はじめに|「昔から宅地なのに売れない」と言われた土地に、別の可能性はあるのか

「昭和45年の線引き前から宅地なのだから、地積400坪の土地を分割して建売住宅を5〜6棟建てれば、高値で売れるはずだ」

そう考えて不動産会社に相談したところ、次のように説明されたとします。

「開発許可が難しいため、戸建て分譲はできません。住宅用地としての評価はできず、土地の価格もかなり低くなります」

また、別の会社から「都市計画法第34条第12号を利用すれば建築できる可能性があります」と提案されたものの、調べてみると、買主の親族関係や居住歴などの条件を満たす必要があり、一般の購入希望者には売りにくいことが分かった、というケースもあります。

市街化調整区域の土地では、「建物を建てられる可能性があること」と「一般の買主に売却できること」は同じではありません。

線引き前から宅地として利用されてきた土地でも、複数区画に分けて住宅を建てられるとは限りません。一方、住宅分譲が難しい土地であっても、土地の条件や法令上の制限によっては、企業や事業者への売却、資材置場などの事業用利用を検討できる場合があります。

大切なのは、最初から「住宅用地として売れる」「市街化調整区域だから安い」と決めつけないことです。

この記事では、埼玉県内の川越市・上尾市・桶川市などの市街化調整区域を念頭に、線引き前宅地の注意点、都市計画法第34条の許可基準、企業向け売却の可能性、査定時に確認すべき事項を解説します。

1.なぜ線引き前から宅地なのに、住宅分譲できないことがあるのか?

① 線引き前宅地であることと、建売分譲できることは別

市街化調整区域では、都市計画法により開発行為が制限されています。一定の開発行為を行うには、原則として都市計画法第29条に基づく開発許可が必要です。

ここで注意したいのが、土地が市街化区域と市街化調整区域に区分された時点、いわゆる「線引き」の前から宅地だったとしても、それだけで自由に開発できるわけではないという点です。

例えば、以前から一戸建て住宅が建っていた土地について、既存の建物を建て替える場合と、地積400坪の土地を4〜6区画に分割して建売住宅を新築する場合では、行政上の判断が異なる可能性があります。

後者では、土地の区画形質の変更に該当するか、開発許可が必要か、予定する建築物が許可基準に適合するかなどを確認しなければなりません。

線引き前から宅地であったことを示す資料は重要ですが、それだけで複数棟の建築や戸建て分譲が認められるとは限りません。

② 過去に建物があったことだけでは判断できない

「昔、住宅が建っていた」「固定資産税上の地目が宅地になっている」「登記簿の地目が宅地である」といった事情は、土地の履歴を調べる手掛かりになります。

しかし、これらの事情だけで、現在の建築や開発が認められるとは限りません。

実務では、例えば次のような事項を確認します。

また、線引き前から宅地であることを理由に建築できる制度が適用される場合でも、開発許可と建築許可は区別して検討する必要があります。

「線引き前宅地だから建てられる」と「線引き前宅地だから分譲できる」は、別の問題です。

③ 最初から住宅分譲だけに絞ると、売却の可能性を見落とすことがある

地積400坪の土地を所有している場合、所有者としては建売会社や開発分譲会社に売却する事を想定しがちです。

しかし、住宅分譲の可否だけで土地の価値を判断すると、ほかの利用方法を検討しないまま売却を諦めてしまう可能性があります。

例えば、土地の立地や接道、周辺の土地利用、法令上の制限などによっては、事業用地としての可能性を調べる余地があります。

ただし、広い土地だから企業が買うとは限りません。企業側にも、用途、道路条件、車両の出入り、造成費、排水、許認可、事業採算などの判断があります。

そのため、まずは住宅用地としての可能性を確認し、難しい場合には事業用利用も含めて調査する、という順番が現実的です。

2.都市計画法第34条第12号なら、一般の第3者に売却できるのか?

市街化調整区域の建築相談で、都市計画法第34条第12号という言葉が出てくることがあります。

しかし、第12号を利用すれば、どの土地でも企業や一般の購入者が建物を建てられるわけではありません。

都市計画法第34条は、市街化調整区域で開発行為を行う場合に、一定の条件のもとで許可の対象となる立地基準を定めています。第12号については、条例による基準の定め方や対象となる開発行為などを確認する必要があります。

特に注意したいのが、第12号という同じ条文番号でも、自治体の条例や運用によって対象となる用途・要件が異なるという点です。

住宅系の基準では、申請者の親族関係や居住歴などが要件になる場合があります。ただし、すべての第12号の基準に一律の「6親等以内」という条件があるわけではありません。

また、親族関係などの要件がある制度を利用できたとしても、そのことが土地を一般の第三者へ自由に転売できることを意味するわけではありません。

確認すべきなのは、次の点です。

土地を売却する側にとって重要なのは、単に「建築できる可能性がある」という説明ではありません。どのような買主が、どのような用途で、どの許可基準を利用できるのかまで確認することです。

3.住宅分譲が難しい土地で検討したい3つの売却・活用の方向性

ここからは、一般の第3者や企業・事業者への売却を検討する際に、確認したい3つの方向性を紹介します。

いずれも、すべての市街化調整区域の土地に適用できる方法ではありません。土地の所在地、面積、接道、地目、周辺環境、許可基準などを確認したうえで、可能性を判断する必要があります。

方向性A:【立地基準の個別調査】都市計画法第34条から建築・開発の可能性を見極める

市街化調整区域の土地は、住宅用地としての売却が難しい場合でも、土地の所在地や利用履歴、予定する用途などによって、検討できる許可基準が異なります。

まずは土地の現況、過去の建築・開発許可、接道、周辺の土地利用、農地法上の制限などを調査し、都市計画法第34条の立地基準のうち、該当する可能性のあるものを個別に検討します。

そのうえで、自治体の条例や審査基準を確認し、行政との事前協議を通じて建築・開発の可能性を見極めます。

桶川市の上尾道路沿線における物流施設の例

桶川市では、大字川田谷地内の一般国道17号上尾道路沿線において、一定の物流施設を対象とした、都市計画法第34条第14号に基づく開発審査会への付議基準が設けられています。

ただし、対象となる施設や区域、道路との位置関係、開発区域の面積、車両の出入り、交通安全などの条件が定められています。

この制度は、上尾道路や圏央道の桶川加納インターチェンジに近い土地であれば、どのような企業施設でも建築できるというものではありません。また、開発審査会への付議基準を満たすことと、最終的に開発許可を受けられることも別です。

このように、企業向け売却を検討する場合は、単に「幹線道路沿いだから有望」と判断するのではなく、具体的な土地と予定用途が行政の基準に合うかを確認することが大切です。

方向性B:都市計画法第34条第11号の条例指定区域を確認する

住宅用地としての可能性を検討する場合は、第11号に基づく条例指定区域に該当するかどうかも確認項目になります。

第11号は、市街化調整区域のうち、条例で指定された区域などについて、一定の要件を満たす開発行為を許可対象とする仕組みです。

ただし、すべての自治体が同じように区域を指定しているわけではありません。指定区域内に土地があっても、予定する用途や敷地条件などが基準に合わなければ、希望する建築や分譲ができるとは限りません。

川越市・上尾市・桶川市をまとめて「11号を利用すれば建売分譲できる」と説明するのは適切ではありません。所在地ごとに、現在の条例、指定区域図、開発許可基準を確認する必要があります。

また、第11号と第12号は別の立地基準です。第12号の要件に該当しないからといって、第11号で必ず解決できるわけではありません。

確認のポイントは次のとおりです。

第11号の可能性がある土地であれば、住宅用地としての売却を改めて検討できる場合があります。ただし、最終的な判断には行政への確認が欠かせません。

方向性C:資材置場・車両置場など、建築を主目的としない利用を検討する

住宅や工場などの建築が難しい場合、資材置場や車両置場などの土地利用が候補になることがあります。

例えば、建設会社、解体事業者、運送事業者などが、資材や車両を置く場所を必要としているケースです。

こうした用途では、建物を建てることを前提としないため、住宅や事業所の建築とは異なる観点から土地利用を検討できる場合があります。

しかし、「建築物を建てないから、都市計画法やほかの法令の規制を受けない」とは限りません。

土地の造成や区画形質の変更が開発行為に該当するか、農地転用の許可・届出が必要か、農振農用地に該当するか、排水や土砂流出への対策が必要かなどを確認する必要があります。

コンテナやプレハブなどを設置する場合も、規模や構造、継続的な使用実態によっては建築物として扱われる可能性があります。

また、土地を資材置場として利用できることと、その土地を高値で売却できることは別問題です。需要のある事業者が存在するか、必要な整備費用を負担できるか、近隣環境に支障がないかなども検討します。

資材置場や車両置場は、あくまで土地の条件に合う場合に検討する選択肢の一つです。

4.川越市・上尾市・桶川市で土地を調査する際の着眼点

同じ市街化調整区域でも、自治体によって条例、開発許可基準、指定区域、行政の土地利用方針などが異なります。

エリア調査時に確認したい事項注意点
川越市都市計画法の立地基準、開発許可制度、土地利用方針、農地・農振の指定幹線道路沿いや産業系の用途に向いていそうな土地でも、立地だけで建築できるとは限らない
上尾市第11号の条例指定区域、第12号などの許可基準、産業系利用に関する手引き・区域指定道路幅員や集落との距離などを、根拠の確認なしに一律の数値で判断しない
桶川市第11号などの条例指定区域、開発許可基準、上尾道路沿線の物流施設に関する付議基準上尾道路沿線の特定物流施設に関する基準を、一般企業やロードサイド店舗にそのまま当てはめない

実際の調査では、都市計画課や開発許可の担当窓口などで、該当する基準と対象区域を確認します。農地の場合は農業委員会や農政関係の担当部署への確認も必要です。

なお、同じ市内でも土地の位置や履歴によって判断が変わります。隣の土地で建築が認められたという事実だけで、自分の土地も同じように利用できるとは限りません。

5.市街化調整区域の土地査定で確認したい5つのポイント

市街化調整区域の土地を売却する際は、単に登記簿や公図を確認して価格を決めるだけでは、利用可能性を十分に把握できない場合があります。

査定では、次の5つの観点から調査することが重要です。

① 土地の履歴を確認する

公図、登記事項証明書、旧土地台帳、過去の航空写真、建築確認や開発許可に関する資料などを確認し、土地がいつ、どのように利用されてきたかを調べます。

線引き前から宅地であったことを確認したい場合も、登記地目や固定資産税の課税状況だけで結論を出すのではなく、複数の資料を組み合わせて判断します。

なお、線引きの時期は自治体によって異なるため、対象地の所在地に応じた日付と制度を確認する必要があります。

② 接道・道路条件を確認する

土地が接している道路について、幅員、道路の種別、所有関係、通行や工事の条件、車両の出入りなどを確認します。

大型車両の利用を想定する場合は、道路幅員だけでなく、交差点の形状、見通し、転回スペース、交通安全なども重要です。

特定の許可基準で道路幅員などの数値要件が設けられている場合は、その基準を確認したうえで判断します。全国共通の数値があるかのように扱うことは避けなければなりません。

③ 農地法・農振・排水などの制限を確認する

土地の登記地目が宅地以外の場合はもちろん、現況や過去の利用状況によっても、農地法上の手続きが関係する場合があります。

農業振興地域内の農用地区域に該当する場合は、農振除外などの手続きが問題になることもあります。ただし、農振除外や農地転用が必ず認められるわけではなく、土地の場所や農業上の位置付けなどによって判断されます。

そのほか、排水先、水路、盛土・造成、土砂災害や洪水などの災害リスクも確認します。

④ 予定用途に適用できる許可基準を調べる

住宅、工場、物流施設、資材置場など、予定する用途によって必要な調査は変わります。

都市計画法第34条のどの基準に該当する可能性があるのか、開発許可や建築許可が必要か、条例や開発審査会の基準があるかなどを、具体的な土地と利用計画に照らして調べます。

行政への事前相談では、土地の位置図、公図、測量図、現況写真、登記事項証明書、予定用途などの資料を用意すると、相談内容を具体化しやすくなります。

⑤ 買主候補と事業採算を検討する

許可の可能性を調べることは重要ですが、それだけでは売却は成立しません。

企業や事業者が土地を購入する場合、取得価格に加えて、造成費、排水設備、道路整備、許認可取得にかかる費用や時間なども検討します。

そのため、土地の条件に合いそうな業種を考え、実際に利用する可能性のある事業者がいるかを確認します。必要に応じて隣地所有者などへの売却も検討します。

許可の可能性、整備費用、買主の需要をまとめて考えることが、現実的な売却価格を見極めるうえで大切です。

6.市街化調整区域の土地は「建てられるか」だけでなく「誰に売れるか」まで考える

市街化調整区域の土地について相談すると、「住宅は建てられない」「開発許可が難しい」「親族要件を満たす人でなければ利用できない」と説明されることがあります。

その説明が正しい場合もあります。しかし、土地の条件や利用履歴を十分に調べないまま、住宅分譲の可否だけで売却の可能性を判断してしまうと、ほかの選択肢を見落とすおそれがあります。

一方で、「企業向けなら売れる」「資材置場なら許可はいらない」「産業系の基準を使えば高く売れる」といった説明にも注意が必要です。事業用地としての可能性があっても、個別の許可基準、土地の条件、買主の事業計画などを確認しなければ、実現できるとは限りません。

重要なのは、土地ごとに次の点を整理することです。

市街化調整区域の土地は、同じ市内でも条件が大きく異なります。過去に別の土地で利用できた制度が、そのまま適用できるとは限りません。

だからこそ、土地の履歴、法令上の制限、道路、農地・農振、災害リスク、買主候補を一つずつ確認し、実現可能性のある売却方法を検討する必要があります。

7.市街化調整区域の土地売却でお困りの方へ|ワイズエステート販売株式会社

「昔から宅地なのに、分譲できないと言われた」

「親族要件のある制度しか使えないと説明された」

「広い土地を相続したものの、どのような用途があるのか分からない」

「他社に相談したが、売却が難しいと言われた」

このようなお悩みをお持ちの場合は、住宅用地としての可能性だけでなく、土地の履歴や法令上の制限を確認し、企業・事業者による利用も含めて検討することが大切です。

ワイズエステート販売株式会社では、市街化調整区域の土地について、土地の状況や権利関係、開発許可などの可能性を調査し、個別の事情に応じた売却方法を検討しています。必要に応じて、提携法律事務所とも連携しながら、複雑な権利関係を抱えた不動産のご相談にも対応しています。

もちろん、調査した結果、希望する用途が認められない場合や、事業用地としての売却が難しい場合もあります。その場合も、確認できた条件と制限を整理し、現実的な選択肢をご説明することを大切にしています。

「市街化調整区域だから売れない」と結論を出す前に、まずは土地の可能性を一緒に確認してみませんか。

売却の方針が決まっていない段階でも、他社で断られた土地でも構いません。所在地や土地の概要が分かる資料をご用意のうえ、お気軽にご相談ください。

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このようなお悩みはありませんか。

市街化調整区域の土地は、所在地や土地の履歴、道路条件、法令上の制限によって、検討できる売却方法が異なります。

ワイズエステート販売株式会社では、住宅用地としての可能性だけでなく、企業・事業者への売却や土地の利用方法も含め、個別の事情に応じて検討します。

すべての土地で希望する用途や売却が実現できるわけではありませんが、まずは何が可能で、どのような制限があるのかを整理することが大切です。

売却方針が決まっていない段階でも、お気軽にご相談ください。

ワイズエステート販売株式会社
市街化調整区域の不動産売却・活用に関するご相談を受け付けています。