【不動産の仮差押と差押の違いとは?仮差押だからといって安心していませんか?】
近年、不動産の仮差押や差押の登記がされた状態での売却に関するご相談が、住宅ローンの滞納や返済問題のご相談を上回るほど増加しています。
不動産に仮差押や差押の登記が入っていると、「売却できないのでは?」と不安に思われる所有者も多いですが、厳密には、売買契約自体は可能であり、引渡しの時点で仮差押・差押が解除・抹消されることを条件として売却を進めることが可能です。
とはいえ、仮差押や差押の登記があるままでは所有権移転することは困難であって、売却の実現性が低いため、現実にはこれらの登記を解除することが前提となります。
こちらのブログでは、不動産業者として、仮差押と差押の違いや、仮差押がされた状態で不動産を売却するために知っておくべきポイント、実務上の対応方法を分かりやすく解説します。
なお、仮差押や差押の手続きを債権者側として検討している場合には、法律の専門家である弁護士への相談をお勧めします。
住宅ローン滞納が原因であれば、多くの場合、金融機関が抵当権を実行して裁判所に差押・競売を申し立てることで債権回収が行われますが、無担保債権については、確定判決や和解調書などの債務名義がなければ強制執行できず、その前段階として債権者は不動産の売却を防ぐために仮差押を行います。
ご相談者の中には「仮差押だから売却に影響しないだろう」と考えている方もいますが、仮差押の登記がある限り、不動産のスムーズな売却は極めて難しく、安心できる状況ではありません。
この記事を通じて、仮差押と差押の正しい違いや、不動産売却時にどのような影響があるのかをしっかり理解し、適切に対応するための知識を得てください。


仮差押とは

「不動産が金融機関に仮差押えされたんですが、これってもう競売になるんでしょうか?」というご相談をいただくことがあります。
結論から言えば、仮差押えされたからといって、すぐに競売にかけられるわけではありませんので、ひとまずは落ち着いて対応しましょう。
ただし、「仮差押えだからまだ大丈夫」と放置してしまうと、いずれ競売へと進んでしまう可能性があるため、注意が必要です。
そもそも仮差押えとは、裁判所の命令により、債務者が不動産などの財産を勝手に売却したり処分したりできないように一時的に「ロック」する法的手続きです。
これは、金銭の支払いを巡る争いで、支払われないまま債務者に財産を処分されると強制執行できなくなってしまうリスクを防ぐために、民事保全法第20条に基づいて認められた措置です。
「じゃあ、差押えとどう違うの?」という疑問を持つ方も多いと思いますが、仮差押も差押も「財産を処分できないようにする」点では同じです。
ただし、差押えは債権者が債務名義(確定判決や公正証書など)を取得したうえで行う強制執行の一環であるのに対し、仮差押えはその前段階、いわば“差押えと競売の準備”のような性格を持っています。
イメージとしては、「相手にお金を払ってほしいけれど払ってもらえない…でも、このままだと相手が不動産を勝手に売ってしまうかもしれない。そうなる前に裁判所にお願いして、その不動産を仮に鎖で縛っておいてもらう」という感覚です。
実際に売却できなくするわけですから、債務者にとっては大きな不利益となり、不動産の処分や資金調達にも支障をきたします。
したがって、仮差押えがされた状態を放置することは大変危険であり、最終的に差押えや競売へと発展してしまう前に、できるだけ早く対応策を講じることが重要です。
不動産売却を検討している場合は、仮差押えの抹消条件付きでの売却や、債権者との話し合い、任意売却などの方法を視野に入れる必要があります。
なお、仮差押えの手続きを債権者として行いたい場合や、仮差押えに対応するための具体的な法的アドバイスが必要な場合には、必ず弁護士などの法律専門家にご相談ください。
差押とは

不動産に仮差押や差押がされた場合、「もう売却できないのでは」「競売になるのでは」と不安になる方が多いですが、仮差押と差押には明確な違いがあります。特にそれぞれの法的根拠や手続きに注目することで、状況に応じた正しい対応が見えてきます。
まず、仮差押は「民事保全法」に基づく手続きであり、主に金銭の支払いを求める債権者が、債務者による財産処分を防ぐために裁判所へ申立てをして行う保全措置です。一方、差押は「民事執行法」に基づく強制執行の一環で、実際に財産を差し押さえ、競売などにより債権を回収するための手続きです。
両者ともに、例えば不動産の場合は登記簿に差押や仮差押の記載がなされ、それが解除されない限り売却は困難になります。
この両者の最も大きな違いは、「債務名義」の有無です。
差押を実行するためには、債権者はまず債務名義を取得しなければなりません。
債務名義とは、民事執行法第22条に規定されており、具体的には確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書、強制執行認諾文言付きの公正証書などが該当します。
債権者がこれらを取得することで、裁判所を通じて正式に差押を行うことができるのです。
一方で、公正証書に「強制執行認諾文言」が付されている場合は、裁判手続きを経ることなく差押が可能です。
このような場合、仮差押の手続きは不要であり、債権者は即座に民事執行法に基づく差押に進むことができます。
さらに、住宅ローンのように担保付きの債権については、「抵当権」の実行によって差押・競売が行われますが、この場合は債務名義を取得する必要はありません。
抵当権者(通常は金融機関)は、直接、担保不動産に対して差押・競売の申立てが可能です。そのため、仮差押や裁判手続きを経ずに競売が開始されるケースも多くあります。
以上のように、仮差押と差押は手続きや要件に大きな違いがあり、不動産の売却や競売の流れにも直接的な影響を与えます。
仮差押の段階であれば、まだ任意売却などの対応が可能な場合も多いため、登記簿に仮差押や差押の記載がある場合は早めに不動産会社や弁護士に相談することをおすすめします。
【不動産における仮差押と差押の違いとは?】法的根拠・手続き・必要書類まで徹底解説

こうしたご相談を多くいただきますが、仮差押と差押は似て非なる手続きです。
それぞれの違いを正しく理解することで、今後の対応方針が見えてきます。
法的根拠の違い
仮差押:民事保全法に基づく手続き
差押:民事執行法に基づく手続き
仮差押は、裁判の結果が出る前に債務者が財産を勝手に処分することを防ぐための一時的な保全措置です。一方で差押は、裁判などで得られた「債務名義」をもとに、債権者が実際に債権を回収するために行う強制執行手続きです。
債務名義の有無
ただし、債権者と債務者の間に金銭債権が存在することを示す証拠(例:金銭消費貸借契約書、手形など)と、速やかに保全しなければならない理由を証明する書面を裁判所に提出し、認められる必要がある。
●差押:債務名義が必要。例えば、債務者が支払いを拒否した場合、債権者は訴訟を起こし、確定判決を取得して初めて差押が可能となる。
しかし、抵当権実行による担保不動産の差押については債務名義は必要ありません。
債権者による保証金の提供
これは、仮差押が債務者の財産権を制限する行為であるため、万一後にその仮差押が不当であったと判明した場合に、債務者が被った損害に対して賠償金を支払うための担保として必要となるのです。
一方、差押では債務名義が既に存在するため、保証金の提供は原則不要です。
効果は似ているが、意味合いは異なる
しかし、手続きの目的と段階がまったく異なることを理解しておく必要があります。
仮差押 → 強制執行の「前段階」で、財産保全のための仮の処置
差押 → 債務名義に基づく本格的な強制執行
仮差押の段階であれば、任意売却など柔軟な対応が可能なケースも多いため、早期の対策が非常に重要です。
仮差押と差押の効果
●いずれも不動産の処分(売却・譲渡など)を制限する効果がある。
◆相違点◆
●仮差押:あくまで暫定的な処置であり、最終的に債権の有無を裁判で確定させる必要がある。
●差押:確定判決などの債務名義に基づく強制執行の一環であり、競売手続きへと進む可能性が高い。
仮差押や差押が登記されたら、すぐに専門家へ相談を
特に仮差押の段階では、まだ競売に進んでいないため、冷静かつ早急な対応が鍵となります。不動産会社や法律事務所など、信頼できる専門家に相談することで最善の解決策を見つけ出すことができます。
不動産が仮差押された場合、どうなるか?
しかし、この措置がとられると、債務者には大きなプレッシャーがかかります。
仮差押された不動産を売却することは原則として可能ですが、債権者と協議して借差押を解除してからでなければ所有権移転ができません。
仮差押をされた場合には、差押と違って登記簿謄本で確認する以外は仮差押をされている事を第3者が分かる事はありません。
しかし、仮差押えされた不動産を担保に融資を受けている場合、融資先の金融機関は登記簿謄本を確認する可能性があるため分かってしまう可能性があり、新規の融資は難しくなり既存融資についても停止されることになります。
仮差押がされた不動産の扱い方|売却や居住への影響とは?

ただし、「何もできなくなる」というわけではありません。
ここでは、仮差押を受けた不動産の取り扱いについて詳しく解説します。
不動産が仮差押されるとどうなる?
このため、仮差押の登記がされると、不動産を自由に売却することはできなくなります。
ただし、これはあくまでも処分(売却や贈与など)を制限するための措置であり、以下のような行為は可能です。
・不動産に住み続ける
・賃貸物件として使用し続ける
・管理や修繕を行う
つまり、居住や使用自体が制限されるわけではありません。
売却は原則として可能だが、仮差押の解除が必要
売却を完了させるには、債権者と協議し、仮差押の解除を得る必要があります。
そのためには、債務の返済や和解、任意売却などの方法を通じて、債権者の同意を得ることが不可欠です。
仮差押は「見えにくい」登記|だが金融機関には影響大
つまり、第三者が気付く手段は登記簿を確認する以外にありません。
しかし、不動産を担保にして融資を受けている場合は話が変わります。
金融機関は定期的に登記簿謄本(登記事項証明書)を確認しており、仮差押の登記が発見されれば、次のような事態が想定されます。
・新規融資の審査に通らない
・既存の融資が凍結・見直しされる可能性
・担保価値の評価が大きく下がる
仮差押はあくまで「仮の措置」ではありますが、実質的な信用力の低下につながるため、金融面での影響は非常に大きいといえるでしょう。
仮差押されても放置していても大丈夫?

「不動産が仮差押されたままでも放置していて大丈夫でしょうか?」というご質問をいただくことがあります。
結論から申し上げると、放置していて“問題ない”とは言えません。
仮差押の目的は「差押・競売を見据えた処分禁止」
このような中で仮差押がされる理由は、債務者が不動産を勝手に売却・処分するのを防ぐことにあります。
つまり、差押・競売をするための“前段階”の手続きと捉えてよいでしょう。
仮差押=すぐに競売とは限らないが、近い将来そうなる可能性が高い
しかし、債権者がその後に債務名義(確定判決や公正証書など)を取得すれば、差押を経て競売へと移行するのは時間の問題です。
つまり、仮差押の時点で「競売されるかもしれない」という危機意識を持つのは正しい判断です。
任意売却を考えるなら「放置」は絶対にNG
仮差押がされている状態でも、債権者と協議して仮差押を解除してもらうことができれば、任意売却による所有権移転は可能です。
しかし、仮差押を放置したまま時間が経てば、差押・競売が進んでしまい、任意売却のチャンスは失われてしまいます。
任意売却で少しでも良い条件で不動産を売却したいと考えている方は、仮差押をきっかけに、すぐに行動を起こすことが重要です。
仮差押から差押・競売を回避するには

不動産会社から売却活動を伝える場合は、売却時の返済予定額を債権者に具体的な資料で伝えて了承を得るべきです。
万が一、債権者が納得できるような返済額でない場合は任意売却の申し出をして然るべき手続きを進めるべきです。任意売却の場合は債権者によって期間や手続きの内容が変わってきますので任意売却を専門としている不動産会社に依頼する事をお勧めします。
不動産を売却せずに仮差押を解除する方法は2つあります

債権者から請求されている金額を返済する
これによって債務が消滅し、仮差押も解除されます。
ただし、金額が大きい場合や返済資金がない場合は、実際には最も難しい選択肢になることもあります。
仮差押や債権額の不当性を裁判所に申し立てる(保全異議申立)
この手続きは専門的な法律知識が必要なため、必ず法律事務所に依頼して対応してもらうことが望ましいです。
詳細な説明は省略しますが、場合によっては仮差押を解除できる可能性があります。
諦めないで!仮差押されたからといって絶望する必要はありません
状況によっては、売却せずに仮差押を解除することも可能です。
まずは専門家に相談し、最適な解決策を検討していきましょう。
仮差押されていても不動産は売却できます!ただし手順が重要です

ただし、仮差押がされている不動産を売却する際は、引渡しのタイミングで確実に仮差押を解除できる段取りを整えることが必須となります。
注意!権利関係が複雑な不動産は慣れていない会社に任せると思わぬトラブルも
・債権者に引渡し直前まで連絡せず売買契約だけ進めてしまい、決済(引渡し)ができなくなる
・売却後にトラブルが発生し、契約が白紙になってしまう
売却活動前に債権者と協議し、法律の専門家の協力を得ることが重要
この準備ができていないと、せっかくの売却もスムーズに進まないリスクがあります。
仮差押があるからといってあきらめずに、専門家と連携しながら最適な方法で売却を進めていきましょう。
仮差押された物件を任意売却する具体的なステップ
まず、不動産の登記簿謄本で仮差押の有無を確認します。また、債権者からの請求書や契約書、借入金の状況などを整理し、現在の債務状況を明確にします。
2. 専門家(不動産会社・法律事務所)への相談
仮差押された不動産の売却は専門知識が必要なので、経験豊富な不動産会社や法律事務所に早めに相談します。特に債権者との交渉が必要な場合は法律事務所の協力が不可欠です。
3. 債権者との事前交渉
売却活動を始める前に、仮差押をしている債権者に対して売却の意向を伝え、協議を始めます。債権者は売却代金の一部を回収できる可能性があるため、任意売却に応じるケースが多いです。
4. 売却価格の設定と売却活動
債権者の理解を得ながら、市場価格や現実的な売却価格を設定し、売却活動を進めます。債権者の了承がある場合は、買主にも仮差押の状況を説明します。
5. 売買契約の締結と決済条件の設定
売買契約時に「引渡しまでに仮差押を解除する」という条件を付けるのが一般的です。決済日までに債権者との合意のもとで仮差押を解除し、所有権移転登記を完了させます。
6. 決済と仮差押解除手続き
買主から代金を受領した後、債権者へ弁済を行い、仮差押の解除登記を進めます。解除が完了してから買主に物件を引き渡します。
債権者との交渉方法(法律事務所に相談してください)
債権者は回収を目的としているため、無理な態度や拒否は逆効果です。返済計画や売却スケジュールを具体的に示し、誠実な対応を心がけましょう。
・弁護士・司法書士など専門家の同席
法律的な内容や交渉の複雑さを考慮し、専門家を立てて交渉することで、話がスムーズに進みやすくなります。
・代金の使途・売却価格の根拠を説明
債権者は回収可能な金額を重視するため、売却価格の根拠や売却後の返済計画を具体的に説明し、納得してもらう必要があります。
・柔軟な条件設定も視野に入れる
場合によっては一部返済や分割払い、引き渡し期限の延長などを提案し、債権者の理解を得る工夫も重要です。
まとめ

つまり、仮差押は「債権回収=差押・競売」の手続きの一環なのです。
しかし、仮差押をされた債務者の立場からすると、「差押・競売」、さらには「自己破産」につながる可能性もあることから、決して手続きの一環とは受け止められないのが現実でしょう。
考え方によっては、最悪の結果への道標のように感じてしまうのも無理はありません。
返済に苦しみながらも必死に努力してきた方が、いつの間にか仮差押という思いもよらない状況に陥ってしまったケースもあります。代理人に任せていたら、認識の違いから気づかぬうちに仮差押えをされてしまったという方もいらっしゃるでしょう。
そんな時に大切なのは、まず「自分に何ができるのか」「自分はどんな結果を望んでいるのか」を冷静に見つめることです。
そして、自分では対応が難しいと感じたら、共に歩んでくれる信頼できる協力者を見つけ、自分の望む結果を実現するために行動を起こすことが重要です。
やるべきではないのは、「すべて人任せにしてしまうこと」です。
ご自身の人生やビジネスは、成功か失敗かのどちらかに分かれるものですが、たとえ失敗してもそれが人生の終わりではありません。
新たな成功を目指すためのリスタートとして、「手続きの一環」だと前向きに捉えてみてはいかがでしょうか。
もし、弊社と提携している法律事務所が携わった、信用保証会社からの仮差押えがついた不動産売却および残債務の減額交渉の成功事例についてご興味があれば、ぜひ以下のブログをご覧ください。
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仮差押えは債権者が差押・競売を行う前の保全手続きですが、そのまま放置すると売却はもちろん、新たな資金調達も困難になります。
しかし、仮差押えがあっても売却できるケースや、債権者と交渉して仮差押えを解除できる可能性があります。
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