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相続した不動産を売却するには?売却前に確認したいことと、売れにくい不動産の対処法

相続した不動産を売却するには?売却前に確認したいことと、売れにくい不動産の対処法

はじめに

親や親族から不動産を相続したものの、「使う予定がない」「遠方に住んでいるため日常的な管理が困難である」「固定資産税や維持管理費だけが毎年発生している」といった悩みを抱える方は少なくありません。

「そろそろ売却したいけれど、何から手をつければいいのか分からない」「地元の不動産会社に相談したものの、難しい物件だと言われてしまった」というケースも多く見られます。

相続した不動産は、必ずしも普通の中古住宅と同じようにスムーズに売却できるとは限りません。

適切な順序と調査を行わずに売却活動を進めると、トラブルの発生や取引の中断を引き起こす原因となります。本記事では、相続不動産を確実かつ安全に売却するための手順と、問題解決の糸口を網羅的に解説します。

【結論】相続した不動産は「査定」より先に、売却できる状態かを確認する

相続不動産の売却を検討する際、多くの方が最初に「いくらで売れるのか」という価格査定を求めがちです。しかし、他に重要なのは、価格査定の前に「どのような状態の不動産なのか(法的に、かつ実態として売却手続きを進められる状態にあるか)」を正確に把握することです。

具体的には、売却活動を開始する前に以下の項目を精査する必要があります。

◎ 相続人は誰なのか:法定相続人を漏れなく特定できているか

◎ 相続登記は済んでいるのか:所有権移転登記(名義変更)が完了しているか

◎ 共有者はいないか:複数人での共有名義になっていないか

◎ 遺産分割協議は終わっているか:相続人全員で遺産の分け方に合意しているか

◎ 土地・建物の権利関係に問題はないか:抵当権、借地権、賃借権などの負担はないか

◎ 再建築できるのか:都市計画法・建築基準法上、建て替えが可能な土地か

◎ 私道の権利関係はどうなっているか:接道が私道の場合、通行・掘削等の権利はあるか

◎ 境界・越境に問題はないか:隣地との境界確定や、建物・樹木等の越境はないか

◎ 第三者が土地や建物を使用していないか:無断または契約に基づく占有者はいないか

◎ 底地・借地ではないか:土地のみ(底地)または建物所有を目的とする借地権ではないか

「いくらで売れるか」という査定価格は、これらの状態が整理されて初めて意味を持ちます。まずはこの点をこの記事全体の軸として、売却に向けたステップを確認していきましょう。

1.相続した不動産は、すぐに売却できるのか?

相続した実家の鍵を受け取ったその日から売却活動を始められるわけではありません。

不動産を第3者へ引き渡すためには、物理的な準備だけでなく、法的な権利移転の準備が整っている必要があります。

ここでは、相続した不動産の売却に向けたスタートラインに立つための前提条件を整理します。

1-1 相続したら売却を検討できる

相続によって不動産を取得した場合、その財産をどのように処分するかは相続人の権利です。

不動産の売却に向けた調査や準備自体は、相続発生直後から進めることが可能です。

1-2 ただし、相続手続きが終わっているとは限らない

相続登記が完了していなくても、不動産の売却活動や契約準備を進められる場合があります。

ただし、買主と売買契約を締結できたとしても、最終的な決済・引渡しまでには、売主となる相続人への名義整理(相続登記)を完了させる必要があります。

1-3 相続人が複数いる場合は注意

被相続人の遺言書がない場合、遺産分割前の相続財産は、原則として共同相続人による共有状態にあります。

1人でも売却に反対している、あるいは協議に参加できない状態では、不動産全体を第三者へ売却することはできません。

1-4 共有名義になっている場合はさらに注意

遺産分割の段階で共同所有(共有名義)として登記してしまった場合、今後の取り扱いに制限が生じます。

共有名義の不動産全体を売却するには「共有者全員の同意」が必要です。

※なお、賃貸などの管理行為は持分の過半数、修繕などの保存行為は各共有者が単独で行えるなど、行為によって必要な同意の範囲が異なります。

2.相続した不動産を売却する基本的な流れ

不動産の売却は、事前調査から引き渡しまで多くの工程を踏むため、最短でも数ヶ月の期間を要します。途中で手続きが滞らないよう、相続発生から現金化までの全体像とスケジュール感をあらかじめ把握しておきましょう。

相続した不動産の売却は、一般的に以下の順序で進めます。

◎ 相続発生(被相続人の死亡)

◎ 相続人・財産の確認

◎ 遺産分割協議

◎ 相続登記(名義変更)

◎ 不動産の法的・物理的調査

◎ 不動産価格の査定

◎ 不動産の売却方法の検討

◎ 媒介契約・売却活動

◎ 売買契約締結

◎ 決済・引渡し

※ただし、この順番がすべてのケースに当てはまるわけではありません。
相続登記の準備と並行して不動産の調査・査定を進めるケースや、売却代金を現金化してから分ける「換価分割」を前提に活動を先行させるケースなど、状況に応じた柔軟な進め方が求められます。

3.売却前に最初に確認したい「所有者」と「相続人」

相続した不動産は「当然、親の名義だろう」「相続人は自分たち兄弟だけだ」という思い込みは、売却手続きが頓挫する最大の原因です。

まずは法務局や役所で公的な記録を確認し、誰が権利を持ち、誰の同意が必要になるのかを正確に確定させる作業から始めます。

3-1 登記名義人を確認する

不動産の売却の第一歩は、法務局で「全部事項証明書(登記事項証明書)」を取得し、現在の所有者名義が誰になっているかを確認することです。

亡くなった親が所有者だと思っていたら、実は祖父のままだったというケースも少なくありません。

3-2 誰が相続人なのか確認する

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を収集し、法定相続人を確定します。

法定相続情報一覧図を作成しておくと、その後の金融機関や法務局での手続きがスムーズになります

これは、被相続人に別の婚姻歴があった場合や、前婚の配偶者との間に子がいる場合、認知した子がいる場合、養子縁組をしている場合などには、特に注意が必要です。

現在の戸籍だけを確認して「相続人はこの人たちだけ」と判断してしまうと、過去の戸籍に記載された子どもなどを見落とす可能性があります。

3-3 遺産分割協議が終わっているか

誰がその不動産を取得するのか、あるいは売却して代金を分けるのかを全員で協議し、遺産分割協議書を作成します。

相続登記等の手続きには、相続人全員の署名と実印の押印、および発行から一定期間内(一般的には3ヶ月〜6ヶ月以内)の印鑑証明書が必要です。

3-4 相続人の中に連絡が取れない人がいる場合

不動産を相続して遺産分割協議をするときに、行方不明者や認知症等で判断能力が不十分な方がいる場合、勝手に手続きを進めることは無効となります。

家庭裁判所で不在者財産管理人の選任や成年後見制度の利用手続きを行う必要があり、これには数ヶ月の期間を要します。

3-5 共有状態になっている場合

既に複数名の共有で登記されている場合、不動産全体を売却するためには、原則として共有者全員が売主として売買契約に関与する必要があります。

共有者が遠方に住んでいるなどの事情で立ち会えない場合は、正式な委任状を用意して代理人に手続きを委任することもできます。

一方、共有者の一人が売却に同意しない場合や、連絡が取れない場合、判断能力に問題がある場合には、別途対応が必要になることがあります。

4.相続登記が済んでいない不動産はどうする?

亡くなった方の名義のままでは、不動産を第三者に売却することはできません。

2024年の法改正による義務化の背景も踏まえ、売却活動と並行して進めるべき名義変更手続き(相続登記)の重要性と対応方法を解説します。

4-1 相続登記とは

亡くなった方の名義になっている不動産を、相続によって取得した人の名義へ変更するため、法務局で行う手続きです。

相続登記は相続人自身で申請することもできますが、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成など、必要な書類や手続きが複雑になるため、司法書士に依頼して進めるケースが一般的です。

4-2 なぜ相続登記が必要なのか

日本の不動産取引では、買主へ所有権を移転する際、売主が登記上の所有者として確認できることが重要です。そのため、亡くなった方の名義のままになっている不動産を、相続人がそのまま買主へ売却することはできません。

まずは、相続人への相続登記を行い、登記上の所有者を相続人に変更したうえで、買主への所有権移転登記を行うのが原則です。つまり「被相続人 → 相続人 → 買主」という所有権の移転を登記上でもつなげる必要があります。

4-3 相続登記をしないまま売却できるのか

相続登記が完了していない段階でも、遺産分割協議が成立しており、相続人が確定していれば、条件を付けて売買契約を締結するケースがあります。

ただし、実際の決済・引渡しまでには相続登記を完了し、相続人が登記上の所有者となっている必要があります。

そのため、契約を先に進める場合には、相続登記を確実に完了できる見込みがあるかを、事前に確認しておくことが重要です。

4-4 相続人が複数いる場合

相続人が複数いる場合、売却を前提とした換価分割であれば、遺産分割協議で売却代金の分配方法を決め、代表者1名の名義に変更してから売却する方法があります。

一方、法定相続分に応じて複数の相続人の共有名義にした後で売却する方法では、共有者全員が売買手続きに関与する必要があるため、手続きが複雑になりやすくなります。

そのため、不動産の売却を予定している場合は、相続登記をする前に、どのような形で売却するのかを相続人間で整理しておくことが重要です。

4-5 過去の相続が未処理になっている場合(数次相続)

「親から相続したと思っていたら、登記名義は祖父のままだった」というケースでは、祖父の相続から順番に権利関係を整理する必要があります。

その間に相続人が亡くなっていると、さらにその相続人が新たな相続人となるため、相続関係が複雑になり、最終的に相続人が多数に及ぶこともあります。

相続人が増えるほど、全員の所在確認や遺産分割協議が難しくなり、不動産の売却までに時間がかかるケースもあります。

「名義が昔のままになっている」と気付いた段階で、早めに戸籍を確認し、現在の相続関係を整理することが重要です。

5.相続した不動産の「権利関係」を確認する

不動産の価値は目に見える建物や土地の広さだけでなく、登記簿に隠れた他者の権利によって大きく変動します。

過去の住宅ローン抵当権の残りや、第三者の使用権など、取引の障害となり得る権利関係のチェックポイントを紐解きます。

5-1 所有権だけ確認すればいいわけではない

不動産の登記簿を確認するときは、誰が所有者なのか(甲区)だけでなく、抵当権や差押えなど、他者の権利が設定されていないか(乙区等)も確認する必要があります。

所有者が正しくても、抵当権や差押えなどが残っていれば、売却手続きに影響することがあります。

そのため、相続不動産を売却する際は、所有権だけでなく、登記簿全体を確認して権利関係を整理することが重要です。

5-2 抵当権などの登記

過去の住宅ローンなどによる「抵当権」が登記簿に残っていないか確認します。

借入をすでに完済していても、抵当権の抹消登記をしていなければ、登記簿上は抵当権が残ったままです。

金融機関から受け取った抹消関係書類をそのまま保管しているケースもあるため、相続した不動産を売却する際には早めに確認し、決済・引渡しまでに抹消登記を行う必要があります。

5-3 共有持分

自身が所有する「共有持分」だけを第三者に売却することは、法的には可能です。ただし、共有持分を購入した人は不動産全体を自由に利用・処分できるわけではないため、一般の買主は限られます。

そのため、共有持分のみを売却する場合は、通常の不動産売却と比べて売却価格が低くなる傾向があります。

5-4 借地権・賃借権

借地権を第三者に譲渡する場合、原則として地主の承諾が必要です。

地主から譲渡の承諾を得る際には、契約内容によって名義書換料などの承諾料が発生することがあります。

地主が承諾しない場合でも、一定の要件を満たせば、裁判所に譲渡の許可を求めることができる場合があります。

そのため、借地上の建物や借地権を相続して売却する場合は、地主との契約内容や承諾の可否を事前に確認することが重要です。

5-5 地上権などの権利

送電線の通過に関する区分地上権や、他人の通行などのために設定された地役権がないか確認します。

これらの権利が設定されている場合、土地の利用方法や建築に制限が生じることがあります。

相続した不動産を売却する際には、登記簿だけでなく、これらの権利の内容や範囲も確認しておくことが重要です。

5-6 第三者が使用している場合

登記簿だけでは分からない問題として、「隣人が駐車場として使用している」「第三者の資材が置かれている」といったケースがあります。

その使用が無償の使用貸借なのか、賃料を伴う賃貸借なのかによって、売却時の対応も変わります。

そのため、相続不動産を売却する際には、登記簿の確認だけでなく、現地を確認し、誰がどのような権限で使用しているのかを確認することが重要です。

6.「古い家だから売れない」と決めつけない

相続した実家や戸建ての築年数が古いからといって、無計画に多額の費用をかけて解体するのは得策ではありません。

建物の状態や敷地の法的な制限によっては、古家を残したまま売却した方が手残りが多くなる、あるいはトラブルを防げるケースが存在します。

6-1 築年数だけで売却の可否は決まらない

築50年以上の古い木造住宅であっても、築年数だけを理由に「すぐに解体すべき」とは限りません。

柱や梁などの状態、建物の特徴、立地によっては、リノベーションや古民家としての活用を希望する買主が見つかる可能性があります。

そのため、古家付きの相続不動産を売却する場合は、建物を解体して土地として売る方法だけでなく、建物を残したまま売却する可能性も含めて検討することが大切です。

6-2 建物を解体した方がいいとは限らない

古い建物だからといって、必ずしも解体して更地にする必要はありません。

建物の解体にはまとまった費用がかかるうえ、住宅を解体して更地にすると、原則として住宅用地の特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が大きく上がる可能性があります。

特に、1月1日時点で建物があるかどうかは、その年度の固定資産税に影響するため、解体時期にも注意が必要です。

そのため、解体してから売却するのか、建物を残したまま売却するのかを、費用や税負担も含めて検討することが重要です。

6-3 土地としての価値を確認する

古い建物の価値が低くても、土地そのものに十分な市場価値がある場合があります。

買主が建替えを前提としている場合は、土地の面積や形状、接道状況、日当たり、周辺環境などが価格を左右します。

そのため、古家付き不動産を売却する際は、建物だけで判断せず、土地としての価値もしっかり確認することが重要です。

6-4 建物を残すことに意味があるケース

建築基準法の接道義務を満たしていないなど、再建築が難しい不動産では、建物を解体すると新たに建物を建てられなくなる場合があります。

そのため、このような物件では、古い建物を残し、リフォームやリノベーションを前提とした物件として売却する方法もあります。

解体する前に、再建築の可否や建物の状態を確認し、建物を残す場合と解体する場合のそれぞれのメリット・デメリットを比較することが重要です。

6-5 古家付き土地として売却する方法

相続した築年数の古い建物を解体せず「古家付き土地」として現況のまま売却する方法があります。

契約内容によっては、建物について契約不適合責任の範囲を限定したり、免責とする特約を設けたりすることもあります。

ただし、免責特約があればすべての責任を免れるわけではないため、建物の状態や契約内容を明確にしたうえで、買主に十分説明することが重要です。

建物を残すことで、買主がリフォーム・リノベーションするのか、解体して建て替えるのかを選択できる場合もあります。

7.相続不動産が「売れにくい」代表的なケース

相続した実家が、一般的なマイホーム市場で敬遠されてしまうのには明確な理由があります。

再建築不可などの法規制から、私道トラブル、境界未確定、残置物問題まで、売却のハードルとなる典型的な阻害要因を列挙します。

7-1 再建築不可: 建築基準法上の道路に2m以上接していない等

建築基準法上の道路に敷地が2m以上接していないなど、現在の建物を解体すると、新たに建物を建築できない可能性がある不動産です。

建物が存在しているからといって、必ずしも建替えができるとは限らないため、不動産の売却前に接道状況や建築基準法上の扱いを確認する必要があります。

7-2 接道に問題がある:セットバック(道路中心線から2mの後退)が必要で有効面積が大幅に減る。

建築基準法上の接道義務を満たしていても、道路と敷地の高低差が大きく、擁壁の改修や再設置が必要になる場合があります。

また、前面道路が幅員4m未満の2項道路などでは、セットバックが必要となり、後退した部分を建築敷地として利用できないため、有効な敷地面積が減少することがあります。

このような土地では、建築費や造成費などの負担が大きくなり、売却価格にも影響する場合があります。

7-3 私道の権利関係が複雑: 前面道路が私道であり、自らの所有権や持分が一切ない。

前面道路が私道で、自分の所有権や共有持分を持っていないケースです。

この場合、通行や上下水道管の引込み・掘削などについて、私道所有者の承諾が必要になることがあります。

そのため、売却する際には、私道の所有関係だけでなく、通行・掘削に関する権利や承諾の有無まで確認することが重要です。

7-4 私道共有者が多数いる: 開発分譲地などで数十人規模の共有者がいる

開発分譲地などでは、前面道路が位置指定道路となっており、その私道を数十人規模で共有しているケースがあります。

私道の共有者が多い場合、通行や上下水道管の引込み・掘削などに関する権利関係の確認や、必要な承諾の取得に時間がかかることがあります。

特に、相続などによって共有者がさらに増えている場合は、現在の共有者を把握するだけでも容易ではありません。

不動産を売却する際には、私道の共有持分があるかだけでなく、誰が共有者なのか、通行・掘削に関する取り決めや承諾が整っているのかまで確認しておくことが重要です。

7-5 通行・掘削承諾が問題になる: 上下水道管の引き込み等で私道を掘削する際、私道所有者全員からハンコ(承諾書)をもらう

私道に面した不動産では、上下水道管やガス管などを引き込むために、私道を掘削する必要が生じることがあります。

この場合、私道の所有関係や既存の契約・取り決めなどによっては、私道所有者から通行・掘削に関する承諾を得る必要があります。

特に、私道を数十人で共有しているようなケースでは、承諾が必要な範囲や相手方の確認だけでも時間がかかり、共有者の中に反対する人がいることで、工事の調整が難しくなることもあります。

そのため、不動産の売却前には「私道だから大丈夫」と考えるのではなく、通行・掘削に関する権利や過去の承諾書、契約書などを確認しておくことが重要です。

7-6 境界が確定していない: 隣地との境界線が曖昧で、確定測量が行われていない。

相続した不動産を売却する場合に隣地との境界が明確になっておらず、確定測量が必要となります。

隣地との境界が確定していないと、実際の土地の面積や境界位置が明確でないため、売却時に買主から確定測量を求められることがあります。

また、隣地所有者との境界確認が必要になるため、隣地との関係によっては測量や境界確認に時間がかかる場合があります。

特に相続した不動産では、長年にわたって境界を確認していないケースもあるため、売却を考えた段階で、境界標の有無や過去の測量資料などを確認しておくことが重要です。

7-7 越境している: 屋根や雨どい、樹木の枝、地中の配管などが隣地へはみ出している

屋根や雨どい、樹木の枝、地中の配管などが隣地との境界を越えている不動産です。

越境している状態のままでは、売却時に買主から是正を求められたり、隣地所有者との間で対応方法を確認する必要が生じたりすることがあります。

2023年4月の民法改正により、一定の条件のもとで、隣地から越境した竹木の枝を自ら切り取ることができるようになるなど、枝の越境に関するルールは見直されました。

ただし、屋根や雨どい、配管などの越境まで自動的に解決するわけではありません。越境の内容を確認し、必要に応じて隣地所有者との合意や是正方法を整理しておくことが、売却時のトラブル防止につながります。

7-8 隣地に土地を占有されている: 隣家の建物や工作物が自らの敷地に入り込んでいる。

隣家の建物や塀、物置などが、自分の所有する土地に入り込んでいるケースです。

単なる一時的な越境ではなく、隣地の建物や工作物が土地の一部を継続的に占有している場合、売却時に買主から問題を指摘されることがあります。

また、占有されている範囲や経緯によっては、境界の確認だけでなく、所有権や時効取得などの権利関係が問題になる可能性もあります。

そのため、売却前にはどの部分がどの程度占有されているのか、いつからどのような経緯で占有されているのかを確認し、必要に応じて隣地所有者との関係を整理しておくことが重要です。

7-9 底地: 土地を他人に貸しており、地代収入が固定資産税スレスレなど収益性が極めて低い。

土地を他人に貸しており、その土地を利用する権利(借地権)が第三者にある状態の土地です。

底地は、所有者が自由に土地を利用できない一方で、地代収入を得られるという特徴があります。

しかし、地代が低く、固定資産税などの負担を考えると収益性がほとんどないケースもあります。

また、借地人との契約内容や土地の利用状況によっては、売却後の利用方法も限られるため、更地のように土地そのものの価値だけで評価することが難しい不動産です。

売却する際には、地代や契約期間、更新状況、借地人との関係などを確認したうえで、底地としての評価を検討する必要があります。

7-10 借地権: 地主との関係性が悪化しており、譲渡承諾が得られない。

土地を借りて建物を所有している不動産で、地主との関係が悪化しているなどの理由から、借地権の譲渡について地主の承諾を得ることが難しいケースです。

借地権を第三者に譲渡する場合、原則として地主の承諾が問題となります。承諾が得られない場合でも、一定の条件のもとで裁判所に許可を求めることができる場合があります。

また、地主から承諾を得る際に、承諾料などの条件が提示されることもあります。

そのため、借地権を売却する場合は、借地契約の内容だけでなく、地主との関係や過去の経緯、譲渡承諾の見込みまで確認することが重要です。

7-11 ゴミ屋敷: 不用品やゴミが堆積しており、床下のシロアリ被害などの物理的調査すら困難

室内に不用品やゴミが大量に堆積し、建物内部の状態を十分に確認できない不動産です。

荷物が多いと、床や壁、天井などの状態を確認できないだけでなく、床下のシロアリ被害や腐食、雨漏りによる劣化など、建物の重要な部分まで調査できないことがあります。

そのため、買主にとって建物の状態を判断しにくく、通常の中古住宅とは異なる評価になる場合があります。

不動産を売却する際には、単純にゴミを撤去するだけでなく、建物の状態をどこまで確認できるか、撤去費用や修繕の必要性も含めて売却方法を検討することが重要です。

7-12 残置物が大量にある: 仏壇や長年の生活用品がそのまま放置されている

相続した実家などで、仏壇や家具、家電、衣類、日用品など、長年の生活用品がそのまま残されている不動産です。

残置物が多いと、建物内部の状態を確認しにくくなるだけでなく、売却前に整理・処分する必要が生じることがあります。

特に仏壇や故人の遺品などは、単純に処分すればよいとは限らず、親族間で処分方法を確認したり、必要に応じて供養を行ったりすることもあります。

また、残置物の量によっては、整理・搬出・処分に相当な費用がかかる場合があります。そのため、不動産そのものの価格だけでなく、残置物の整理にかかる費用や手間も考慮して売却方法を検討することが重要です。

7-13 建物が老朽化している: 雨漏りによる構造部の腐朽や、建物自体が傾斜している

築年数が古く、雨漏りや長期間の劣化によって、柱や梁などの構造部が腐朽している建物です。

また、建物自体が傾いている場合には、単なる内装や設備の修繕だけでは対応できず、構造部分の補修や大規模な改修が必要になることがあります。

このような建物では、買主が修繕費用や解体費用を見込む必要があるため、一般的な中古住宅とは異なる評価になる場合があります。

そのため、築年数だけで判断せず、雨漏りの有無や構造部の劣化、建物の傾きなど、現在の状態を確認したうえで売却方法を検討することが重要です。

7-13 建物が老朽化している: 雨漏りによる構造部の腐朽や、建物自体が傾斜している

長年の雨漏りなどによって、柱や梁などの構造部が腐朽していたり、建物自体が傾いていたりするケースです。

単なる内装や設備の劣化とは異なり、修繕や補強に大きな費用がかかる場合があります。

そのため、築年数だけで判断するのではなく、雨漏りの状況や構造部の劣化、建物の傾きなど、現在の状態を確認したうえで売却方法を検討することが重要です。

7-14 空き家の管理状態が悪い: 庭木が越境し、スズメバチの巣が発生するなど近隣クレームに発展している

長期間にわたって空き家の管理がされておらず、庭木が伸びて隣地へ越境したり、雑草が繁茂したりしているケースです。

また、害虫や害獣が発生したり、スズメバチの巣ができたりすることで、近隣から苦情や対応を求められることもあります。

管理状態が悪い空き家では、売却を検討する段階で庭木の剪定や除草、害虫・害獣への対応などが必要になる場合があります。

そのため、不動産の状態だけでなく、近隣からどのような指摘を受けているのか、管理上の問題が残っていないかも確認しておくことが重要です。

7-15 遠方にあるため管理できない: 実家が地方にあり、交通費と時間がかかるため放置状態になっている。

相続した実家などが遠方にあり、現地へ行くための交通費や時間が負担となり、十分な管理ができないケースです。

庭木の剪定や建物の換気、郵便物の確認など、空き家を維持するためには定期的な管理が必要になります。

しかし、遠方に住んでいる相続人にとっては、こうした管理を継続することが難しく、結果として空き家が放置状態になってしまうことがあります。

そのため、自分で管理することが難しい場合は、管理を委託する方法や、早い段階で売却を検討するなど、将来的な負担まで考えて対応することが重要です。

8.相続した不動産が「売れない」と言われたら?

相続した不動産が大手不動産会社や地元の不動産会社に査定を断られたとしても、それは「その会社が扱うには手間がかかりすぎる」という理由に過ぎないことが多々あります。

不動産売却をするにあたって困難な要因を1つずつ法的に整理し、適切な売却ルートを見つけ出すためのアプローチを紹介します。

8-1 本当に売れない不動産なのか

不動産会社から「当社では取り扱いできません」と断られたからといって、その不動産に価値がないとは限りません。

再建築不可、複雑な権利関係、私道の問題、境界未確定など、一般的な不動産とは異なる調査や交渉が必要な物件では、会社によって対応できる範囲が異なります。

そのため、「売れない」のではなく、「その会社では取り扱うことが難しい」だけというケースもあります。

1社に断られただけで売却を諦めるのではなく、物件の問題点を整理したうえで、そのような不動産を取り扱った経験のある会社に相談してみることも一つの方法です。

8-2 「売れない」と「一般市場では売りにくい」は違う

「売れない不動産」と「一般市場では売りにくい不動産」は同じではありません。

例えば、住宅ローンを利用してマイホームを購入する一般の個人にとっては条件が合わない不動産でも、現金で購入する投資家や、隣接する土地を取得したい隣地所有者などにとっては、購入する意味がある場合があります。

また、物件の問題点を把握したうえで、再生や活用を検討できる専門の不動産会社が買主となるケースもあります。

つまり、一般の住宅市場では売りにくくても、買主を変えることで売却できる可能性があります。

大切なのは、「誰にでも売れる物件か」ではなく、その不動産を必要とする買主がどこにいるのかを考えることです。

8-3 なぜ不動産会社が取り扱いを断るのか

複雑な権利関係の調整や、役所との協議、私道に関する承諾の確認などが必要な不動産では、売却までに多くの時間と手間がかかることがあります。

例えば、市街化調整区域の不動産では都市計画法上の許可関係を確認したり、私道の共有者が多数いる物件では、通行・掘削に関する権利関係を整理したりする必要があります。

一方、仲介手数料は売買価格に応じて上限が定められているため、売却価格が低いにもかかわらず調査や交渉に多くの時間を要する物件では、通常の仲介業務として採算が合いにくい場合があります。

そのため、「価値がないから断る」のではなく、必要となる調査や調整に対して、通常の仲介業務では対応が難しいという理由で取り扱いを断られるケースもあります。

8-4 問題点を整理すると売却方法が見つかる場合がある

売却が難しい不動産でも、何が問題になっているのかを一つずつ整理することで、売却方法が見つかる場合があります。

例えば、接道に問題がある土地であれば、隣地の一部を取得したり、状況によっては借りたりすることで、接道条件を改善できる可能性があります。

また、私道の権利関係が複雑な場合でも、関係者と協議を行い、通行や掘削などについて合意書や覚書を取り交わすことで、将来の利用や売却に向けた条件を整理できることがあります。

このように、「売れない理由」をそのままにするのではなく、阻害要因を一つずつ確認し、解決できる問題と解決が難しい問題を切り分けることが重要です。

こうした整理によって買主の選択肢が広がり、これまで売却が難しいと考えられていた不動産でも、取引につながる可能性があります。

8-5 価格を下げるだけが解決策ではない

売却が難しい不動産では、「価格を下げれば売れる」と考えてしまいがちです。

しかし、境界が確定していない、再建築に制限がある、私道の権利関係が複雑など、買主が将来のトラブルを懸念する問題を抱えている場合、価格を下げるだけでは購入につながらないことがあります。

大切なのは、まず何が問題なのかを明確にし、解決できる問題と解決が難しい問題を整理することです。

そのうえで、必要に応じて境界や権利関係を整理したり、契約内容や契約不適合責任の範囲を明確にしたりするなど、買主が判断しやすい取引条件を整えていきます。

価格を下げることは一つの方法ですが、価格を調整する前に、不動産が抱えている問題を整理することが売却への近道になる場合があります。

9.相続不動産の査定で注意したいこと

不動産会社から提示された高い査定額が、そのまま確実に売れる金額とは限りません。

権利関係の制限や法的な瑕疵、解体・測量費用など、相続不動産特有のマイナス要因がどのように価格に反映されるべきか、冷静な視点での見極め方を解説します。

9-1 査定価格=売却できる価格ではない

不動産会社から提示される査定価格は、必ずしも「その価格で売れること」を保証するものではありません。

仲介の場合、査定価格は周辺の取引事例や物件の状態、市場動向などをもとに、「この条件で売り出せば、一定期間内に売却できる可能性がある」と不動産会社が判断した価格です。

そのため、査定額が高いからといって、その金額で実際に売却できるとは限りません。

特に、再建築不可や境界問題、複雑な権利関係などを抱える不動産では、査定価格と実際の成約価格に差が生じることがあります。

また、仲介の査定価格と、不動産会社が自ら購入する買取価格はまったく別のものです。

査定額だけを比較するのではなく、「その価格で本当に買主が見つかるのか」「どのような根拠でその価格になっているのか」まで確認することが重要です。

9-2 権利関係によって価格は変わる

不動産の価格は、土地や建物の状態だけでなく、どのような権利関係になっているかによっても大きく変わります。

例えば借地権付きの建物では、土地の所有権そのものを取得するわけではないため、更地の所有権価格とは異なる評価になります。借地権割合が更地価格の6~7割程度とされる地域もありますが、これはあくまで評価上の一つの目安であり、実際の売却価格が一律に決まるものではありません。

また、共有持分だけを売却する場合は、買主が自由に不動産全体を利用できないため、単独所有の不動産とは異なる評価になります。

このように、権利の種類や内容、利用上の制約、他の権利者との関係によって、不動産の評価や売却価格は大きく変わります。

9-3 再建築の可否

不動産の評価では、現在建物が建っているかだけでなく、将来その建物を建て替えられるかどうかも重要なポイントになります。

建築基準法上の接道義務を満たしていないなど、再建築が難しい物件では、住宅ローンの利用が難しくなる場合があり、購入できる人が限られることがあります。

その結果、通常の再建築可能な物件と比べて価格が低くなる傾向があります。ただし、価格が相場の何割になるかは、立地や土地の広さ、建物の状態、再建築できない理由などによって大きく異なります。

また、建築基準法第43条の認定・許可などによって建築が可能となる場合もあるため、単純に「再建築不可」と判断するのではなく、なぜ再建築できないのか、将来的に建築できる可能性がないのかを確認することが重要です。

9-4 私道・接道条件

不動産が接している前面道路が私道の場合には、その私道の共有持分があるかどうかだけでなく、通行や上下水道管などの引込み・掘削に関する権利や承諾の状況も重要になります。

私道の持分がない、通行・掘削に関する承諾が確認できない、過去の取り決めが不明確といった場合には、将来の建替えや配管工事などの際に追加の調整や費用が発生する可能性があります。

こうした不確実性は買主の負担やリスクとして考慮され、査定価格や売却価格に影響する場合があります。

そのため、私道に面した不動産では、接道状況だけでなく、私道の所有関係、通行・掘削に関する権利や承諾、過去の取り決めなどを確認したうえで評価することが重要です。

9-5 境界・越境

境界が明確でない不動産では、売買方法によって売主・買主の費用負担や、将来的なトラブルリスクが変わります。

例えば、登記簿上の面積を基準として売買する公簿売買と、土地家屋調査士などによる測量を行い、実際の面積を確認したうえで売買する実測売買があります。

確定測量を行う場合には、測量費用だけでなく、隣地所有者との境界確認や境界標の設置などが必要になることもあります。

一方、公簿売買では測量費用を抑えられる反面、実際の面積や境界について後から問題になる可能性があります。

そのため、測量にかかる費用だけで判断するのではなく、土地の状況や買主の希望、越境の有無などを踏まえて、どのような売買方法が適しているかを検討することが重要です。

9-6 賃借人・借地人の存在

不動産に賃借人や借地人がいる場合、その存在が売却価格や売却方法に影響することがあります。

例えば、賃借人に退去してもらってから売却する場合には、契約内容や退去交渉の状況によっては、立退料などの費用が発生することがあります。

一方、賃借人が入居したまま、賃料収入を得られる収益物件として売却する方法もあります。この場合は、現在の賃料や入居状況、将来の収益性などをもとに、収益還元法などによって評価されることがあります。

このように、「退去してもらってから売る」のか「賃貸中のまま売る」のかによって、想定する買主や価格の考え方が大きく変わります。

そのため、賃貸借契約の内容や賃料、入居状況などを確認したうえで、どの売却方法が適しているのかを検討することが重要です。

9-7 建物解体費用

古家付きの不動産では、更地にして引き渡すのか、建物を残したまま売却するのかによって、売却価格や手取り額が変わります。

更地引き渡しを条件とする場合、建物の構造や規模だけでなく、アスベスト含有建材の有無、残置物の量、前面道路の幅員、重機の搬入が可能かどうかなどによって、解体費用が大きく変わることがあります。

特に前面道路が狭い、敷地への進入路が狭いなどのケースでは、重機を使用できず、人力による解体作業が増えることで費用が高くなる場合があります。

そのため、解体費用を単純に「坪単価」だけで判断するのではなく、現地の状況を確認したうえで費用を見積もり、建物を残して売却する場合と比較することが重要です。

9-8 残置物処分費用

相続した不動産などでは、家具や家電、衣類、日用品などの残置物が大量に残っていることがあります。

残置物を売主側で処分してから引き渡す場合には、搬出・運搬・処分などの費用が発生します。量が多く、トラック数台分になるようなケースでは、処分費用が数十万円に及ぶこともあります。

また、残置物の処分方法には自治体のルールなどがあるため、適切な方法で処分する必要があります。

そのため、不動産の売却価格だけを見るのではなく、残置物の整理・処分にかかる費用も含めて、最終的な手取り額を考えることが重要です。

残置物をすべて処分してから売却する方法だけでなく、買主側で処分する条件で売却できる場合もあるため、物件の状況に応じて売却方法を検討することが大切です。

10.相続した不動産は「売却」と「保有」のどちらがいい?

相続した不動産を売却するか、そのまま保有するかは、不動産の価値だけでなく、今後の利用予定や管理負担、維持費などを含めて判断する必要があります。

売却を検討した方がいいケース

◎ 今後、自分や親族が利用する予定がない
◎ 遠方にあり、通風・通水・庭木の管理などを継続することが難しい
◎ 固定資産税や修繕費、管理費などの負担が大きい
◎ 建物の老朽化や不法投棄など、所有し続けることによるリスクが気になる
◎ 相続人が複数おり、不動産を売却して現金化し、遺産を分けたい(換価分割)

保有を検討してもよいケース

◎ 将来的に自分や親族が居住するなど、具体的な利用予定がある
◎ リフォーム・リノベーションなどを行い、賃貸事業として収益が見込める
◎ 共有者全員が、今後の利用方法や費用負担などについて合意できている

不動産は、所有しているだけでも固定資産税や維持管理費などの負担が発生します。遠方の空き家であれば、現地へ行くための時間や交通費、管理を依頼する費用なども考えなければなりません。

そのため、「せっかく相続したから」「いつか使うかもしれない」という理由だけで保有を続けるのではなく、今後どのように活用するのか、そのためにどれだけの費用や手間が必要なのかを考えることが大切です。

明確な利用予定がなく、維持する負担が大きいのであれば、早い段階から売却を含めた選択肢を検討しておくことで、将来的な負担を減らせる場合があります。

11.相続した不動産を売却するときの税金

不動産を売却して利益が出た場合、多額の譲渡所得税が発生する可能性があります。

手元に残る金額を最大化するために知っておくべき税金計算の基本と、要件を満たせば利用できる強力な特別控除や特例について解説します。

11-1 譲渡所得税

相続した不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合、その利益に対して所得税・住民税が課税されます。

譲渡所得は、単純に「売却価格-相続したときの評価額」で計算するものではありません。基本的には、売却代金から取得費や売却にかかった仲介手数料などの譲渡費用を差し引いて計算します。

そのため、売却代金の全額に対して税金がかかるわけではありません。

また、相続不動産では、亡くなった方が取得した当時の資料が残っておらず、取得費を確認できないケースもあります。取得費が分からない場合には、一定の方法で計算することになるため、売却前に確認しておくことが重要です。

11-2 相続した不動産の取得費

相続した不動産を売却する場合、譲渡所得を計算する際の取得費は、原則として被相続人がその不動産を取得したときの購入代金や購入時の諸費用などを引き継ぎます。

つまり、相続した時点の不動産価格が、そのまま取得費になるわけではありません。

例えば、親が過去に2,000万円で購入した不動産を相続し、その後3,000万円で売却した場合、原則として親が取得した際の購入代金などをもとに譲渡所得を計算します。

ただし、購入時の契約書や領収書などが残っておらず、被相続人の取得費を確認できない場合もあります。その場合には、不動産の売却価格の5%を取得費とする「概算取得費」を使用できる場合があります。

そのため、相続した不動産を売却する前に、被相続人が購入したときの売買契約書や領収書などが残っていないか確認しておくことが重要です。

11-3 取得費が分からない場合

先祖代々の土地などで、売買契約書や領収書が残っておらず、取得費が分からない場合があります。

実際の取得費を確認できない場合は、原則として売却価格の5%を概算取得費として計算する方法があります。

例えば5,000万円で売却した場合、概算取得費は250万円となります。取得費が少なく計算されるため、譲渡所得が大きくなり、税負担が増える可能性があります。

そのため、相続した不動産を売却する際には、古い売買契約書や領収書など、取得費を確認できる資料が残っていないか、早めに確認しておくことが重要です。

11-4 相続税を取得費に加算できる場合

相続税を納付した人が、相続した不動産を相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却した場合、一定の条件を満たせば、納付した相続税の一部を不動産の取得費に加算できる「取得費加算の特例」を利用できる場合があります。

取得費が増えることで譲渡所得が小さくなり、結果として譲渡所得税などの負担を軽減できる可能性があります。

相続税を納付している場合は、売却時期によって適用できるかどうかが変わるため、売却を検討する段階で確認しておくことが重要です。

11-5 空き家の3,000万円特別控除

相続した空き家が一定の要件を満たす場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。

対象となる家屋は、原則として昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、耐震基準を満たすための改修をして売却するか、家屋を取り壊して敷地を売却するなど、一定の要件を満たす必要があります。

なお、令和6年以降の譲渡で、相続人が3人以上の場合は、特別控除額が2,000万円となります。

適用には細かな要件があるため、相続した実家を売却する場合は、売却前にこの特例が利用できるか確認しておくことが重要です。

11-6 売却時期による違い

不動産を売却した場合、所有期間によって譲渡所得にかかる税率が変わります。相続した不動産は、原則として被相続人の所有期間を引き継いで判断します。

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」、5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、長期譲渡所得の方が税率は低くなります。

そのため、相続した不動産を売却する際には、相続した日だけでなく、被相続人が取得した時期も確認しておくことが重要です。

12.相続した不動産を売却する前に準備しておきたい資料

相続した不動産を売却する際は、権利関係や建物の状態などを確認するため、さまざまな資料が必要になります。

ただし、最初からすべての資料を揃える必要はありません。 手元にあるものだけでも構いませんので、できる範囲で確認しておくと、相談や査定がスムーズになります。

◎ 登記事項証明書(登記簿謄本)
所有者や抵当権などの権利関係を確認できます。

◎ 権利証(登記済証)・登記識別情報通知
所有権に関する重要な資料です。

◎ 固定資産税納税通知書・課税明細書
土地・建物の所在地や評価額などを確認できます。

◎ 固定資産評価証明書
固定資産税評価額を確認する際に使用します。

◎ 相続関係資料
戸籍類や法定相続情報一覧図など、相続人を確認するための資料です。

◎ 遺産分割協議書
不動産を誰が相続することになったのかを確認できます。

◎ 建築確認関係資料
建築確認済証や検査済証など。建物の建築時期や建築確認の状況を確認する資料になります。

◎ 公図・地積測量図
土地の位置や形状、面積などを確認する資料です。

◎ 私道関係資料・境界確認書
私道の権利関係や、隣地との境界について確認するための資料です。

◎ 賃貸借契約書など
賃貸中の不動産であれば、賃貸借契約の内容を確認します。

資料が不足していても、相談できないわけではありません。まずは手元にある資料を確認し、不明な点や不足している資料を整理するところから始めることが大切です。

13.遠方に住んでいても相続不動産は売却できる?

地方にある実家を相続した場合でも、所有者が何度も現地に足を運ぶ必要はありません。

現在の不動産取引では、オンライン手続きや現地の専門家との連携により、遠隔地からでも安全かつ確実に売却を完了させる仕組みが整っています。

13-1 遠方だから売却できないわけではない

相続した不動産が県外や遠方にあっても、現地へ何度も足を運ばなければ売却できないわけではありません。

不動産会社との相談や書類のやり取りなどは、郵送や電話、オンラインなどを利用して進められる場合があります。

ただし、現地確認や境界、建物の状態など、実際に現地で確認する必要がある事項もあります。そのため、遠方の不動産を売却する場合は、現地対応をどこまで依頼できるのかも含めて相談することが大切です。

13-2 現地確認をどうするか

遠方の不動産を売却する場合、現地確認や役所調査、内覧の立ち会いなどを、物件所在地の地域事情に詳しい不動産会社に依頼する方法があります。

すべてを任せられるとは限りませんが、現地での確認や買主との調整などを依頼できれば、所有者が何度も現地へ足を運ぶ負担を減らすことができます。

特に、相続した実家など、現在の所有者が現地の状況を把握していない不動産では、現地調査をどこまで依頼できるかを事前に確認しておくことが大切です。

13-3 空き家管理

不動産の売却活動中も、空き家の管理は必要です。庭木の剪定や草刈り、室内の換気、通水、郵便物の確認などを定期的に行う必要があります。

遠方に住んでいて自分で管理することが難しい場合は、現地の空き家管理サービスや、売却を依頼した不動産会社に管理を依頼できる場合があります。

売却を依頼する際には、売却活動だけでなく、売却期間中の空き家管理についても相談しておくと安心です。

13-4 残置物

室内に家具や家電、日用品などが残されている場合は、現地の不用品処分業者などに見積もりを依頼し、撤去を委託することができます。

遠方に住んでいて立ち会いが難しい場合は、不動産会社を通じて鍵の受け渡しを調整し、作業前後の写真などで完了報告を受ける方法もあります。

ただし、遺品や貴重品、処分してよいか判断できない物が残っている場合は、事前に確認しておくことが大切です。

13-5 売却後の手続き

現在では、IT重説(オンラインによる重要事項説明)や郵送による書類のやり取り、司法書士による本人確認などを利用して、所有者が現地へ行かずに売買契約から決済・引き渡しまで進められるケースもあります。

ただし、本人確認の方法や契約・決済の進め方は、取引内容や関係者によって異なります。

遠方に住んでいる場合は、売却を依頼する段階で、どこまで現地へ行かずに手続きを進められるのか確認しておくとよいでしょう。

14.相続不動産の売却で「最初に相談する相手」は誰なのか?

相続不動産は、相続登記、税金、権利関係、建物や境界など、複数の問題が同時に関係することがあります。そのため、最初に誰へ相談するかによって、その後の進め方が変わることがあります。

◎ 司法書士: 相続登記や相続関係の登記手続き

◎ 税理士: 相続税や譲渡所得税、各種特例の確認

◎ 宅建業者(不動産会社): 不動産の調査・査定、売却方法の検討、買主との調整

◎ 弁護士: 相続人間の争いや、地主・隣地所有者などとの法的な紛争

◎ 土地家屋調査士: 境界の確定測量や土地・建物の表示に関する登記

例えば、相続人同士で争いがある場合は弁護士、相続登記が進んでいない場合は司法書士、売却価格や売却方法を知りたい場合は不動産会社というように、問題に応じて相談先を選ぶことが基本です。

一方で、どこに相談すればよいのか分からない相続不動産も少なくありません。 そのような場合には、不動産の問題を整理したうえで、必要に応じて弁護士、司法書士、税理士、土地家屋調査士などにつなげられる不動産会社に相談する方法もあります。

大切なのは、一つの専門家だけですべてを解決しようとするのではなく、不動産の問題を整理し、必要な専門家と連携しながら進めることです。

15.筆者の見解

不動産会社に「売れない」「取り扱いが難しい」と言われた不動産ほど、まずは「なぜ売れないのか(どのような問題が整理されていないのか)」を正確に把握することが大切です。

実際の現場では、「接道していない」「市街化調整区域で再建築のハードルが高い」「私道の権利関係が複雑(共有者が数十人いるなど)」「境界が不明確」「残置物が溢れている」といった要因が複雑に絡み合っているケースに頻繁に直面します。

こうした場合、単に「価格を下げて売りに出す」のではなく、以下の現実的なステップを踏むことが重要です。

◎ 問題を把握する(行政調査、現況の権利関係の洗い出し)

◎ 解決可能か判断する(隣地との協議、法的手続きの要否の検討)

◎ 解決方法を検討し実行する(承諾書の取得、測量、越境解消など)

◎ 解決できない場合は、その条件を前提とした売却方法を考える

すべての問題が完全にクリアになるわけではありません。

物理的・法的に解決が極めて困難な案件も現実に存在します。

しかし、「問題が残っていること」を明確にし、それを契約条件に落とし込む(免責事項とする、専門の買取業者に委ねるなど)ことで、安全に不動産を手放す道筋は見えてきます。

「問題の整理と適切な現状把握」こそが、難ありと言われる不動産を流通させるための最大の鍵となります。

16.相続した不動産を売却するときに大切なのは「価格」だけではない

ここまで解説してきたように、相続した不動産を売却する際には、価格だけでなく、次のような点を確認することが重要です。

◎ 売却できる状態なのか(相続登記や法的な問題など)

◎ 誰が売主になるのか(相続人の確定、遺産分割など)

◎ 権利関係は整理されているか(抵当権、私道、境界など)

◎ 法的な制限はないか(再建築の可否、都市計画法上の制限など)

◎ 買主が利用できる不動産なのか(解体、リフォーム・リノベーションなど)

◎ 売却にどのような費用や税金がかかるのか

相続不動産の売却では、単純に「一番高い査定額」を選べばよいとは限りません。

問題点を事前に整理し、売主・買主双方が納得できる条件を整えたうえで、将来のトラブルをできるだけ残さずに売却すること。

それが、結果として売主自身の大切な資産と、その後の生活を守ることにつながります。

Q&A(よくある質問)

Q1. 相続した不動産はすぐに売却できますか?

ただし、実際に売却するためには、誰が不動産を相続するのかを確定させる必要があります。

遺産分割協議などによって相続人を確定し、決済・引き渡しまでには、原則として相続登記を完了させておく必要があります。

Q2.相続登記前でも売却できますか?

A.相続登記が完了していなくても、遺産分割協議などによって相続人が確定していれば、売却活動や契約を進められる場合があります。

ただし、決済・引き渡しまでに相続登記を完了させる必要があるため、契約書にその期限や条件を定めて取引を進めることになります。相続登記が間に合わないと、決済・引き渡しに影響する可能性があるため、早めに手続きを進めることが重要です。

Q3.相続人が複数いる場合は売却できますか?

A.はい、売却できます。

遺産分割協議によって相続人のうち1名が不動産を取得して売却する方法や、複数の相続人が共有名義で相続し、共有者全員で売却する方法があります。

共有名義で売却する場合は、原則として共有者全員の意思確認が必要となり、契約や決済では実印・印鑑証明書などの書類が必要になることがあります。

相続人が複数いる場合は、将来の売却手続きまで考えて、どのように相続するのかを決めることが大切です。

Q4.相続した家が古くても売却できますか?

A.はい、古い家でも売却できる可能性があります。

建物を残したまま「古家付き土地」として売却する方法や、リフォーム・リノベーションを前提とした買主を探す方法があります。

また、契約内容によっては、建物の状態を踏まえて契約不適合責任の範囲を限定することもあります。

古いという理由だけで解体するのではなく、建物の状態や立地、再建築の可否などを確認したうえで、建物を残すのか解体するのかを判断することが大切です。

Q5.相続した家が再建築不可でも売却できますか?

A.はい、再建築が難しい不動産でも売却できる可能性があります。

再建築に制限があることで、住宅ローンの利用が難しくなったり、購入できる人が限られたりする場合があります。

一方で、既存の建物をリフォーム・リノベーションして利用したい人や、隣接する土地を取得したい隣地所有者など、購入を検討する人がいる場合もあります。また、物件によっては専門的に取り扱う不動産会社への売却という選択肢もあります。

まずは、なぜ再建築できないのかを確認したうえで、物件の状態や立地に合った売却方法を検討することが大切です。

Q6.相続した土地を隣人が使っている場合は?

A.まず、なぜ隣人がその土地を使用しているのかを確認することが重要です。

賃貸借契約があるのか、過去の口約束によるものなのか、単なる越境や無断使用なのかによって、対応方法が変わります。また、実際の境界と登記上の土地の位置関係を確認する必要がある場合もあります。

必要に応じて弁護士や土地家屋調査士などの専門家に相談し、権利関係や境界を整理したうえで売却方法を検討することが大切です。

Q7.私道の共有者が多い不動産でも売却できますか?

A.はい、売却できる可能性があります。

ただし、私道の所有関係や過去の取り決めなどによっては、上下水道管の引込み・掘削や通行について、私道所有者の承諾が必要になることがあります。

特に共有者が多数いる私道では、現在の共有者を確認したり、必要な承諾を得たりするだけでも時間がかかる場合があります。

そのため、私道の権利関係が複雑な不動産では、関係者との調整や必要な承諾の確認まで対応できる不動産会社に相談することが重要です。

Q8.ゴミ屋敷になった実家も売却できますか?

A.はい、売却できる可能性があります。

不動産の売却前に専門業者へ依頼して残置物を撤去し、通常の中古住宅や土地として売却する方法があります。

一方で、残置物を残したまま現況で専門の不動産会社などに売却し、整理や処分にかかる手間を減らす方法もあります。

どちらが適しているかは、建物の状態や残置物の量、売却価格、撤去費用などを比較して判断することが大切です。

Q9.遠方に住んでいても売却できますか?

A.はい、遠方に住んでいても売却できます。

現地の不動産会社に物件調査や空き家の管理、内覧対応などを依頼し、所有者は電話やオンライン、郵送などを利用して手続きを進めることができます。

また、IT重説や郵送による書類のやり取り、司法書士による本人確認などを利用することで、所有者が現地へ行かずに売却手続きを進められるケースもあります。

ただし、取引内容によって必要な手続きや現地対応は異なります。そのため、遠方の不動産を売却する場合は、どこまで現地対応を任せられるのかを、最初に不動産会社へ確認しておくことが大切です。

Q10.不動産会社に「売れない」と言われたらどうすればいいですか?

A.まずは、なぜ「売れない」のか、その理由を確認することが大切です。

不動産会社に「売れない」と言われたからといって、その不動産に価値がないとは限りません。権利関係、接道、境界、私道、再建築の可否など、一般的な不動産とは異なる問題があるため、その会社では取り扱いが難しいというケースもあります。

まずは、何が売却の障害になっているのかを整理すること。そのうえで、複雑な権利関係や問題を抱えた不動産の取り扱い経験がある不動産会社や、必要に応じて専門家と連携できる相談先に改めて相談してみることをおすすめします。

Q11.相続した不動産は解体してから売るべきですか?

A.必ずしも解体してから売却する必要はありません。

古い建物があるからといって、すぐに解体するのではなく、まずは建物を残したまま売却できる可能性を検討することが大切です。

特に、再建築に制限がある不動産では、建物を解体すると新たな建物を建築できなくなる可能性があるため、解体前に再建築の可否を確認することが重要です。

また、解体には費用がかかるほか、住宅用地の特例が適用されなくなることで、固定資産税などの負担が増える場合もあります。

解体するかどうかは、建物の状態、土地の利用価値、再建築の可否、解体費用、税負担などを総合的に確認したうえで判断しましょう。

Q12.相続した不動産を売却すると税金がかかりますか?

A.売却によって譲渡所得が生じた場合、所得税・住民税などが課税される可能性があります。

不動産を売却した時の譲渡所得は、単純に「売却価格-相続したときの価格」で計算するものではなく、被相続人から引き継いだ取得費や売却にかかった費用などをもとに計算します。

また、一定の要件を満たす場合には、**「空き家の3,000万円特別控除」や「相続税の取得費加算の特例」**などを利用でき、税負担を軽減できる場合があります。

ただし、これらの特例にはそれぞれ細かな適用要件や期限があります。相続した不動産を売却する場合は、売却前に税理士などの専門家へ確認しておくことが重要です。

専門用語解説

相続登記(そうぞくとうき)

亡くなった方が所有していた不動産について、相続によって所有権を取得した人の名義に変更するため、法務局で行う登記手続きです。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請することが原則として必要になりました。

遺産分割協議によって不動産を取得する人が決まった場合にも、その内容に応じて相続登記を行う必要があります。

遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)

亡くなった方(被相続人)が残した財産について、誰がどの財産を相続するのかを相続人全員で話し合い、合意することです。

不動産を特定の相続人が取得する場合には、遺産分割協議書を作成して、その内容を明確にしておくことが一般的です。

遺産分割協議を成立させるためには、原則として相続人全員の合意が必要です。また、不動産の相続登記などの手続きでは、遺産分割協議書に実印を押印し、印鑑証明書の提出を求められる場合があります。

共有持分(きょうゆうもちぶん)

1つの不動産を複数人で共同所有している場合に、それぞれの共有者が持っている所有権の割合のことです。

例えば、兄と弟が2分の1ずつ不動産を共有している場合、それぞれが「2分の1の共有持分」を持っていることになります。

共有持分だけを第三者に売却することもできますが、不動産全体を売却する場合には、原則として共有者全員の合意が必要になります。そのため、共有者同士の意見が合わない場合には、売却や利用の判断が難しくなることがあります。

再建築不可(さいけんちくふか)

建築基準法上の接道義務を満たしていないなどの理由により、現在建っている建物を解体すると、原則として新たな建物を建築することが難しい土地のことです。

ただし、接道状況や周辺の道路状況などによっては、建築基準法第43条の認定・許可などにより建築できる場合もあります。

そのため、「再建築不可」とされている不動産でも、なぜ再建築ができないのか、建築できる可能性がないのかを個別に確認することが重要です。

接道義務(せつどうぎむ)

建物を建築する敷地は、原則として建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければならないというルールです。

単に道路に接していればよいわけではなく、その道路が建築基準法上の道路として認められているか、敷地が必要な幅で接しているかなどを確認する必要があります。

接道義務を満たしていない場合、現在建物が建っていても、建替えや新築ができない可能性があります。ただし、一定の条件を満たして建築基準法第43条の認定・許可を受けられる場合もあるため、個別の確認が重要です。

私道(しどう)

国や地方自治体などが所有・管理する公道に対して、個人や法人などが所有権を持つ道路のことです。

私道であっても、建築基準法上の道路として扱われる場合があります。そのため、単に「私道だから建築できない」ということではありません。

一方で、通行や上下水道・ガス管などの引込み、掘削工事を行う際には、私道の所有関係や過去の契約・取り決めなどによって、所有者などの承諾が必要になる場合があります。

売却する際には、私道の所有者や共有持分だけでなく、通行・掘削に関する権利や承諾の有無まで確認することが重要です。

通行掘削承諾(つうこうくっさくしょうだく)

私道を通行することや、上下水道管・ガス管などの引込み、交換、修繕などのために私道を掘削することについて、私道所有者などから得る承諾のことです。

私道の所有関係や、これまでに結ばれた契約・取り決めなどによって、必要となる承諾の内容や範囲は異なります。承諾書や覚書などの書面で確認することもあります。

特に私道の共有者が多数いる不動産では、誰からどのような承諾を得る必要があるのかを事前に確認することが重要です。

越境(えっきょう)

建物の屋根や雨どい、ブロック塀、樹木の枝、地中の配管などが、土地の境界線を越えて隣地に入り込んでいる状態のことです。

越境している状態でも、直ちに売却できなくなるわけではありません。ただし、売却時に買主から是正を求められたり、隣地所有者との間で対応方法を確認したりする必要が生じることがあります。

そのため、売却前には何が、どの範囲で越境しているのかを確認し、必要に応じて隣地所有者との合意や是正方法を整理しておくことが重要です。

底地(そこち)

借地権が設定され、他人がその土地を借りて建物を所有・利用している場合に、その土地の所有権を「底地」といいます。

底地の所有者は土地を所有しているものの、借地人が土地を利用しているため、更地のように自由に利用できるわけではありません。一方で、借地人から地代を受け取ることができるという特徴があります。

ただし、地代の水準や契約内容、更新の状況などによって収益性や売却しやすさは大きく異なります。そのため、底地を売却する際には、借地契約の内容や地代、借地人との関係などを確認したうえで評価することが重要です。

借地権(しゃくちけん)

建物を所有する目的で、地代を支払って他人の土地を借りる権利のことです。

借地権を第三者に譲渡する場合は、原則として地主の承諾が必要になります。地主から承諾を得る際に、契約内容や地域の慣行などによって承諾料が必要となる場合もあります。

地主の承諾が得られない場合でも、一定の条件のもとで裁判所に譲渡の許可を求めることができる場合があります。そのため、借地権を売却する際には、借地契約の内容だけでなく、地主との関係や譲渡承諾の見込みまで確認することが重要です。

譲渡所得(じょうとしょとく)

土地や建物などの不動産を売却したときに生じる所得のことです。

単純に「売却価格-購入価格」で計算するのではなく、原則として売却価格から取得費や売却にかかった仲介手数料などの譲渡費用を差し引いて計算します。

そのため、売却代金そのものが譲渡所得になるわけではありません。また、相続した不動産の場合は、被相続人が取得したときの取得費を引き継いで計算することが原則です。

取得費(しゅとくひ)

売却した不動産を取得した際に支払った購入代金や、購入時の仲介手数料、購入にかかった一定の費用など、譲渡所得の計算上、取得費として認められる費用のことです。

相続した不動産の場合は、原則として被相続人がその不動産を取得したときの取得費を引き継ぎます。

取得費が分からない場合や、実際の取得費が売却価格の5%に満たない場合には、売却価格の5%を概算取得費として計算できる場合があります。

そのため、相続した不動産を売却する際には、古い売買契約書や領収書など、取得費を確認できる資料が残っていないか確認することが重要です。

3,000万円特別控除(空き家の特例)

相続した空き家やその敷地を一定の要件を満たして売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。

対象となる家屋は、原則として昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、耐震基準を満たすための改修をして売却するか、家屋を取り壊して敷地を売却するなど、一定の要件があります。

また、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡については、相続人が3人以上の場合、特別控除額が1人あたり最高2,000万円となる場合があります。

適用には、家屋の状態や相続後の利用状況、売却期限など、細かな要件があります。そのため、相続した空き家を売却する場合は、売却前に適用要件を確認しておくことが重要です。

【まとめ】相続不動産を「安全に、後悔なく手放す」ために

親や親族から相続した不動産は、ただ価格査定を受けて売り出すだけでは、予期せぬトラブルや手戻りにつながりかねません。「売れる状態にあるか」を正しく把握し、適切な手順を踏むことが何よりも重要です。

査定よりも「現状の確認と権利の整理」が先決
相続登記や相続人の確定:2024年4月から相続登記が義務化(原則3年以内)。誰が売主になるのか、遺産分割や共有関係はどうなっているかを事前に整理する。物理的・法的な課題の把握:再建築不可、私道の権利関係、境界・越境問題、古い建物や残置物の有無を確認する。

「売れない」と言われた物件でも解決策はある
一般市場で敬遠されやすい物件であっても、「なぜ売れないのか」の理由を明確にし、適切な対策(専門業者への買取打診、隣地への交渉、免責条件の整理)をとることで、安全に手放す道筋は見つかる。古い家も「すぐに解体すべき」とは限らず、土地の需要や税制を踏まえて個別に判断する。

税金や特例は要件を確認して専門家に相談
相続税の取得費加算の期限や、空き家の3,000万円特別控除など、複雑な要件が絡む税務は事前の確認が不可欠。司法書士、税理士、コンサルティングに強い不動産会社などの専門家と連携しながら、総合的な判断で進める。

相続した不動産の売却で大切なのは、「高く売ること」だけに囚われず、「問題をしっかりと整理したうえで、将来に禍根を残さない適切な方法で手放すこと」です。一人で抱え込まず、まずは現在の状態や書類の整理から専門家とともに始めてみませんか。

「売れない」不動産はありません。複雑な権利関係も、私たちが紐解き、確実な売却へ導きます。

「他社で買取を断られてしまった」「市街化調整区域で再建築ができない」「共有者が多くて話がまとまらない」……。
そんな扱いが難しいとされる不動産こそ、ワイズエステート販売株式会社の専門分野です。

さいたま市・川越市・上尾市・桶川市エリアを中心とした地域密着のネットワークと、複雑な行政調査や法規制に関する専門知識を駆使し、物件が抱える阻害要因を一つひとつ丁寧に解消いたします。

「そもそも売れる状態なのか分からない」という段階からのご相談も大歓迎です。税理士や司法書士等の専門家とも連携し、お客様の負担を最小限に抑えた最適な解決策をご提案いたします。まずはお気軽にご状況をお聞かせください。

【著者プロフィール】

山中 賢一
ワイズエステート販売株式会社 代表取締役
不動産売却専門 兼 廃業・事業再生コンサルタント

埼玉県さいたま市を拠点として、全国の複雑な不動産問題を解決に導く専門家。
大手不動産会社やFC店で「売却不可」と断られた市街化調整区域、権利関係が複雑な訳あり物件、相続トラブル等の売却において圧倒的な実績を持つ。

また、提携法律事務所との強固なネットワークを活かし、廃業・倒産に伴う法人名義の不動産売却や、資金繰りに苦しむ経営者のための資産整理・再生スキーム構築を得意とする。単に「売る」だけでなく、任意売却や債権者交渉、弁護士と連携した法的措置を伴う出口戦略まで、金融・法務・実務の三位一体で顧客の「後悔のない選択」を支援している。

ワイズエステート販売株式会社
「他社で断られた案件」「銀行交渉が必要な売却」など、出口の見えない不動産のご相談を承ります。法務・金融の視点から、あなたの資産を守る「最適解」を提案します。

●市街化調整区域のスペシャリスト: 建築許可の判断が難しい市街化調整区域や、相続で問題になりやすい「負動産」の解決に注力。

●土地の歴史を読み解く調査: 登記簿や航空写真から土地の変遷を辿り、自治体独自の判断基準まで深く踏み込む緻密な調査を信条としています。

●producer(プロデューサー)としての視点: 単なる「仲介」ではなく、法的・財務的背景を汲み取った「再構築」の提案を重視しています。

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