です。
もちろん、これは絶対ではなく、9割程度の目安ですが、都市計画法第34条の立地基準次第で、農地転用が可能かどうかが決まります。
そして、地目が「青地」の場合は、さらに厳しくなります。農業法人でない限り、除外手続きや農地転用ができないため、所有権移転登記自体ができず、実務上買うことはほぼ不可能です。
私も現場で何度も経験していますが、「なんでも買い取ります」という言葉に飛びつくと、結局売れずに時間だけが過ぎる…ということは少なくありません。
特に市街化調整区域の農地や青地は、法律や手続き上の制約が多く、安易に期待するのは危ないです。
結論として、農地売却のポイントはシンプルです。
「宅地にできるか」「農地転用できるか」「青地かどうか」の3つ。これさえ押さえておけば、売却の可否や不動産会社の対応が見えてきます。
市街化調整区域の農地は制約が多くややこしいですが、しっかり情報を整理すれば、安全に、そして納得感をもって売却できます。
不動産会社の「なんでも買い取ります」という言葉をそのまま信じるのではなく、法律や手続きの制約を理解したうえで、現実的な選択をすること。
それが、市街化調整区域の農地売却で失敗しないコツだと思います。
今回は、こんな感じでおしまいです。
