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不動産屋さんの独り言:執行官とは?家賃滞納から立ち退き・強制執行に至るまで

不動産屋さんの独り言:執行官とは?家賃滞納から立ち退き・強制執行に至るまで

まずは、どうしても触れずにはいられないことから書かせてください。
杉並で起きた、執行官と保証会社社員が命を落とした痛ましい事件。
職務の最前線に立ち、日々現場で人と向き合っていたお二人が犠牲になったことに、
同じ不動産業界に身を置く者として、深い悲しみとやりきれなさを感じています。

お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈りするとともに、
ご家族、ご関係者の皆さま、そして心身に大きな影響を受けられた方々に、
心からお見舞い申し上げます。

この出来事を「特別な事件」「他人事」として片付けてはいけない。
そう思いながら、今日はこの話を書いています。

「執行官が来たら終わりだ」
任意売却や競売の物件を取り扱っていると、「もう執行官が来るしかないですよね」「ここまで来たら終わりですよね」そんな言葉をよく聞きます。

でも正直に言うと、執行官が来るときというのは、すでに話がかなり進んだ“終盤”です。
突然、そこに至ったわけではありません。

最初は「今月だけは厳しい」という状態から始まりますが、「来月には何とかなるかもしれない」と考え、結果的には良い方向にはいかずに気づけば誰にも相談できないまま時間だけが過ぎていく。

その間にも、支払いの相談、条件の見直し、任意での退去や引っ越しを前提にした話し合いなど、いくつかの選択肢は存在していたと思います。

ただ、追い込まれてくると、人はその選択肢が見えなくなります。そのような状況になると、殆どの人は分からないのではなく、考える余裕がなくなるのです。

そして裁判所からの書類が届き、執行官という言葉が現実になって初めて「ここまで来てしまった」と感じる。

不動産屋として思うのは、執行官が来る状況は突然の出来事ではなく、誰にも相談できなかった時間の積み重ねだということです。

執行官って、どんな存在なのか

執行官と聞くと、どうしても怖い印象を持たれがちです。
ただ、実際の姿は少し違います。

執行官は裁判所に所属する公務員で裁判所の判断を現場で実行する役割を担っています。
誰かを裁く立場でも、感情をぶつける存在でもありません。

だからこそ、淡々と現場で仕事を進めていくという立場です。その淡々さが、逆に現実の重さを際立たせることもあります。

家賃滞納=即立ち退き、ではない現実

世間では「家賃を払えなかったら、すぐ追い出される」そんなイメージが強いように感じます。

でも現場では、そんなケースはほとんどありません。

1回、2回の滞納。電話、手紙、保証会社からの連絡があり「どうすれば払えますか?」「分割なら可能ですか?」というような歩み寄りの姿勢からコミュケーションを取って問題を解決しようとするように進めていきます。

その為、話し合いの時間は、意外なほど長く用意されています。

それでも連絡が取れなくなったり、支払いの目処が立たないような状況になってから、ようやく法的手続きに進めていきます

債権者にとっても法的措置は好まざる方法であって、最後の手段が裁判⇒判決⇒最後に強制執行という事です。

執行官が現れる頃には、もう何度も立ち止まれるポイントは過ぎているのです。

追い込まれた人の心境や状況

あの事件について、「制度が冷たい」「対応が厳しすぎる」という声があるかもしれません。

でも、私が強く感じたのは別のことです。
それは、追い込まれた人ほど、周囲が見えなくなるという現実です。

選択肢がなくなったのではなく、選択肢が見えなくなってしまう。
相談できる相手がいないと思い込み、「もう後がない」と感じた瞬間に人は極端な考えに傾いてしまう。

あの事件は、制度の是非だけを語る話ではなく、追い込まれた人の心が、どれほど危うい状態になるのかを私たちに突きつけていたように思います。

だからこそ必要なのは、誰かを責めることではなく、追い込まれる前に相談できる場所があることを知ってもらいたいです。

そうした“途中で立ち止まれる仕組み”が、もっと知られていれば、違う結果もあったのではないか。

そんなことを、考えさせられた出来事です。

競売で追い込まれた人の心境の変化

私自身、競売や差押の現場で、追い込まれた人たちを何十人も見てきました。

最初は、どこか現実感がありません。「まだ何とかなる」「今回は運が悪かっただけ」そうやって、自分に言い聞かせているように見えます。なかには現実逃避をしてしまう人もいて、自宅に届く督促・催告等の書面を一切開かないし見ない人も珍しくありませんん。

ところが、裁判所から書類が届き、現況調査が入り執行官の名前が現実味を帯びてくる頃、そのような人の表情や態度は静かに変わっていきます。

怒りでもなく、悲しみでもない。諦めと混乱が入り混じった、言葉では表しにくい空気です。

そのような状況見るたびに思うのです。もし、もっと早く誰かに相談できていたら、違う選択肢があったのではないか、と。

不動産屋としての本音

「家賃を払えなくなること」「住宅ローンの返済が苦しくなること」それ自体は、決して珍しい話ではありません。
でも、当事者からしてみると「自分以外にこんな状況になっている人はいない」「なんで自分だけが・・・」みたいな心境になっている事は珍しくありません。

そして、本当に怖いのは、誰にも言えず、連絡を断ち、1人で抱え込んでしまうことです。

追い込まれた人ほど、助けを求める声は小さくなる。
これは現場にいると、はっきりと感じます。

だからこそ、不動産屋として思うのです。本当の問題は「お金」だけではなく声を出せなくなってしまうことなのだと思っています。

最後に

杉並で起きた悲劇を、二度と繰り返さないためにも。

執行官は「敵」ではありません。
ただ、執行官が来る状況は、誰にとっても避けたい結末です。

追い込まれてしまう前に、せめて誰かに話してほしい。
家族でも、知人でも、専門家でもいい。

不動産屋として、それだけは、強く伝えたいと思います。

それでは、こんな感じでおしまいです。



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