こんにちは
11月も下旬が近くなってきたので寒くなってきましたね。
巷ではインフルエンザが流行っているようですので体調管理には気を付けましょう。
さて、表題についてお話しますね。
最近、「引き渡し前の転売禁止へ。分譲マンション、業界団体が方針」というニュースが流れてきましてね。
正直なところ“不動産屋として来るべき時が来たな”と感じたわけです。
ここ数年のマンション市場は、住宅というより投資・投機を目的とした金融商品みたいになってしまって、特に中国やアジア圏の短期投資家が、契約して数ヶ月後にさっと利益を乗せて売り抜ける。
そんな動きが普通に見られましたから、本当に住みたい人が価格で勝てないという状況が多かったんです。すなわち、買いたくても買えない状況になっていったという事です。
不動産価格がどんどん押し上げられ、「抽選です」と言われても結局は投資家の資金力で席が埋まる。こういう市場の歪みを業界団体がようやく是正しようとしている、そんな印象を受けました。
業界団体が動いたと言っても、恐らくですが国や自治体が法規制や条例で厳しく制限する前に
「不動産業界では努力してますので、どうにか法規制は勘弁してください」
みたいなポーズ的な事でしょ、という捻くれた捉え方もできますよね。
ただ、この短期転売禁止が市場全体にどの程度影響するかというと、一気に冷えるわけではないんですが、確実に“ジワジワ効いてくる”だろうなと感じています。
このような動きがあると
「こんな努力義務みたいなもんじゃ効果はない」
「抜け道はいくらでもあるから関係ない」
こんな事を考える人もいるでしょうけど、このような小さな動きが重ねり始めて大きな動きになるという事を忘れてはいけません。
「影響」はジワジワ来るんですよ、こんな時って。
知らない人も多くいると思いますけど、都心の新築でも億ションが売れ残ったり、駅から遠めの物件は抽選どころか普通に選べるようになったりと、都心から離れた物件は数カ月も売れ残ったりしていますので、数年前と比べれば市場の熱が少しずつ落ちてきている。
そこに今回の規制ですから、短期投機マネーが入りにくくなり、さらに落ち着く方向に向かっていくの可能性はあります。
ただ、この政策は価格を大きく下げるためというより、明らかに“加熱しすぎを抑えるための安全装置”のようなものです。
平成の不動産バブルが崩壊して時は当時の大蔵省が不動産に対する融資を規制した総量規制を契機に加熱した不動産市場を一気に冷めてしまったのと似ていますね。因みに、この総量規制は1990年3月から1991年12月までの短期間でしたのが、その影響は計り知れないくらい大きく不動産価格を下落してしまいました。
今の日本は不動産バブルを壊すと経済全体にダメージが出ますから、基本的に政府も業界も「急落」だけは避けたい。
本音ではみんなそこを一番恐れています。
だから今回の対策は“市場を落ち着かせるためのソフトランディング”に近いんです。
外国人投資家について言えば、これは徐々に減り始めるでしょうね。
短期で回転させて利益を稼ぐタイプの投資家からすれば、引き渡し前の転売禁止は旨味が減るので、日本のマンションは“投資対象としての魅力が相対的に低下”します。
ただし、円安で割安と見て長期で資産を置きたい層は一定数残るので、完全に消えるわけではありません。
「短期勢は減るが、本気勢は残る」というイメージです。
さて、この規制がバブル崩壊の引き金になるかと言われれば、前途したように、これは“きっかけのひとつになる可能性はある”という程度で、単体で崩壊を起こすほどの力はありません。
ただ、バブル経済というのはたいてい複数の要因が重なって起きるもので、今すでに起きているのは、一次取得者の購買力限界、立地が微妙な物件の値引き増加、富裕層の買い控え、賃料上昇の頭打ち、金利上昇リスクといった“天井感”の積み重ねなんですね。
そこに今回のような制度変更が加わると、「ああ、いよいよ潮目が変わるのかもしれない」と市場関係者が感じやすくなる。
最後に条例や法律のような法規制が整った時は、特定の人にとっては厳しい状況になるでしょうね。
その意味では、市況の転換点を象徴するニュースと言っていいでしょう。
ただ、不動産屋としての本音を言うと、この転売禁止自体は市場にとって悪い話ではありません。
無理に高値をつかまされる買い手が限定されるし、転売目的だけの人が減れば本当に必要としている人が買いやすくなるし、デベロッパー側も投機マネー前提の価格設計がしにくくなる。
市場の健全化という意味ではプラスです。
不動産というのは“過熱しすぎると下がりやすく、安定すると上がりやすい”という不思議な性質がありまして、今回の規制も長期的には“持続的な価格の安定”を支える方向に働く可能性があります。
とはいえ、私個人の現場感覚としては、もうここ数年のような爆発的な上昇相場は終盤だろうと感じています。
不動産価格は十分上がりきり、金利は今後「下がるより上がる」可能性が高く、外国人マネーもピークアウトしつつある。
供給も少しずつ増え始めている。
そして今回の“転売禁止”。
これらを総合すると、いよいよ市場が上昇期から“静かな調整期”に入りつつあるように見えるわけです。もちろん、いきなり崩れるようなことはないでしょうけれど、今の状況は明らかに2020〜2024年とは違う空気感が漂っている。
これからの市場は、「過熱から調整へ」という自然な流れをたどるはずで、今回のニュースはその転換を象徴するイベントのひとつと言っていいでしょう。
不動産市場はいつも、こういう小さな制度の変化をきっかけに方向性を変えていくもの。
さて、この先どうなるか──現場としては慎重に見ていく時期に入ったと感じています。
