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不動産屋さんの独り言。残価設定型住宅ローン?問題の先送りじゃないのかな?

不動産屋さんの独り言。残価設定型住宅ローン?問題の先送りじゃないのかな?

最近よく「残価設定型住宅ローンってどうなんですか?」が話題になっていますね。

残価設定型住宅ローン
この金融商品は不動産屋の立場で見ると一番気になるのは契約時の返済額よりも「いざ売る時に、その残価が足枷にならないか?」と思いますね。

不動産販売系の仲介がメインの業者さんやお金を貸すことが商売の銀行さんは、「残価設定型住宅ローンは月々の負担が軽減されるから良い住宅ローンですよ~」なんて営業トークでお客さんの勧めると思いますが腹の中では「売却する時のことなんて知らないよ~」なんて感じでしょうからね。

この残価設定型住宅ローンは月々の返済が軽い、最初は楽、という話は分かりやすいんですが、不動産を売却する時の現場ではその“残っている元本”が現実として重くのしかかってくるんですよね。

例えば、転勤や住み替えで売ろうとしたとき、市場価格が思ったより伸びていなかった、あるいは少し下がっていた、その瞬間に「売値 < ローン残高+残価」という状態になると、売りたくても売れない、売るには自己資金で穴埋めが必要、という話になります。

月々の返済負担が軽いからと言って返済をしない分の金額を貯金するような人であれば問題ないのでしょうけど、先のことなんて考えない人にとっては「売却したくても売却できない」なんて状況なになる可能性は高くなるでしょうね。

このことは理屈としては分かっていても、実際に直面すると精神的な負担は相当大きいです。

クルマの残価設定ローンでさえ問題が生じている
車の残価設定ローンですら、査定が下がって差額請求、走行距離や傷で減額、乗り換え前提が崩れて再ローン、なんて話は珍しくないのに、それを数千万円・30年規模の住宅でやるわけですからね。

しかも住宅は、売ろうと思ってもすぐ現金化できるわけじゃない。立地や市況次第では半年、一年かかることもあるし、その間もローンは待ってくれない。

特に怖いのは、「売れる前提」で組んでいるのに、残価があるせいで価格を下げきれないケースです。本来なら相場に合わせてスッと値下げすれば売れる物件でも、「この金額以下では残価を割る」というラインがあると、売却戦略が一気に狭くなる。

昔のゆとりローンもそうでしたが、「将来は収入が増える」「景気は回復する」という楽観シナリオが前提にありました。

残価設定型住宅ローンも、「将来も予想通り売却できる」「大きく値下がりしない」「環境変化は緩やか」という前提がないと成立しません。

でも今の日本を見ていると、物価は上がる、金利も上がり始めた、住宅価格は高止まり、その一方で一般世帯の収入は急には増えていない。

この状況で、10年後・15年後の不動産売却の出口を楽観視しきれるかというと、正直、慎重になった方がいいと思うんです。

もちろん、成立する人もいます。

転勤がほぼ確定している世帯、住む期間が明確な人、駅近や都心など出口が読みやすい物件を選べる人、あるいは残価割れしても差額を補填できる余力がある人。

そういう人にとっては、残価設定型は「返済を軽くするための戦略的な道具」になります。

でも、「とりあえず月々が安いから」「今は払えるから」という理由だけで選ぶと、売却時に残価がブレーキになり、身動きが取れなくなる可能性がありますよね。

国が住宅取得を後押しする理由は分かりますが、政策の合理性と、個人が背負う人生リスクは別物です。

最終的に困るのは一般の消費者である個人です。

住宅ローンで本当に大事なのは、「今は払える」よりも、「売りたい時に売れるか」「売却時に残債額や残価が足かせにならないか」「最悪の状況でも逃げ道があるか」です。

このような金融商品を考える事も大事かもしれませんが、それよりも不動産価格や物価高騰しているのであれば、無理な住宅ローンを組んだり多重債務になるような経済ではなく、税制面や景況感を上げる事により収入を安定的に上昇させるような政策をしてほしいですよね。

このブログの詳細を知りたい方はこちらも読んで下さい⇒残価設定型住宅ローンは本当に安全?国が推進する理由と見落とされがちなデメリットのお話です

今日は、こんな感じで不動産屋さんの独り言はおしまいです。


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