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中古マンション価格下落は「調整」なのか?暴落の入口なのか|売出価格と成約価格の乖離から考える

中古マンション価格下落は「調整」なのか?暴落の入口なのか|売出価格と成約価格の乖離から考える

はじめに

「東京都の中古マンション価格が28カ月ぶりに下落した」——。 2026年9月、不動産市場に一つのニュースが報じられました。

民間の不動産市場調査の発表によると、2026年8月の東京都中古マンション価格は70㎡換算で1億1,274万円となり、前月比で0.2%の下落を記録しました。

エリア別に見ると、東京23区全体で0.4%下落、特に人気の高い都心6区でも0.7%の下落となっています。

しかし、このニュースを単に「東京都の中古マンション価格がわずか0.2%だけ下がった」という表面的な数値だけで捉えるのは、非常に危険です。

現在の市場において本当に目を向けるべき重要なシグナルは、以下の2点です。

  1. 売主が「売りたい」と希望する価格(売出価格)と、買主が「実際に買った」価格(成約価格)の間に大きなズレが生じていること。
  2. 市場に売り出される物件(在庫)がどんどん増えている一方で、実際に売買が成立する件数(成約件数)が減少していること。

マンション価格の0.2%という価格変動だけを見れば、ほんの小さな変化に過ぎないように思えます。

しかし、長らく右肩上がりの価格上昇を続けてきた東京の中古マンション市場の「内部」では、今、決して見過ごせない変化が現れ始めています。

結論|現在は「暴落」と断定できないが、単なる「価格調整」とも言い切れない

結論から申し上げます。
2026年9月現在のデータを見る限り、東京都の中古マンション市場が「すでに暴落している」と断定することはできません。

しかし、同時に「これまで上がりすぎた価格が一時的に落ち着いただけの『健全な調整』だから全く問題ない」と楽観視するのも時期尚早だと考えています。

なぜなら、現在の東京都の不動産市場では、以下のようなネガティブな変化が複数同時に見られるようになっているからです。

◎ 中古マンション全体の平均価格の下落

◎ 市場に滞留する「売れ残り物件(在庫)」の急増

◎ 実際に売買が成立した「成約件数」の減少

◎ 売出価格と成約価格の大きな乖離(ギャップ)

◎ 売り出し後にやむを得ず「値下げ」をする物件の増加

公益財団法人東日本不動産流通機構のデータ等を参照すると、2026年8月の東京都中古マンション市場では成約件数が前年同月比で18.7%も減少したにもかかわらず、在庫件数は21.3%も増加しています。

これは「売りたい人は増えて商品が市場に溢れているのに、実際に買ってくれる人は減っている」という状態です。これこそが、現在の不動産市場を読み解くうえで最も警戒すべきポイントです。

現時点では「暴落が始まった」と断定する段階ではありません。しかし、「『暴落の入口』となる可能性を含め、今後の推移を慎重に確認する局面に入った」と考えています。

売出価格と成約価格はなぜ違うのか

中古マンションの相場を正しく理解するために、最初に絶対に知っておくべき大原則があります。それは、「売出価格」と「成約価格」は全くの別物であるということです。

例えば、あるマンションの売主が「自分の部屋は条件が良いから、1億円で売りたい」と考え、不動産ポータルサイトに1億円で掲載したとします。
しかし、数ヶ月経っても以下のような状況が続きました。

◎ サイトからの問い合わせがほとんど来ない。

◎ 部屋を見に来る人(内見者)が現れない。

◎ 内見があっても、具体的な購入申込みが入らない。

そこで売主は焦り、価格を9,500万円に引き下げました。それでも売れず、最終的に価格交渉が入り、8,800万円でようやく買主と合意し、契約が成立したとします。

このケースにおいて、

◎ 1億円 = 売主が希望していた単なる「売出価格(=広告上の価格)」

◎ 8,800万円 = 実際に市場で取引が成立した「成約価格(=その時点で実際に成立した取引価格)」となります。←これが相場価格という事なります。

不動産市場の動向を分析する際、ネット上に溢れている「高額な売出価格」だけを見て「相場が上がっている」と錯覚してはいけません。常に「実際にいくらで売れたのか」という実態を見ることが不可欠です。

売出価格と成約価格の乖離が示す市場の変化

近年、首都圏の中古マンション市場では、この「売主の希望(売出価格)」と「買主の現実(成約価格)」の差がどんどん開いています。

民間調査会社のデータから2025年度の動向を振り返ると、その傾向がはっきりと読み取れます。

◎ 2025年度上期:平均売出価格5,407万円に対し、平均成約価格は5,075万円。(乖離率:約6.14%)

◎ 2025年度下期:平均売出価格5,640万円に対し、平均成約価格は5,289万円。(乖離率:約6.22%)

このデータが意味しているのは、「売主が強気な価格で市場に出しているものの、買主はその価格では高すぎると判断し、結果として大きく値引きされないと売れない状態になっている」ということです。

高い価格で広告が出ていることと、その価格で売れることは全く別の話です。
現代の買主は、スマートフォン1つで周辺の過去の取引事例や競合物件の価格を徹底的に比較検討できます。

相場から少しでも浮いた「割高な物件」はすぐに見抜かれ、買主が納得しなければ決して購入には至りません。

不動産市場の温度感を知るためには、表面的な「売出価格」ではなく、生きた取引の結果である「成約価格」の推移を追うことが最も重要です。

不動産の価格より注目したい「在庫増加」と「成約件数減少」

今回の東京都中古マンション市場の変化において、私が価格の微減以上に強い危機感を持っているのが「需給バランスの崩れ」です。

2026年8月の東京都のデータを見てみましょう。

◎ 成約件数:1,562件(前年同月比 ▲18.7%)

◎ 在庫件数:28,082件(前年同月比 +21.3%)

これをスーパーマーケットに例えるなら、「棚には毎日どんどん新しい商品が並べられて溢れかえっている(在庫増)のに、レジに持っていくお客さんは2割も減っている(成約減)」という、市場の需給バランスが悪化している状態です。

不動産市場において、価格がいきなり急落することは稀です。

不動産市場では、価格が大きく下落する前に、成約件数の減少や在庫増加、売却期間の長期化などが先行して現れることがあります。

市場によって順番は異なりますが、在庫増加、成約件数減少、売却期間長期化、価格改定の増加が重なってくると、需給の悪化を疑う材料になります。今の東京市場は、まさにこのサインを出しつつあると言えるでしょう。

不動産価格の「調整」と「暴落」は何が違うのか

不動産市場において「価格が何%下がったら暴落と呼ぶ」という明確な定義はありません。

不動産の下落率という「数字の大きさ」だけで判断するべきではないと考えています。重要なのは「市場が正常に機能しているかどうか」です。

【価格調整(健全な修正)とは】

価格が多少下がったとしても、以下のような状態を保てているなら、それは過去の過熱しすぎた価格上昇を適正な水準に戻す「調整」と言えます。

◎ 毎月の成約件数が大きく落ち込まず、安定している。

◎ 売れ残り(在庫)が急増していない。

◎ 適正価格になれば、買いたいと待っている層(実需)が確実に存在する。

◎ 売り出してから売れるまでの期間が極端に延びていない。

【より深刻な市場悪化を示すサインとは】

一方で、以下の悪条件が「同時進行」で連鎖し始めた場合は、単なる調整では済まされません。

◎ 価格の下落 + 在庫の急増 + 成約件数の急減 + 大幅な値下げの多発 + 売却期間の長期化

これらが重なると市場は完全に冷え込みます。さらに、これに「金融機関が住宅ローン審査を厳しくする」「金利が急上昇する」といった外的要因が加わると、買主が物理的に買えなくなり、価格下落と取引減少が負のスパイラルを引き起こします。

暴落を見極めるには、価格だけでなく「市場の機能不全が起きていないか」を多角的に観察することが必要なのです。

暴落の入口を見るために注目したい7つの数字

今後、中古マンション市場の行方を見極めるために、ニュースの表面的な価格だけでなく、以下の「7つの指標」を総合的にチェックすることを強くおすすめします。

1. 成約件数:実際に市場でどれだけの数の売買が成立しているか。

2. 在庫件数:売り出されたものの、買い手がつかずに残っている物件がどれだけあるか。

3. 成約価格:買主が実際に支払うことに納得した、実勢の取引価格。

4. 売出価格と成約価格の乖離:売主の希望価格と実際の取引価格にどれだけのズレが生じているか。この差が広がりすぎていると危険信号。

5. 値下げ率:最初に設定した売出価格から、最終的に何%下げて成約したか。

6. 売却期間:売り出してから売却完了までにどれだけ日数がかかっているか。

7. 住宅ローン金利:金利が上がれば、買主の毎月の返済負担が増えるため、購入できる価格帯が変わります。

これら7つの数字をセットで分析することで「表面的な価格はまだ高い水準を保っているように見えるが、内実は買い手がおらず市場が弱り切っている」という危険な状態を早期に発見できるようになります。

資産価値が高くても「出口」があるとは限らない

ここからは、これから不動産を購入しようと考えている方に向けた警鐘です。
新築・中古を問わず、マンションを購入する際に「この物件は資産価値が高いので安心です」という営業トークをよく耳にすると思います。

しかし、「資産価値が高いこと」と「将来、スムーズに売却して手元に現金が残ること」はイコールではありません。

例えば、1億円でフルローンを組んでマンションを購入し、10年後にどうしても売却しなければならない事情ができたとします。その時点でのローン残高が8,500万円残っていたとしましょう。

もし、その時の市場価格が8,000万円に下がっていたらどうなるでしょうか。
売却代金(8,000万円)を全額返済に充てても、500万円の借金が残ります。さらに、売却にかかる仲介手数料などの諸経費も手出しで用意しなければなりません。

つまり、現金が用意できなければ、「立派な資産を持っているのに、借金が全額返せないから家を売ることも身軽になることもできない」という状態に陥るのです。これが、不動産購入における最大の死角である「出口(売却時)の問題」です。

無理して購入することのリスク

「銀行のローン審査が通ったのだから買える」という思い込みは非常に危険です。銀行の審査は将来の生活のゆとりまで保証してくれるわけではありません。

マンションを購入した後には、ローンの返済以外にも多額のランニングコストが毎月・毎年かかり続けます。

◎ 住宅ローンの支払い(金利上昇リスクあり)

◎ 管理費・修繕積立金

◎ 固定資産税・都市計画税

◎ 専有部分の設備故障による将来の修繕費用

これらに加え、「会社の業績悪化で収入が減る」「金利が上がる」「相場が下落する」「売却が必要になる」という可能性もあります。

今の状況であれば買えたとしても、10年後、20年後に状況が変わったときに耐えられるでしょうか。

家を買うときは、「今買えるか」ではなく、「将来どんな変化が起きても持ち続けられるか」をシミュレーションする必要があります。

投資目的であればなおさら「将来、この物件を、誰が、いくらで買ってくれるのか」という出口の見通しを持っていなければなりません。

高値で媒介を受ける不動産会社の責任をどう考えるか

売れない物件が市場に溢れる背景には、「高値で媒介契約を取ろうとする不動産会社」の存在も指摘されています。

この問題を考える際は、以下の2つを分けて考える必要があります。

A:結果的に高い価格で売り出し活動をスタートすること自体

B:根拠もないのに「この高い価格でも売れます」と売主に信じ込ませること

Aについては必ずしも悪くありません。高い価格でもその価値を感じる買主が見つかれば、それは一つの市場価格です。
しかし問題はBです。他社との競争に勝つためだけに、周辺の成約データなどを無視して高額な査定を出し、実際には問い合わせもなく後から大幅な値下げを提案するケースです。

こうした事態を防ぐためには、売主自身が不動産会社に対し「なぜその価格で売れると判断したのか、客観的なデータに基づく根拠」を検証する姿勢が求められます。

今のネット社会では「高く出せば売れる」わけではない

ひと昔前であれば、「とりあえず高く出しておけば、情報の少ない素人の買主が買ってくれるかもしれない」という手法が通用した時代もありました。

しかし、今は違います。現代の買主は購入前にさまざまな情報を調べられます。
同じマンション内の販売物件、周辺の相場、駅距離、築年数、管理費・修繕積立金の額、住宅ローン金利など、手元のスマホで簡単に比較したうえで購入を判断します。

「不動産会社から提示された価格を鵜呑みにして買うしかない」という時代は終わりました。最終的に市場価格を決めるのは、「その価格で実際に買う人がいるかどうか」なのです。

専門家の予測より「予測が外れた場合」を考える

不動産市場については、「まだ上がる」「都心は強い」など、さまざまな意見があります。それぞれに一定の根拠がある場合もあります。

しかし、購入する一個人が考えるべきなのは、専門家の予想が当たるかどうかではなく、「もし、その予測が外れたら自分の生活はどうなるのか」ということです。

◎ 1億円で買った物件が、9,000万円、あるいは8,000万円に下がってしまったら?

◎ 金利が上昇して、毎月の返済額が跳ね上がったら?

◎ 売却まで1年以上かかってしまったら?

こうしたケースを考えて、それでも生活に無理がないのか。このシミュレーションこそが、不動産購入において非常に重要な判断材料になります。

専門用語を簡単に解説

成約価格(せいやくかかく)

実際に買主と売主が合意し、売買契約が成立した価格です。

不動産では、最初に市場へ出された価格と、最終的に契約した価格が異なることがあります。値引き交渉が行われた場合は、交渉後の金額が成約価格になります。

そのため、不動産の実際の取引状況を確認するときには、売出価格だけでなく、成約価格を見ることが重要です。

売出価格(うりだしかかく)

売主が「この価格で売りたい」と考えて市場に公開する価格です。

不動産会社による査定価格を参考に決めることが多いものの、必ずしもその価格で売れるとは限りません。売却期間が長くなった場合や購入希望者から価格交渉が入った場合には、価格を下げることもあります。

在庫(ざいこ)

不動産市場に売り出されているものの、まだ売買契約が成立していない物件を指します。

例えば、売却希望者が増えている一方で購入者が増えていなければ、市場に残る物件が増えていきます。在庫が増えることは、買主から見れば選択肢が増える一方、売主側から見ると競合する物件が増えることになります。

流動性(りゅうどうせい)

不動産などの資産を、どの程度スムーズに売却して現金化できるかを表す考え方です。

一般的な住宅地にある需要の高い住宅などは比較的売却しやすい、特殊な土地、権利関係が複雑な不動産、再建築が難しい物件などは、買主が限られるため流動性が低くなる場合があります。

「価格が高いか安いか」だけではなく、「実際に売れるまでどのくらい時間がかかるか」という視点も重要です。

価格乖離(かかくかいり)

売出価格と実際の成約価格など、2つの価格の間に生じる差のことです。

例えば、3,000万円で売り出した不動産が2,800万円で成約した場合、200万円の価格乖離があります。

価格乖離が大きい場合には、売主が希望する価格と、買主が実際に購入してもよいと考える価格との間に差がある可能性があります。

ただし、個々の物件の状態や売却時期などによっても変わるため、価格乖離だけで市場全体を判断することはできません。

実需(じつじゅ)

投資や転売ではなく、実際に自分で使うことを目的とした需要のことです。

住宅であれば「自分や家族が住むために購入する」、店舗や事務所であれば「自分の事業で使用する」といったケースが該当します。

不動産価格を考えるときには、投資目的の需要だけでなく、実際にその不動産を必要としている人がどの程度いるのかを見ることも重要です。

出口/出口の見通し

不動産を購入・所有した後に、将来どのように処理するのかという見通しのことです。

例えば、「将来売却する」「賃貸する」「子どもに相続する」「建物を解体して土地として売る」といった方法が考えられます。

不動産は購入した時点で終わりではありません。将来売却しようとしたときに買主がいるのか、賃貸需要があるのか、相続した家族が維持できるのかなど、所有した後のことまで考えておくことが重要です。

特に価格が高い不動産ほど「買えるか」だけでなく「将来どう手放すか」という出口の見通しを持つことが大切です。

Q&A|中古マンション価格下落について

Q1.東京都の中古マンション価格が0.2%下がったら暴落ですか?

A. いいえ。0.2%程度の下落だけで「暴落」と判断することはできません。

月ごとの価格は、取引された物件の立地・築年数・広さなどによっても変動します。重要なのは、一度の下落だけを見るのではなく、その後も価格下落が続いているのか、在庫が増えているのか、成約件数が減っているのかなど、複数の指標を継続して確認することです。

Q2.売出価格が高ければ、その物件の価値も高いのですか?

A. 必ずしもそうとは限りません。売出価格は、あくまで売主が希望している価格です。

実際にその価格で買主が購入しているとは限りません。市場の実態を確認するには、売出価格だけでなく、実際に契約が成立した成約価格や、売却までの期間なども確認する必要があります。

Q3.今は暴落の入口ですか?

A. 現時点の一つの数字だけを見て、「暴落の入口」と断定することはできません。

ただし、価格の上昇が止まるだけでなく、在庫が増える、成約件数が減る、売出価格の見直しが増えるなどの変化が重なってくれば、市場の需給関係が変化している可能性があります。

「暴落するかどうか」を予想するよりも、こうした変化を継続して確認することが重要です。

Q4.高値で売り出すことは悪いことですか?

A. 高値で売り出すこと自体が問題というわけではありません。物件によっては、立地や眺望、築年数、専有面積などにより、周辺相場より高い価格でも購入されることがあります。

重要なのは、「なぜその価格なのか」を説明できることと、その価格で実際に購入を検討する人がいるかどうかです。

売出後に問い合わせや内見がほとんどなく、長期間売れない場合には、価格設定を見直す必要が出てくることもあります。

Q5.不動産投資で重要なのは何ですか?

A. 購入価格だけで判断しないことです。購入時の利回りや価格だけでなく、「将来、誰が、どのような条件で購入するのか」という出口の見通しまで考える必要があります。

特に中古マンションでは、築年数の経過、修繕費や管理費、金利、周辺の供給状況などによって、将来の買い手が変わる可能性があります。購入時点で利益が見込めても、売却時に買主が見つからなければ、想定していた投資結果にならないことがあります。

Q6.住宅を買うときに何を確認すればいいですか?

A. 現在の住宅ローン返済額だけで判断しないことが大切です。金利が上昇した場合、収入が減少した場合、子どもの教育費など他の支出が増えた場合、さらに将来売却する必要が生じた場合なども考えておく必要があります。

また、「購入したマンションが将来いくらで売れるのか」は誰にも正確には分かりません。

そのため、価格が下落する可能性も含めて、無理のない借入額なのか、売却が必要になった場合に住宅ローンを完済できる可能性があるのかまで考えておくことが重要です。

Q7.中古マンションの価格が下がると、すぐに住宅ローンが危なくなりますか?

A. 価格が少し下がっただけで、すぐに住宅ローンの返済が困難になるわけではありません。問題になるのは、住宅ローンの残高に対して不動産の売却価格が大きく下がった場合です。

例えば、住宅ローン残高が4,000万円あるのに、売却できる価格が3,500万円になれば、単純計算で500万円の差が生じます。売却するためには、この差額を自己資金などで補う必要が生じる可能性があります。

今後3~6カ月で確認したい5つの変化

これからの中古マンション市場を考えるうえで、単月の価格変動だけを見て「上がった」「下がった」と判断するのは適切ではありません。

重要なのは、買い手と売り手の動きが、その後どのように変化していくのかを見ることです。

そこで、今後3~6カ月の間に特に確認しておきたいのが、次の5つです。

在庫がさらに増えるのか

最初に確認したいのが、市場に出ている中古マンションの在庫です。

売却希望者が増えているにもかかわらず、購入者が増えなければ、売れ残る物件が増えていきます。

在庫が一時的に増えるだけなら、季節要因や売却物件の増加など、別の理由が考えられます。しかし、数カ月にわたって在庫が増え続けるのであれば、需要に対して供給が多くなっている可能性があります。

特に、価格が高い状態のまま在庫だけが増えている場合は、売主の希望価格と買主の購入可能価格に差が生じている可能性にも注意が必要です。

成約件数の減少が一時的なのか継続するのか

次に確認したいのが、実際に売買契約が成立した件数です。

価格が高止まりしていても、成約件数が減少しているのであれば、「高い価格で売れている」のではなく、価格が高くなりすぎて買える人が減っている可能性があります。

もちろん、成約件数は月によって変動するため、1カ月だけの減少で判断することはできません。

重要なのは、数カ月連続して減少するのか、それとも一時的な減少にとどまるのかです。

成約価格が前年同月比でも下落していくのか

売出価格ではなく、実際に取引が成立した成約価格がどう変化するのかも重要です。

売主が高い価格で売り出していても、実際には値下げを繰り返して成約しているのであれば、売出価格だけを見ていると市場の変化を見誤る可能性があります。

そのため、成約価格の推移を前年同月や過去数カ月と比較することが重要になります。

ただし、成約価格はその月に売れた物件の立地、築年数、広さ、グレードなどによっても変動します。

したがって、単月の下落だけで市場全体の価値が下落したと判断するのではなく、継続的な動きを確認する必要があります。

売出価格からの値下げが増えるのか

市場の変化を考えるうえでは、最初にいくらで売り出したのかではなく、その後どう価格が変わったのかも重要です。

例えば、3,500万円で売り出された物件が、数カ月後に3,300万円、さらに3,100万円へと価格を下げているのであれば、当初の売出価格では購入者が見つからなかった可能性があります。

こうした価格調整が市場全体で増えてくれば、売主の希望価格と買主が購入できる価格との間に乖離が広がっている可能性があります。

ただし、個別物件の価格変更には、売主の事情や物件固有の問題なども関係するため、値下げ件数だけで市場全体を判断することはできません。

売却期間が長期化するのか

最後に確認したいのが、売り出してから成約するまでの期間です。

価格が大きく下がっていなくても、売却までに時間がかかるようになっているのであれば、市場の流動性が低下している可能性があります。

例えば、これまで1~2カ月程度で売れていた物件が、3カ月、4カ月、それ以上売れ残るようになれば、価格だけでは分からない市場の変化が起きている可能性があります。

特に「価格は高いままなのに売れない」という状態が長く続く場合には注意が必要です。

まとめ|「価格が下がった」より「売れなくなった」に注目する

現在の東京都中古マンション市場では、価格上昇が続いてきた市場に変化が現れています。
2026年8月に東京都の中古マンション価格は28カ月ぶりに前月比下落しましたが、本当に見るべきなのは0.2%という数字だけではありません。

在庫が増えている。成約件数が減っている。売出価格と成約価格に差がある。価格改定も増えている。こうした変化をまとめて見る必要があります。

現時点で「暴落」と断定することはできません。

しかし、需給の悪化を示す指標が同時に進むのであれば、単なる価格調整では説明しにくくなります。

そして、不動産を購入する人にとって大切なのは、「いくらで買えるか」ではなく、「将来いくらで売れる可能性があるのか」という視点です。

不動産は、購入して終わりではありません。
10年後、20年後、必要になったときに売却できるのか。そのとき、ローン残高を整理できるのか。その価格で買ってくれる人がいるのか。そこまで考えて初めて、「資産価値」を考えたことになるのではないでしょうか。

不動産市場を見るなら、売出価格ではなく成約価格を見る。
価格だけではなく、在庫と成約件数を見る。
そして購入するなら、「上がったらどうするか」だけではなく、「下がったらどうするか」の出口の見通しを立てる。

価格が下がったから危険なのではありません。価格が高いままでも、買い手が減り、売却期間が長くなり、在庫が積み上がり、成約価格との乖離が広がっているなら、市場の中身は変わっている可能性があります。

これからの中古マンション市場を見るうえで、この視点がますます重要になってくると考えています。

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【著者プロフィール】

山中 賢一
ワイズエステート販売株式会社 代表取締役
不動産売却専門 兼 廃業・事業再生コンサルタント

埼玉県さいたま市を拠点として、全国の複雑な不動産問題を解決に導く専門家。
大手不動産会社やFC店で「売却不可」と断られた市街化調整区域、権利関係が複雑な訳あり物件、相続トラブル等の売却において圧倒的な実績を持つ。

また、提携法律事務所との強固なネットワークを活かし、廃業・倒産に伴う法人名義の不動産売却や、資金繰りに苦しむ経営者のための資産整理・再生スキーム構築を得意とする。単に「売る」だけでなく、任意売却や債権者交渉、弁護士と連携した法的措置を伴う出口戦略まで、金融・法務・実務の三位一体で顧客の「後悔のない選択」を支援している。

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●土地の歴史を読み解く調査: 登記簿や航空写真から土地の変遷を辿り、自治体独自の判断基準まで深く踏み込む緻密な調査を信条としています。

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